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世界の識者が語る「アフターコロナ」

コロナ禍において私たちは何をすべきか、そしてコロナ後の世界はどうなるのか、世界の識者が論じています。今回はその声を拾ってみます。

ユヴァル・ノア・ハラリ(歴史学)

「新型コロナウイルス感染症の大流行は、公民権の有効性の一大試金石なのだ。これからの日々に、私たちの一人ひとりが、根の葉もない陰謀論や利己的な政治家ではなく、科学的データや医療の専門家を信じるという選択をすべきだ。もし私たちが正しい選択をしそこなえば、自分たちの最も貴重な自由を放棄するという羽目になりかねない」。
「人類は選択を迫られている。私たちは不和の道を進むのか、それともグローバルな団結の道を選ぶのか?もし不和を選んだら、今回の危機が長引くだけでなく、将来おそらく、さらに深刻な大惨事を繰り返し招くことになるだろう。逆に、もしグローバルな団結を選べば、それは新型コロナウイルスに対する勝利だけではなく、二一世紀に人類が襲いかねない、未来のあらゆる感染症流行や危機に対する勝利にもなることだろう
(『緊急提言パンデミック』河出書房新社)

ジャレド・ダイヤモンド(生理物理学)

「個人的には、新型コロナウイルスで命を落とした親しい友人を悼むと同時に、今回のパンデミックに希望を感じている。世界中の人々が世界史上初めて、どの国も独力では克服できない共通の脅威に直面することを認めざるを得なくなった。
世界中の人々が新型コロナを打ち負かすことになれば、一つの教訓を学べるかもしれない。気候変動、資源の枯渇、格差と闘うためにも団結する機運が高まる可能性がある。そうなれば、新型コロナは最終的に世界中の人々を持続可能な道へと導き、悲劇と同時に救いをもたらすことになる。」
(ニューズウィーク日本版2020年12月29日、2021年1月5日新春合併号)

イアン・ブレマー(国際政治学)

「これから世界の民主主義がどうなっていくのか、現在、非常に難しい転換期にさしかかっていると思います。21年は、民主主義という観点からは難しい時期を迎えるでしょう。」
「ロシアや中国が米国とは異なる『国のモデル』を構築し、別の価値観と標準を生み出している。まさに世界は『Gゼロ』の時代に突入しています。」
「(2021年を一言で表すと)『ホープフル(希望が持てる)』です。途上という意味を込めて、ですが、新型コロナの悪夢から立ち直る1年になるでしょう。ただ『希望』はバンドラに残った後のもの。その前にさまざまな『災い』が箱から出てきたことを忘れてはなりません
(日経マネー1月号臨時増刊 日経ビジネス2021徹底予測)

榊原英資(元財務官)

「14世紀のペスト流行時と似ているとよく聞きます。欧州で多くの命が失われ、そして中世が終わり、ルネサンスが起こり近代が始まった。そのアナロジーでいえば、コロナ禍によって現代が終わりを迎えつつあるということになるのでしょうか。ヒト、モノ、カネの自由ない移動が制限されることで、グローバリゼーションが転換点を迎えている。先進国経済についてもあまり『高望み』ができない時代がやってくると言えますね」。
「(日本経済は)もちろん、モノづくり中心で経済が成り立つ時代でには、ずいぶん前に終わりが告げられていて、コロナ禍でニューノーマルが各地でうたわれています。かつてのような右肩上がりの経済は取り戻せなくても、1%成長でもその中身、稼ぎ方が全く異なってくる可能性もある。激動下かつ成熟した経済の変化をエンジョイする。そんな発想が必要だと改めて思っています」
(同上)

マックス・デグマーク(理論物理学者、AI研究者)

「グローバルな世界に生きている私たちにとって、レジリエンス(強靭で柔軟)がますます重要になってくるのは、リスクがどんどん大きく複雑になっているからです。それはテクノロジーの進化によるものです」
「このパンデミックによって、いくつかの職種ではAIで代替する動きが加速するでしょう。ロックダウンやソーシャル・ディスタンシングの実践によって、人との接触機会が強制的に減らされました。セルフ・サービスの飲食店が増え、現金のかわりにキャッシュレス決済を利用するようになって、意外と「思ったり悪くない。この方が便利だ」と感じている人も多いのではないでしょうか。パンデミックが収束した後も、社員に在宅勤務を続けさせる企業もあるかもしれません。オフィスを縮小できればコスト削減になるからです」
(『コロナ後の世界』文芸春秋)

リンダ・グラットン(人材論・組織論)

「日本人はこれまで、長時間労働をこなし、会社に献身的であることを美徳としてきました。その価値観を捨てることがなかなか出来ないのが。この国の人々が直面している心理的障害でした。ところが、パンデミックを経験したことによって、フレキシブルな働き方を知り、心理的な障害から解き放されつつあります」。
パンデミックが起きたとき、生き延びるのために重要だったのは、まずは健康と資質でした。そして、家族の絆も実は大切でした。絆が弱い人は感染拡大によって、さらに弱体化します。頼れる誰か、頼ってくる誰かが人には必要なのです。家族との関係だけでなく、コミュニティ強化の重要性も教訓として学ぶべきです」。

(同上)

スティーブン・ピンカー(進化心理学)

ウイルスは、私たちが今日抱えている問題の多くが、本来的に地球規模であることを思い起こしてくれました。最も明白なテーマはパンデミックと気候変動ですが、サイバー犯罪、ダークマネー、移民、テロリズム、海賊、核戦争など、他の諸問題についても国際的な協力が可能になるだろうという希望が持てます
「楽観主義も悲観主義も自己予言的です。ならば、我々は楽観主義になるべきでしょう。人類はそうして危機を乗り越え、進歩してきたのですから」
(同上)

――いかがでしたでしょうか。ジャレド・ダイヤモンドとユヴァル・ノア・ハラリが共通してグローバルな団結を訴えているのが印象的でした。一方榊原英資氏はグローバリゼーションの転換点であるとしています。イアン・ブレマーは「ホープフル」と言っていますが、むしろ「Gゼロ」の混沌とした世界であることを強調していると思います。ピンカーの進化心理学は楽観的ですが、楽観的すぎるとも思いました。リモートワークやマルチステージを説いたリンダ・グラットンの働き方改革論は、今後注視したいですね。

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