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泣くことの大切さ

みっちゃんからです。

先日、父が行方不明になりました。

散歩に出たまま帰って来ないのを
心配した母が、私の家をたずねて来て、
母と手分けして40分位近所を探しました。

足が悪い父は、そんなに長く歩けず、
いつもは家の周りを一周して5分位で帰宅します。

あっちこっち探しまわり、
結局、私のマンションの上の階に
住んでいる人の家に居ました。

父は私に逢うために、私のマンションまでは
来れたのですが、階数を間違え、
一階上の部屋へお邪魔してしまった様なのです。

そこには、88歳のお婆ちゃんが
一人暮らしをしており、普段は
ディーサービスに行って居ないのですが
その日はたまたま祭日だったので、
在宅していたとのことでした。

ひとりで寂しく家に居た所に、
父が訪ねて行ったので、喜んで
迎い入れてくれた様です。

以前の父親なら、初対面の知らない人の家に
上がり込んだりしないのに・・・と思いましたが、
多分二人で仲良くお茶飲みしていたのでしょう。

お婆ちゃんは「来てくれて嬉しくて、嬉しくて」と、
父親は「人間は顔を見ればいい人かわかるんだよ」と、
お互い子どもの様な顔をしていました。

何事も無くて良かったと、
母と私は胸をなでおろしました。

そんなことがあって、暫くしてから
私は何だか泣きたくなりました。

仕事をしていても、紅葉を見ても涙が落ちそうになります。

母の替わりに父親と一緒にいる時には、
家で父親が覚えている懐メロの歌を
流している事が多いのですが
その日は、たまたま一緒にTVをみていて、
父親と同年代の菅原洋一が
『忘れな草をあなた』を熱唱していました。
父親は嬉しそうに一緒に鼻歌を歌っていましたが、
その横で私は涙が止まらなくなりました。

  別れても別れても 心の奥に
  いつまでも いつまでも
  憶(おぼ)えておいてほしいから
  幸せ祈る言葉にかえて
  忘れな草をあなたに あなたに


  いつの世もいつの世も 別れる人と
  会う人の 会う人の
  運命(さだめ)は常にあるものを
  ただ泣きぬれて浜辺に摘んだ
  忘れな草をあなたに あなたに


「親の時間」の仲間に話を聞いてもらい、
私は、幼い頃からずっと父親の幸せを
祈ってきたのだと気づきました。

そして、思いっきり泣いたら、
本当にすっきりしました。

人が老いるという事を、頭では理解していても、
なかなか心がついていけなかったのです。

感情を吐き出したら、その翌日から
また落ち着いた気分で暮らせる様になりました。

久しぶりに泣く事の大切さを感じました。

みっちゃん

この文章は、2015年に書かれたものです。


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