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令和6年3月8日 共同親権導入 民法等の一部を改正する法律案要綱


民法等の一部を改正する法律案要綱

第一 民法の一部改正(第一条関係)

1.親の責務等

  • 父母は、子の心身の健全な発達を図るため、その子の人格を尊重し、年齢及び発達の程度に配慮して養育し、同程度の生活を維持できるよう扶養する必要がある。(第817条の12第1項関係)

  • 父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使や義務の履行において、子の利益のために互いに協力する必要がある。(第817条の12第2項関係)


2.親権等

  • 親権は、成年に達しない子について、その子の利益のために行使されなければならない。(第818条第1項関係)

  • 父母の婚姻中は、双方を親権者とする。(第818条第2項関係)

  • 親権は、原則として父母が共同で行う。ただし、一方のみが親権者である場合、他方が親権を行うことができない場合、または子の利益のため急迫の事情がある場合は、一方が行う。(第824条の2第1項関係)

  • 父母は、双方が親権者である場合でも、監護及び教育に関する日常の行為に係る親権の行使を単独で行うことができる。(第824条の2第2項関係)

  • 特定の事項に係る親権の行使について父母間に協議が調わない場合で、子の利益のため必要と認められる場合は、家庭裁判所は、父母の一方が単独で行うことを定めることができる。(第824条の2第3項関係)親権は、成年に達しない子について、その子の利益のために行使されなければならない。(第818条第1項関係)


3.離婚又は認知の場合の親権者

  • 父母が協議上の離婚をする場合、その協議で双方または一方を親権者と定める。(第819条第1項関係)

  • 裁判上の離婚の場合、裁判所は、父母の双方または一方を親権者と定める。(第819条第2項関係)

  • 子の出生前に父母が離婚した場合、子の出生後に父母の協議で双方または父を親権者と定めることができる。(第819条第3項ただし書関係)

  • 父が認知した子に対する親権は、母が行う。ただし、父母の協議で双方または父を親権者と定めることができる。(第819条第4項関係)

  • 子の利益のため必要と認められる場合、家庭裁判所は、子またはその親族の請求によって親権者を変更することができる。(第819条第6項関係)

  • 裁判所は、親権者を定める際、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他の事情を考慮しなければならない。父または母が子に害悪を及ぼすおそれがある場合や、父母が共同して親権を行うことが困難と認められる場合は、一方を親権者と定めなければならない。(第819条第7項関係)


4.離婚の届出の受理

  • 離婚の届出は、法令に違反しないこと及び成年に達しない子がある場合には親権者の定めがされていること、または親権者の指定を求める家事審判または家事調停の申立てがされていることを認めた後でなければ受理できない。(第765条第1項関係)


5.離婚後の子の監護に関する事項の定め等

  • 父母が協議上の離婚をする場合、子の監護をすべき者、子の監護の分掌、父または母と子との交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。(第766条第1項関係)

  • 第766条の規定により定められた子の監護をすべき者は、親権を行う者と同一の権利義務を有する。この場合、子の監護をすべき者は、単独で子の監護及び教育、居所の指定及び変更並びに営業の許可、その許可の取消し及びその制限をすることができる。(第824条の三第1項関係)

  • 親権を行う者は、子の監護をすべき者が後段の規定による行為をすることを妨げてはならない。(第824条の三第2項関係)


6.子の監護の費用

  • 子の監護の費用によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。(第306条第3号関係)

  • 子の監護の費用の先取特権は、定期金債権の各期における定期金のうち子の監護に要する費用として相当な額について存在する。(第308条の二関係)


7.子の監護に要する費用の分担の定めがない場合の特例

  • 父母が子の監護に要する費用の分担についての定めをせずに協議上の離婚をした場合、一方であって離婚の時から引き続きその子の監護を主として行うものは、他の一方に対し、離婚の日から毎月末に、その子の監護に要する費用の分担として、法務省令で定める額の支払を請求することができる。ただし、支払能力を欠くためにその支払をすることができないことまたはその支払をすることによってその生活が著しく窮迫することを証明した場合は、その全部または一部の支払を拒むことができる。(第766条の三第1項関係)

