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「中日ドラゴンズ、最高っスよ」 中日ドラゴンズ球団公式ドキュメンタリー「TOD 2023」を見るべき理由

選手に寄り添い、信頼を得て、丹念に行動と言葉を追う。

中日ドラゴンズの公式ドキュメンタリー作品「Truth of Dragons 2023」(略称「TOD 2023」)の配信が11月25日(土)からスタートしている。結論から言うと、配信は12月3日(日)で終わってしまうので、未見の人は今すぐ見てほしい。リンク先からチケットを購入できる。

間に合わなかった人は、球団に再配信を要望しよう。アーカイブ化、あるいはDVDの発売も望みたい。

「TOD 2023」は「復活」の物語

「TOD 2023」は、球団公式YouTubeを制作・配信しているイベント推進部の岡田昌尚さんが企画・撮影・編集を一手に行っているドキュメンタリー。柳裕也投手・梅津晃大投手のEpisode1、細川成也選手・石川昂弥選手のEpisode2、小笠原慎之介投手のEpisode3に加えて「おまけ」が3つ入りで、2時間11分の大ボリュームを誇る。

それぞれのEpisodeには、岡田さんが独自に築いた信頼感をバックボーンにした選手たちの「本音」がそこかしこに横溢している。自宅までカメラを上げた小笠原が語った「沼」という言葉、酒の進んだ柳がふとこぼした「悟り」という言葉などは、なかなかかしこまったインタビューでは出てこない類のものだろう。

大まかに括るとしたら「TOD 2023」は「復活」の物語だ。トミー・ジョン手術から長いリハビリを経て817日ぶりに一軍のマウンドに復活した梅津、左膝の前十字靭帯の手術から1年かけて4番の座に復活した石川昂、崖っぷちから現役ドラフトを経て復活した細川成也。開幕戦で人生が変わる熱投を見せた小笠原は、シーズン後半の不調から来季の復活を期する物語になっていた。

何よりも「復活」しなければいけないのは、球団史上初2年連続の最下位という屈辱を味わったドラゴンズというチームそのものだろう。本編で中心になって取り上げられているのは、ドラゴンズ「復活」の鍵を握る選手たちだ。そのあたりに岡田さんが作品に込めたメッセージがあるんじゃないだろうか。

映っているのは選手という「人間」たち

本筋以外にも見どころはたくさんある。焼肉と一緒にどんぶり飯を頬張る細川、試合前はどんぶり飯じゃなくて冷やし中華をすする細川、思わず「テラスお願いします」と本音がこぼれてしまう細川、小笠原のことを「シンチャン」と呼ぶライデル・マルティネス、やたらフランクに登場する三浦大輔監督(DeNA)、映るたびにすかさず変顔を決める牧秀悟(DeNA)、登場が一瞬で発言が「(大島)洋平さんの乳首いただきました!」だけの祖父江大輔、哀愁を漂わせながら銀杏をむく柳などなど、枚挙に暇がない。

そこに映し出されているのは、単なる数字やスペックでは表現しきれない、選手の圧倒的な肉体であり、揺れるナイーブな気持ちである。つまり人間そのものということだ。ゴシップ記事に踊らされている人や、SNSで批判を超えた中傷をしたり、品のない動画を見て喜んだりしている人が本作を見たら、自己嫌悪に陥るんじゃないだろうか。

「中日ドラゴンズ、最高っスよ」

しみじみこう語った柳の言葉こそ、すべてのネガティブなゴシップを吹き飛ばすドラゴンズの「真実」だろう。あとはチームが勝つだけだ。そうなれば柳が本編で語っているように、すべてがひっくり返る。

「TOD 2023」に「映っていない」ものたち

では、ドラゴンズが勝つにはどうすればいいのか。ここからは穿った見方になるが、ドラゴンズが勝つためには本作に「写ってない」ものこそが重要になると思う。

たとえば、野手陣を引っ張るリーダーの存在、新しいビジネスに取り組む球団、チーム全体の士気を高める指揮官や球団トップの言葉……。カメラを回す側に「ぜひ撮りたい」「撮らなければいけない」と感じさせるものは、チーム全体にもっとあっていいはずだ(あと、来季からは岡田さんをビジターの試合に派遣してほしい)。それらが出てきてカチッと噛み合ったとき、ドラゴンズは浮上していくのではないだろうか。

今、ドラゴンズは長い低迷期から脱出しようともがき続けている。「TOD 2023」はその様子を克明に描いた貴重な映像だ。ドキュメンタリーは優勝した年だけ作ればいいと思っている人もいるようだが、とんだお門違いである。プロは結果がすべてだが、過程だって重要なのだ。

繰り返しになるが、ドラゴンズが好きな人はまず「TOD 2023」を見てほしい。こうやって球団ドキュメンタリーが作られるのは当たり前のことではないのだから。こんな作品を見ることができて、ドラゴンズファンは幸せだ。

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