220304 大学生活で最も無駄な時間
僕の通っている大学は、自然豊かなキャンパスが有名だ。
毎年秋には、キャンパス中の木々が紅葉に染まり、
イチョウ並木やポプラ並木には観光客が押し寄せている。
大学4回生の初冬、登校中の僕はイチョウ並木を歩いていた。
ガサガサと鳴る落ち葉を踏み締めながら、砕けて粉になる様子を見ていた。
(こんだけ乾燥して居たら、"あれ"できるな。)
僕は友人に"あれ"の誘いの連絡をした。
彼は二つ返事で快諾し、その日の夜23時ごろ大学に集合することになった。
まず、道具を調達することにした。
一斗缶と段ボール、バケツと新聞紙、アルミホイルと、あとは着火剤。
一斗缶は金属ゴミ捨て場から、人体に影響のなさそうな薬品が入っていた缶を選んだ。多分エタノールの缶を選んだと思う。
段ボールとバケツ、新聞紙とアルミホイルは僕の所属ラボから、着火剤は友人が個人的に持っていたものを拝借した。
僕らは校舎裏の道路で、"あれ"を始めるため、道具を組み立ていった。
『あ』
落ち葉を集めるのを忘れていた。
友人に道具の設営を任せ、点々と地面を照らす街路灯の下、40Lのゴミ袋を肩にかけた僕はイチョウ並木へ向かっていた。
(めちゃくちゃ楽しいな)
僕は単純な人間なので、友達と夜中に遊ぶのが大好きだった。
その時は多分、一種の躁状態にあった。
イチョウ並木で狂ったように、乾燥した落ち葉をかき集めた僕は、
ジングルベルを大声で歌いながら、校舎裏までスキップで駆けていった。
暗闇の向こうからジングルベルが近づいてきた時、友人は何を感じていたんだろう。
さて僕らは、設営した一斗缶に落ち葉を敷き詰め、メインディッシュの用意を始めた。
友人がスーパーで買ってきてくれたサツマイモだ。
僕らは焼き芋をするために寒空の下、集まっていた。
サツマイモに濡れた新聞紙を巻き、アルミホイルで包んだ。
着火剤と新聞紙で火種を作った一斗缶に、サツマイモとイチョウを大量に詰め込んだ。
20分ほどだろうか。
全く燃えない。
僕らは考えた。
おそらく、一斗缶の中に空気が循環していない。
いくら乾燥した落ち葉とは言え、酸素を供給し続けないと、当然火は上がらない。
僕らは考えた。
筒を差し込んで、一斗缶のそこに空気が流れ込むようにしよう。
アルミホイルで筒を作って、差し込んだ焼き芋焼き機ver2.0を作成した。
燃える燃える。
これは勝ったわ。
しかし、落ち葉はあっという間に燃え尽きる。
火が絶えないように落ち葉をくべながら、友人と学科のテキトーな話をしながら、途中で道路に寝転んでいたりしながら、分からないなりに星座を見たりしながら、焼き芋が焼けるのを待っていた。
(途中で無灯火の自転車に轢かれそうになったが、寝ていたこちらも悪いので、何も言えなかった。)
23時過ぎに始めた焼き芋だったが、時計の針はあっという間に3時前を指していた。
『そろそろか...?』
『多分もうええやろ』
熱々のアルミホイルを灰の中から掘り起こし、僕はサツマイモを割ってみた。
堅い。
というか、ぜんぜん生だ。
割ろうと力んだ瞬間にうっすらとは気づいていたが、ぜんぜん生だ。
ふ~~~~~~~~ん
僕らはラボに戻り、電子レンジでサツマイモをチンして食べた。
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