見出し画像

今さらながらのミラン・クンデラ追悼

チェコの作家ミラン・クンデラが亡くなったのを、最近、小さな書店の書評コーナーで知った。大型書店でもそんなに大きな扱いではなかったのかもしれない。それとも私が文学に無頓着になったからかもしれない。おそらく両方だろう。
クンデラといえば『存在の耐えられない軽さ』で有名であり、私が文学部に在籍していた頃はジュリエット・ビノシュ主演の映画とともにとても持て囃されていた。私も同作は読んだし、デビュー作の『冗談』から比較的最近の『無意味の祝祭』までを読んだ。しかし記憶が朧げなのは、私にとって重要なテーマではなかったのかもしれない。率直にいうと恋愛を形而上的に掘り下げることに、そんなに意義を感じなかったのだ。書いてて悲しくなるが。
それでも母国チェコへの帰還が大いなる齟齬を生む『無知』とか、無意味な嘘が人生の本質を突く皮肉を描く『無意味の祝祭』はとても技法的にも優れているし、人生の皮相をよく表していると思った。ノーベル文学賞を授与されるとしたら、村上春樹ではなくミラン・クンデラこそ相応しいと考えていた時期もあった。94歳。合掌。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?