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娘への短い手紙

昨日もわたしは
真夜中に起きると
トイレで短い手紙を書いた

数年前から不眠症に悩まされていて
多い時は2回も3回も夜中に目が覚めて
うつらうつらと
浅い眠りのまま夜が明けてしまったり

ひどい時は一日中朦朧として
無意識な行動が多くなるせいで
やたら失くし物や怪我をしてしまう

日中に運動したり
カフェインを控えたり
いろんなことを試行錯誤して
うまくいったり、いかなかったり

そんな中でやめてみたことがある
朝、中学生の娘が学校に行く前に
朝食を用意して
「いってらっしゃい」と送り出すことだ

わたしの娘は小学生のあいだ、
ほぼ不登校で
中学生になったら学校に行く、と
自分で決めた
そして本当に中学入学後は
学校に毎日通っている

わたしは娘の決心を応援したい気持ちで、
いや、それよりも
「母親」なら当たり前のこととして
朝食を用意して、玄関で送り出してきた

私は夜に眠れなくて、
朝方やっと深い眠りに入っても
娘が起きる7時には起きるようにしていた
それがとてもつらかった
でもずっと続けてきた

とうとう本当につらい時に
「ごめん、ママ不眠症で
最近眠れてないから
明日は寝坊させてね」と言った

その次の日の朝は8時半まで寝て
起きたら娘はいなかった

そして、
なんてすっきりしたんだろう!
体も頭もくっきり明確になった感覚

それからわたしは葛藤した
「お母さん」なのに、
子どもががんばって学校に行くのに、
その時に寝ているなんて

わたしが寝坊していたら
つらいからって怠けていたら
子どもたちまで怠ける人に
なってしまうかもとも思った

「親の時間」の仲間に
このことを聞いてもらったら
わたしには
「母親はこうでなくてはいけない」
という思い込みがあって
自分で自分を裁いていたんだなと
気づいた

わたしが見てきた「母親」像
自分の母親も
友人の母親も
今の私の周りにいる母親たちも
マンガやドラマの母親像も
頭の中でわたしに迫ってくる

そんなことを聞いてもらっていたら
相手が言った

「自分の体を一番大切にしていいんだよ。」

そう言われて、
涙が出てきた

わたしはわたしを大切にしていいの?
ほんとうにわたし自身を一番優先に
していいの?

「もちろんだよ。
自分にとって、自分自身が
一番大事でしょう。」

わたしずっと
自分は我慢しなくちゃいけないと思ってた

と同時に
私は我慢してきたんだから
あなた達も我慢しなさいって
子ども達や夫にも
周りの人たちにも
実は思っていた

何回も聞いてもらって
わたしは、
寝不足で起きるのがつらかったら
朝に寝る、と自分で決めた

でも、娘に
「朝食にサラダが食べたいのに」とか
「明日も起きてくれないの?」とか
言われると悪いことをしているような
気持ちになった

そんな迷いも聞いてもらうと
娘の不平不満も、
聞いてあげれば
いいだけなんだなって思えて
少し落ち着いた

自分の体を大切にすると決めたら
子ども達が学校を休むのも
怠けてると思わずに
落ち着いて見守ることが
できるようになった

夫にも、日曜日には
子ども達とイベントに参加してとか
「有意義な」過ごし方をしてほしいと
要求ばかりしていたけれど
そうじゃなくて
自分が家族と一緒にしたいことを
提案すればいいんだって
思えるようになった
その結果、
ただゆっくりと過ごす日曜日が多くなった

そして、休みの日には子ども達に
食事は自分で作って食べてね、って
気軽に言うようになった

そうやって
我慢しないで過ごすことが多くなると

わたし「いってらっしゃい」って
言いたいんだよなって自分でも気づいた

これはわたしが
「母親だからこうしなきゃ」
ではなくて
大好きな娘が朝出かけて行く時に
応援したい気持ちを
本当に伝えたいことを
わたし自身が感じたから

それで、わたしは
たいてい真夜中に
必ず一度は起きて
しばらく眠れなかったりするので
トイレで娘に短い手紙を書く
チラシの裏にえんぴつで
ささっと書く程度

先日学校で楽しいことがあった話を
聞けて嬉しかったよ、とか
風邪の予防に
梅エキスを飲んでいってね、とか
他愛もない文章だけど
最後に必ず「いってらっしゃい」
と書く

別に娘は
喜んでる様子も見せないし
そのことを取りたてて話題にはしない

でもどうやら最近
きょうだいゲンカの後に
娘は下の子、つまり自分の弟に
手紙を書いてることがあるみたい

下の子はそれを大事に
机の一番上の引き出しにしまっている


不眠症はつらいし
夜はぐっすり朝まで眠りたいけれど

夜中の台所で
伝えたいことを考えて
えんぴつを握る時間も
悪くないかもしれない


匿名さん

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