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立憲民主党 枝野幸男 衆議院議員第213回国会 衆議院 法務委員会 第3号 令和6年4月2日

034 枝野幸男

○枝野委員
 久しぶりに法務委員会で質問させていただきます。
 差し替えで機会をつくっていただいた我が党の理事と委員の皆さんに感謝を申し上げたいと思います。
 今回、共同親権が注目をされていますが、この共同親権について、今回の法改正で、「親権は、父母が共同して行う。」ということが明記されております。問題は、離婚の場合は、もちろん例外はありますが、多くの場合、夫婦間で、つまり父母間で円滑なコミュニケーションが取れなくなったから離婚するケースが圧倒的多数で、夫婦間で円滑なコミュニケーションが取れているのに離婚されるケースというのは、全くないわけではないでしょうが、ごく一部だと。
 その前提の上で、今回の法改正、実務的に、家族外の第三者の立場からも大変な混乱をもたらすというふうに思いますので、その点についてお尋ねをしたいと思いますが、まず前提として、今の、離婚する場合は大部分は夫婦間のコミュニケーションがうまくいっていないからで、うまくいっていたら普通離婚しないわけですが、そうですよね、大臣。


035 小泉龍司

○小泉国務大臣
 家族というものは、ちょっと生意気な口を利きますけれども、親子関係と夫婦関係と、これによって形成されているわけで、離婚というのは、夫婦関係がうまくいかなくなる、あるいは破綻するということでございますが、そのときに自動的に親子関係も断絶するのだろうか、する法制でいいんだろうかという問題意識から議論が始まってきたというふうに私は認識しております。
 だから、多くの場合はコミュニケーションが取れない、合意ができない、そういうことは間々あろうかと思いますけれども、しかし、かといって、親の離婚イコール親子の断絶にイコールにしていくことについての問題意識、そういったところからこの問題は議論が始められて今日に至っているというふうに理解をしております。


036 枝野幸男

○枝野委員
 別に、共同親権を認めないからって親子を断絶させる、現行もそんな制度じゃないですし、面接交渉についてどうするのかとか、そちらの方のところでいろいろなことを考えなきゃいけないのは確かですが、結局、共同親権って、広い意味での法定代理をどっちがするのかという話ですので、実は夫婦が婚姻中であったとしても共同行使は問題だというところも含めて、この後質疑させていただきたいんです。
 ここからは民事局で結構ですけれども、共同行使、婚姻中も含めてですが、共同親権者が共同行使する場合、改正案の八百二十四条の二、一項ただし書三号は、子の利益のため急迫な事情があるときは例外的に単独行使が可能だとしています。当然のことだと思いますが。
 例えば子供が手術をしなきゃならない、こうした医療行為に親権者の同意を求めるケースがあります。というか、未成年者が緊急手術する場合は多分求めるのが原則だと思いますが、この場合はこの一項ただし書三号に当たりますね。


037 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、本改正案では、父母双方が親権者である場合には、子の利益のため急迫の事情があるときは親権を単独で行使することができることともしております。
 この子の利益のため急迫の事情があるときとは、父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては適時に親権を行使することができず、その結果として子の利益を害するおそれがあるような場合を指します。
 したがいまして、委員御指摘になられました緊急の医療行為、手術等を受けるため医療機関との間で診療契約を締結する必要がある場合などはこれに該当すると考えられます。


038 枝野幸男

○枝野委員
 問題は、交通事故に遭いまして手術する場合とか、何か発作性の病気で、子供がそんなになるのかどうか分かりませんが、脳梗塞とかそういう場合の緊急の手術なら急迫だと思うんですが、お子さんが慢性的な病気で、でも、手術が必要だ、でも、早く手術した方がいい、こうしたケースで、父母がなかなかコミュニケーションが取れない、この場合、この三号に当たりますか。


039 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 委員御指摘になったようなケースは、その手術、当該手術の緊急性によるのではないかというふうに思われます。


040 枝野幸男

○枝野委員
 そうですね。どこか、明確な基準、ここからは読み取れないんですよ。
 じゃ、実は、離婚後共同親権の場合には、八百二十四条の三に、監護者は、単独で、子の監護及び教育、居所の指定及び変更並びに営業の許可、その許可の取消し及び制限をすることができるといって、単独行使が事実上可能になっています。医療契約を結ぶ場合について、この子の監護に当たるんでしょうか。


041 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 医療機関との間の医療契約の締結につきましては、子の身の回りの事項として、身上監護に当たるものと解されます。


042 枝野幸男

○枝野委員
 ということは、離婚後であれば、先ほどの緊急、まあ慢性の手術の場合でも、子の監護者が単独で契約できる、いいですね。


043 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 改正後の民法八百二十四の三の規定に従って、子の監護者が指定された場合には、子の身上監護権については監護者の判断が優先されますので、委員御指摘のとおりかと思います。


