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気まぐれ

映し出されたロック画面、通知は今日も無し。
もともと私なんかに連絡をしてくるような事は無いと解っているのに、つい見てしまう。 

あの時あなたが送ってくれた「気まぐれ」をまた期待してしまって、着信に震えるのを今かと待ち構えてしまう。

 他の女の子達なら、きっと自分の気持ちを真っ直ぐに伝える術を知っていて、 あなたのずっと近くに自分を置くことなんて容易く、今頃「気まぐれ」なんかじゃない言葉のやり取りをしているんだろう。


そんな妄想を抱くと急に腹が立ってしまって、スマートフォンの電源を落とす。
私以外の誰かと楽しそうに話をするあなたの姿を想像して、勝手に八つ当たりをしてしまう。
行動に起こせず、地団駄を踏む自分に腹が立つ。 あなたはそんな些細な事、気にも留めないっていうのに。
ただ、なんとなく、他愛もない言葉を送る事ですら、私には出来ない。


遠くの方で、お昼を知らせるチャイムが鳴る。 テレビ番組がニュースからバラエティに切り替わって、元気の良い声が今日のラインナップを伝える。 

無意識にチラッとスマートフォンの画面を見つめる。 画面は真っ暗であった。
電源を切った事すらすっかり忘れて、またあなたからの「気まぐれ」を期待してしまっている。
情けない。情けない。 

こんなにも愛しい気持ちを、ほんの少しですら伝える事が出来ないなんて。 情けない。
まるで敗北した時のような気持ちで再び電源を入れる。

 そうしてまた、私は、気まぐれで、残酷で、優しくて、愛しいあなたに、想いを馳せる。


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