見出し画像

街を違う角度から見て

小型ボートに乗って、街を周遊する企画があるけど一緒にどうですかという誘いを受けて、面白そうだったので同乗した。

万全の体調で挑みたかったが、前日が休みということもあり一日中寝てしまい、当日の睡眠時間は2時間という、当初寝不足では挑むまいと誓ったのと真逆の結果になってしまった。

船酔いしないように遠くの景色を見ることを徹底し、「気持ち悪いかも…」と思わないよう、同乗している先輩たちと会話をしまくって気を紛らわせた。

日が傾く前の時刻に出発し、普段見慣れた建物や街が明るく照らされていたり、まだ未開拓の街の川を周遊し、「川沿いのマンションっていいなあ」と思ったり、「散歩するのに、川があると楽しいだろうな」と、川と橋が架かる街に一同憧れを抱くことになった。
なんだか、時間がゆっくり流れているような気がするし、誰も急いでなさそうなのが良かった。

下から見上げる街の景色は、案外悪くなかった。普段歩いている時の視線は前か斜め下だから、見上げると割と、気づかない街の顔が見えてくるのが面白かった。

古びた小さなビルの窓際に植物があったり、実は一室がカフェになっていたり。
人の生活が風景と化していて、あまりジロジロみるのもよろしくないけれど、滅多にない機会なので、霊か神様にでもなった気分で、今の心地良さに身を委ねた。

マンションのバルコニーにある隣室とを隔てる壁の蹴破り戸が、黄色になっている団地があって可愛かった。
建築のことは全く分からないけれど、こうした時間がゆっくり流れる空間で、建物の形や色合い、何の変哲もない建物にひとつの個性を見つけると、神は細部に宿るという言葉があてはまってとても楽しい。

同じような顔をしていると思い込んでいたビル群やマンションは、それぞれが違う個性を持っていて、そこに人の生活がある。
無機質ながらそれは、人に寄り添って支え、共存しているのだなと感じた。

なんだか心がこんなに穏やかになるのが久しぶりで、何を言っているのか何を言いたいのか分からなくなってきた。
けど、今日の出来事は忘れられない思い出になった。

街を違う角度から見て、私はのどかで穏やかな時間と共に、幸福を感じた。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?