  • 離婚の日の属する月または子が成年に達した日の属する月における費用の額は、法務省令で定めるところにより日割りで計算する。(第766条の三第2項関係)

  • 家庭裁判所は、子の監護に要する費用の分担についての定めをする場合には、支払能力を考慮して、当該債務の全部若しくは一部の免除または支払の猶予その他相当な処分を命ずることができる。(第766条の三第3項関係)


8.親子の交流等

  • 家庭裁判所は、子の監護に関する事項として父母以外の親族と子との交流を実施する旨を定めることができる。(第766条の二第1項関係)

  • 父母の婚姻中の親子の交流等については、父母の協議で定める。この場合、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。(第817条の十三第1項関係)

  • 協議が調わない場合または協議をすることができない場合は、家庭裁判所が、父または母の請求により、交流に関する事項を定める。(第817条の十三第2項関係)

  • 家庭裁判所は、必要があると認める場合、父または母の請求により、交流に関する定めを変更することができる。(第817条の十三第3項関係)

  • 家庭裁判所は、子の利益のため特に必要がある場合に限り、父母以外の親族と子との交流を実施する旨を定めることができる。(第817条の十三第4項関係)

  • 交流に関する定めについての審判の請求は、父母以外の子の親族もすることができる。ただし、他に適当な方法がある場合は、この限りではない。(第817条の十三第5項関係)


9.養子

  • 子が養子である場合、養親を親権者とする。(第818条第3項関係)

  • 十五歳未満の者を養子とする縁組の代諾について、家庭裁判所は、特に必要であるにもかかわらず同意がない場合、法定代理人の請求により、その同意に代わる許可を与えることができる。(第797条第3項関係)

  • 養子の離縁後に親権者となるべき者については、父母が協議で定めなければならない。(第811条第3項関係)

  • 協議が調わない場合または協議をすることができない場合は、家庭裁判所が、審判をすることができる。(第811条第4項関係)


10.財産分与

  • 財産分与の請求期間を離婚の時から五年とする。(第768条第2項ただし書関係)

  • 財産分与の考慮要素として、婚姻中の財産の取得や維持に関する各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、生活水準、協力及び扶助の状況、年齢、心身の状況、職業及び収入その他の事情を考慮する。(第768条第3項関係)


11.夫婦間の契約の取消権に係る規定の削除

第754条の規定を削除する。(第754条関係)


12.強度の精神病の罹患を離婚原因とする規定の削除

第770条第1項第4号の規定を削除する。(第770条関係)


第二 民事執行法の一部改正(第二条関係)

1.子の監護の費用の先取特権に基づく債務者の給与債権に係る情報の取得の申立て

執行裁判所は、一般の先取特権を有する債権者の申立てにより、債務者の給与債権に関する情報の提供を命じることができる。(第206条第2項関係)


2.扶養義務等に係る債権に基づく財産開示手続等の申立ての特例

  • 扶養義務等に係る債権について執行力のある債務名義を有する債権者が申立てをした場合、その申立てと同時に差押命令の申立てをしたものとみなす。(第167条の17第1項関係)

  • 債務者が財産を開示しなかった場合、執行裁判所は、債権者の意思表示がない限り、債務者の住所のある市町村に対し情報の提供を命じる。(第167条の17第2項関係)

  • 財産開示命令に関する規定は、特定の債権に対する差押命令について準用する。(第167条の17第3項関係)

  • 財産開示事件の記録に関する請求は、特定の者に限り行うことができる。(第167条の17第4項関係)

  • 第167条の17第5項において、情報を得た者について、財産開示事件の記録に関する規定を準用する。(第167条の17第5項関係)

  • 債権に対する差押命令の申立てがされた場合、執行裁判所は、差し押さえるべき債権を特定するために必要な事項の申出を命ずることができる。(第167条の17第6項関係)

  • 第167条の17の1から6までの規定は、一般の先取特権を有する債権者が特定の申立てをした場合について準用する。(第193条第2項関係)


