活字に飢えた終戦直後の人々
出版業は終戦後の日本で最初に復活した産業のひとつである。信じられないかもしれないが、食料に飢えていた人々が、同時に活字にも飢えていたのである。1947年7月、東京・神田の岩波書店の外で痩せこけた200人もの人々が3日間寝泊まりして発売を待ったのは、食料でも水でもなく、哲学者・西田幾多郎の全集であった。出版社は終戦時の約300社から、1948年には4600社に増えていた。終戦から4年間の間に発行された雑誌は、占領軍に検閲を経たものだけでも約1万3000誌に上った。
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