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青山真治監督の思い出

先日「宮﨑あおいの思い出」を書いていて、ふと昨年57歳で亡くなった青山真治監督について調べたくなった。記事によると、宮崎あおいは2000年の映画「ユリイカ」のオーディション会場で、青山真治監督が「一点を見つめて、どれだけ(宮﨑あおいの)目が澄んでいるかを見ていたそうなので、何もしないで会場を後にしたんです」と当時を振り返ったとのこと。
私は「ユリイカ」での宮崎あおいのまっすぐな眼差しに衝撃を受けたと書いたが、決して的外れではなかった。私の感受性がどうだと言っているのではなく、青山真治は確実に、宮崎あおいの瞳の強さにほれ込んで、映像の中心に据えたのだ。女優・宮﨑あおいの才能を見出したのは、他の誰でもなく青山真治であろう。

暴力やら精神異常やら不協和音やらも頻繁に出てくるし、予定調和を崩すような展開やシーンを好む青山真治監督であるから、ワイルドな性格かと思っていたら、とても紳士で、好感の持てる良識ある人だなと思った。
といってもお見かけしたのは2001年、池袋の新文芸坐でのトークショー1回だけである。小さな映画館であるから、青山監督と、自称なのか他称なのか分からないような映画評論家と2人でトークショーが行われたのだが、この映画評論家、青山監督よりもよっぽど踏ん反り返っていて、監督を呼び捨てにし、主に自分だけが好き勝手に話していたので、青山監督の話を聞きに集まった観客はみな、じりじりしたと思う。
「映画評論家」は突然、自分の好みのゴミ溜めのような英語のラップミュージックをかけ出したり、「ユリイカ」のバスの窓枠の映像に異常に執着を見せたりして、観客を混乱させたが、青山監督はむしろ「映画評論家」を諭すように、「このラップミュージックはこれこれこういう内容です」とか、「バスの窓枠にそんなに拘ったわけではないですが、登場人物がどう外の風景を見ているのかということには注意を払いましたね」などと懸命にフォローした。最後に「お客さんは僕の話を聞きたくてこられたと思うんですけれども」とささやかな抗議をしていたが、それもこれも、ファンを大事にしていたからだろう。トークショー後にも熱狂的な映画ファンが青山監督にサインをねだり、一人語りをし始めたが、青山監督は何もいわず色紙にサインを書き、ファンの話にうなずいていた。

例によって一回しか見かけていていないのにどんな人間だとか評するのは自分でもどうかと思うが、妻・とよた真帆もぞっこんなのも納得のような気がした。心の闇を描く監督だと思うが、けっこう心の闇は、誰の胸の奥にも潜んでいるのかもしれない。

最後に青山真治監督のマイベスト3を挙げておきたい。

月の砂漠(2001)


エリ・エリ・レマ・サバクタニ(2005)


ユリイカ(2000)

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