3.債務者の審尋

債権者が子の監護に関する義務に係る金銭債権を請求する場合、執行裁判所は、必要があると認める場合、債務者を審尋することができる。(第193条第3項関係)


第三 その他の改正(第三条関係)

1.親権行使者の指定の裁判に係る事件の管轄権

日本の裁判所は、婚姻の取消しまたは離婚の訴えについて管轄権を有する場合、親権行使者の指定についての裁判に係る事件についても管轄権を有する。(第3条の4第1項関係)


2.親権行使者の指定についての附帯処分

  • 裁判所は、夫婦の一方が他方に対して提起した婚姻の取消しまたは離婚の訴えに係る請求を認容する判決において、親権行使者の指定についての裁判をしなければならない。(第32条第1項関係)

  • 裁判所は、親権行使者の指定についての裁判をする際、子が15歳以上である場合は、その子の陳述を聴かなければならない。(第32条第4項関係)


3.情報開示命令

  • 裁判所は、子の監護に関する処分の申立てがされている場合において、必要があると認める場合、申立てによりまたは職権で、当事者に対し、その収入及び資産の状況に関する情報を開示することを命ずることができる。(第34条の3第1項関係)

  • 裁判所は、財産の分与に関する処分の申立てがされている場合において、必要があると認める場合、申立てによりまたは職権で、当事者に対し、その財産の状況に関する情報を開示することを命ずることができる。(第34条の3第2項関係)

  • 情報の開示を命じられた当事者が、正当な理由なくその情報を開示せず、または虚偽の情報を開示した場合、裁判所は、十万円以下の過料に処することができる。(第34条の3第3項関係)


4.判決前の親子交流の試行的実施

  • 裁判所は、子の監護者の指定その他の子の監護に関する処分の申立てがされている場合において、子の心身の状態に照らして相当でないと認める事情がなく、かつ、事実の調査のため必要があると認める場合、当事者に対し、子との交流の試行的実施を促すことができる。(第34条の4第1項関係)

  • 裁判所は、試行的実施を促すに当たって、交流の方法、交流をする日時及び場所並びに家庭裁判所調査官その他の者の立会いその他の関与の有無を定めるとともに、当事者に対して子の心身に有害な影響を及ぼす言動を禁止することその他適当と認める条件を付することができる。(第34条の4第2項関係)

  • 裁判所は、試行的実施を促した場合、当事者に対してその結果の報告(試行的実施をしなかった場合は、その理由の説明)を求めることができる。(第34条の4第3項関係)


第四 家事事件手続法の一部改正(第四条関係)

1.親権行使者の指定の審判事件及び調停事件

  • 日本の裁判所は、親権行使者の指定の審判事件について、子の住所が日本国内にある場合、管轄権を有する。(第3条の8関係)

  • 親権行使者の指定の審判事件は、子の住所地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。(第167条関係)

  • 第118条の規定は、親権行使者の指定の審判事件における子及びその父母について準用する。(第168条第8号関係)

  • 家庭裁判所は、親権行使者の指定の審判をする場合には、当事者の陳述を聴くほか、子の陳述を聴かなければならない。(第169条第2項関係)

  • 家庭裁判所は、親権行使者の指定の審判において、当事者に対し、子の引渡しまたは財産上の給付その他の給付を命じることができる。(第171条関係)

  • 親権行使者の指定の審判及びその申立てを却下する審判に対しては、子の父母は、即時抗告をすることができる。(第172条第1項第11号関係)

  • 家庭裁判所は、親権行使者の指定の審判又は調停の申立てがあった場合において、強制執行を保全し、または子その他の利害関係人の急迫の危険を防止するため必要があるときは、当該申立てをした者の申立てにより、親権行使者の指定の審判を本案とする仮処分その他の必要な保全処分を命じることができる。(第175条第1項関係)

  • 親権行使者の指定の調停事件において、子及びその父母は、法定代理人によらずに、自ら手続行為をすることができる。その者が被保佐人または被補助人であって、保佐人または保佐監督人または補助人または補助監督人の同意がない場合も、同様とする。(第252条第1項第5号関係)


