小池栄子の思い出
小池栄子に取材したことがある。
といっても囲み取材の一団に加わって写真を撮っただけであるが。
というか、『ピカソ展』の記者発表会だと聞いて、有楽町の外国人記者クラブに足を運んだだけである。
美学美術史の大家が東京現代美術館で行われる『ピカソ展』について解説し、記者席の前の方でふんふんなるほどと真面目にメモしていた。
なぜかスポーツ新聞の記者やカメラマンたちが後方の座席にたむろし、時間を持て余している感じだったのだけが気になっていた。
実に美術館の記者会見らしいお堅い記者発表会だったが、個人的にはまあ満足して帰ろうとした。ピカソ好きだし、ためになったし。
ところがその時、照明が暗転して、女性司会者が声を張り上げた。
「さあ、お待たせしました。今回のピカソ展のイメージガール、小池栄子さんです!」
大音量のポップミュージックとともに、スポットライトを浴びた若い女性が後ろからランウェイしてきた。それが当時24歳の小池栄子であった。
やっぱりグラマーだった?オーラあった?と聞かれるが、私にはちょっと大柄で豊満だが、普通の若い女性にしか見えなかった。
暇そうにしていたスポーツ新聞の記者連がわれ先にと前列に押し掛ける。一斉にシャッターが切られる。
司会者「では、さっそくですが、小池さん、今回の抱負を」
という質問に
小池栄子「ピカソのことは何も分かりませんが、今回の展示会をきっかけに勉強したいです」
と脱力コメント。
記者による質問になって、報知新聞の記者が「ピカソが画家だったら、ヌードになってもいいですか」との恥ずかしい質問に対し、
小池栄子「ピカソだったら、なってもいいかな」とコメント。
もちろん翌日の報知新聞の見出しは「小池栄子、ヌードになってもいい」であった。
囲み取材になって、しょうがないからひたすら写真だけ取って、帰った。一応記事を書いたが、小池栄子の写真は編集長の判断によりボツになった。さすが業界新聞社、ぶれない。
というわけで、当時、すでに映画『下妻物語』などに出演していた人気女優だったが、そんなにオーラがあるとか、賢いとか、スタイルがいいとすら思わなかった。
『下妻物語』もイモねえちゃんだったし、近年みたドラマでは『世界一難しい恋』で大野智君の秘書役を演じていたが、周囲の高評価をよそに、特に上手いとも思わなかった。
『鎌倉殿の13人』が、えらい評判である。私はまったく観ていないが、母も「大女優の貫禄があった」と言っていた。
特に思い入れはないけれども、そういった経緯で気になる存在ではある。
おしまい。
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