ふたりの世界


私と君は何ひとつ同じものがない

私が読んでほしいと貸し出した小説は数ページ頑張って読んだ形跡を残したまま早三年が経とうとしているし、
私が好きなバンドを聴かせても心揺さぶられることはなく終いには音楽が無くても生きていけると言っている。
君の好きな食べ物は熱いもの、私の好きな食べ物は冷たいもの。
性格も似ていない

ただ、それでも

あの日公園で目が悪くなったと嘆く私に、
君は眼鏡を外して
「でもさ、綺麗だよ。あの街並みの光も車の光も全てが花火のようで、僕は好きだな」
そう言ってその後も綺麗だと街を眺めて笑う君が
「ほら、見てみなよ」
と君の真ん丸の目を一回り二回り小さくさせていた眼鏡を渡してきて、覗き込むと歪んでボヤけた世界が何故かとても綺麗で
君といれたら私一人では思い浮ぶことのない考えや知らない世界で日々を色付けてくれるのだろうと、君を愛おしく思ったんだ。

私と君は何ひとつ同じものがない
けれど、
どんな幸福も絶望もすべて
分かち合うのは君がいい!

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眠れない夜に

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