2.親権者の指定の審判及び調停の申立ての取下げ等

  • 親権者の指定の申立ては、審判がされる前であっても、家庭裁判所の許可を得なければ、取り下げることができない。(第169条の2関係)

  • 第273条第1項の規定にかかわらず、親権者の指定の調停の申立ては、家事調停事件が終了する前であっても、家庭裁判所の許可を得なければ、取り下げることができない。(第273条第3項関係)


3.子の監護の分掌の定めをする場合の給付命令等

家庭裁判所は、子の監護に関する処分の審判において、子の監護の分掌の定めをする場合には、当事者に対し、子の引渡しまたは金銭の支払その他の財産上の給付その他の給付を命じることができる。(第154条第3項関係)


4.情報開示命令

  • 家庭裁判所は、婚姻等に関する審判及び調停において、必要があると認める場合、当事者に対し、その収入及び資産の状況に関する情報を開示することを命じることができる。(第152条の2第1項、第2項関係)

  • 情報の開示を命じられた当事者が、正当な理由なくその情報を開示せず、または虚偽の情報を開示した場合、家庭裁判所は、十万円以下の過料に処することができる。(第152条の2第3項関係)

  • 上記の規定は、特定の調停事件についても準用される。(第258条第3項関係)


6.審判又は調停前の親子交流の試行的実施

  • 家庭裁判所は、子の監護に関する処分の審判事件において、子の心身の状態に照らして相当でないと認める事情がなく、かつ、事実の調査のため必要があると認める場合、当事者に対し、子との交流の試行的実施を促すことができる。(第152条の3第1項関係)

  • 家庭裁判所は、試行的実施を促すに当たって、交流の方法、交流をする日時及び場所並びに家庭裁判所調査官その他の者の立会いその他の関与の有無を定めるとともに、当事者に対して子の心身に有害な影響を及ぼす言動を禁止することその他適当と認める条件を付することができる。(第152条の3第2項関係)

  • 家庭裁判所は、試行的実施を促した場合、当事者に対してその結果の報告(試行的実施をしなかった場合は、その理由の説明)を求めることができる。(第152条の3第3項関係)

  • 上記の規定は、特定の調停事件についても準用される。(第258条第3項関係)


7.父母以外の親族と子との交流に関する処分の審判等に対する即時抗告

子の監護に関する処分の審判(父母以外の親族と子との交流に関する処分の審判に限る)及びその申立てを却下する審判に対する即時抗告は、特定の請求をすることができる者に限り行うことができる。(第156条第2項関係)


8.養子縁組の承諾をするについての同意に代わる許可の審判事件

  • 日本の裁判所は、養子縁組の承諾をするについての同意に代わる許可の審判事件について、養親となるべき者または養子となるべき者の住所が日本国内にある場合、管轄権を有する。(第3条の5関係)

  • 養子縁組の承諾をするについての同意に代わる許可の審判事件は、養子となるべき者の住所地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。(第161条の2第1項関係)

  • 第118条の規定は、養子縁組の承諾をするについての同意に代わる許可の審判事件における養子となるべき者の法定代理人、養子となるべき者の父母でその監護をすべき者であるもの及び養子となるべき者の父母で親権を停止されているものについて準用する。(第161条の2第2項関係)

  • 家庭裁判所は、養子縁組の承諾をするについての同意に代わる許可の審判をする場合には、養子となるべき者の父母でその監護をすべき者であるもの及び養子となるべき者の父母で親権を停止されているものの陳述を聴かなければならない。(第161条の2第3項関係)

  • 養子縁組の承諾をするについての同意に代わる許可の審判は、特定の者に告知しなければならない。(第161条の2第4項関係)

  • 特定の審判に対しては、当該審判に定める者は、即時抗告をすることができる。(第161条の2第5項関係)


第五 その他

所要の規定を整備する。


第六 附則

1.施行期日等

  • この法律は、公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。(附則第1条関係)

  • この法律の施行に伴う所要の経過措置を定める。(附則第2条から第7条まで及び第16条関係)

2.関係法律の整備

この法律の施行に伴い、戸籍法等の関係法律の規定の整備をする。(附則第8条から第15条まで関係)



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