044 枝野幸男

○枝野委員
 次、最近は海外留学をする高校生も多くいらっしゃいます。また、修学旅行先が海外である場合も少なくなくなっております。そうした場合、パスポートの取得が必要になります。
 この場合、パスポートの取得は、改正案八百二十四条の三に基づいて、離婚後共同親権の場合、子の教育の範囲として、監護権者が単独で可能にすべきだと思いますが、どうでしょう。


045 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 パスポートの取得に関しましては、それは国外への旅行を前提といたしますので、恐らくそれは、基本的には、共同親権の場合には父母共同で決していただくということになろうかと思いますが、実務的にどうされているかということに関しましては、旅券法の解釈、適用の問題になりますので、法務省から答弁することは差し控えたいと思います。


046 枝野幸男

○枝野委員
 いやいや、今どき、公立の高校でも海外修学旅行が行われているところはありますよ。教育の範囲というのはどこなんですか。だって、教育を受ける上で、パスポートを持っていなければその研修に行けないわけですから、子の教育に入らなきゃまずいんじゃないですか、違いますか。外務省以前の問題です。


047 竹内努

○竹内政府参考人
 未成年者の旅券発行の際の手続におきましては、父母双方が親権者である場合における親権行使に関する民法の規定の解釈が参考になるというふうに考えられますため、法務省といたしましては、所管省庁、外務省でございますが、これとも連携協力して、都道府県の旅券事務所等への十分な周知、広報に努めてまいりたいと考えております。


048 枝野幸男

○枝野委員
 答えていないですよ。
 教育の範囲に入るのか入らないのか、まずこの法律の、法案の解釈として法務省が見解を示さなきゃ、外務省は対応しようがない。パスポートを取るだなんというのは、今どき当たり前なんだから、教育を受ける上で。だから、これは、教育は、範囲、監護権者が単独でできるじゃないとおかしくないですか。


049 竹内努

○竹内政府参考人
 失礼いたします。
 繰り返しになりますが、パスポートの取扱いに関しましては、旅券法の解釈、適用の問題と考えますので、法務省から答弁することは差し控えたいと思います。


050 枝野幸男

○枝野委員
 いや、こんな法案、審議できませんよ。だって、これは、この法律の解釈を聞いているんですから。外務省がどういう運用をするかじゃない。
 ちょっと時計、止めて。相談して。


051 武部新

○武部委員長
 答弁できませんか。時間を要しますか。
 じゃ、速記を止めてください。
〔速記中止〕


052 武部新

○武部委員長
 速記を起こしてください。
 竹内民事局長。


053 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 未成年者の子供に係る日本国旅券の発給申請につきましては、親権者である両親のいずれか一方の申請書裏面の法定代理人署名欄への署名により手続を行っていると伺っております。
 ただし、旅券申請に際して、もう一方の親権者から子供の旅券申請に同意しない旨の意思表示があらかじめ都道府県旅券事務所や在外公館に対してなされているときは、旅券の発給は、通常、その当該申請が両親の合意によるものとなったことが確認されてからとなるものと承知をしております。


054 枝野幸男

○枝野委員
 それは、法務省さん、その運用、外務省はおかしいと思いませんか。法律の民法の解釈として、単独行使が可能な範囲の行為なのか、それとも共同行使しないといけない範囲なのかは、民法で決まるんです。外務省の運用で勝手に決められちゃいけません。法務省としてどうなんですか、どっちなんですかということを聞いているんです。答えられないなら、時計を止めて調べてきてください。


055 武部新

○武部委員長
 それでは、速記を止めてください。
 〔速記中止〕


056 武部新

○武部委員長
 速記を起こしてください。
 竹内民事局長。


057 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 当初申し上げましたとおり、パスポートの申請、取得に関しましては、基本的には、共同親権の場合には父母共同で行っていただく必要があるというふうに考えておりますが、外務省の実務として、先ほど申し上げたようなことになっていると承知をしております。


058 枝野幸男

○枝野委員
 分かりました。法務省の見解がようやく出てきました。
 では、何で教育の範囲じゃないという解釈になるのか、それを説明してください。監護者による単独行使ができる、今回の八百二十四条の三に書いてある単独行使が可能な教育の範囲ではないというのであるならば、修学旅行に行けないわけですよ。修学旅行に行けないというようなことについて、教育の範囲を超えるという解釈がなぜ出てくるのか、説明してください。(発言する者あり)


059 武部新

○武部委員長
 それでは、速記を止めてください。
 〔速記中止〕


060 武部新

○武部委員長
 速記を起こしてください。
 竹内民事局長。


061 竹内努

○竹内政府参考人
 失礼いたします。お答えいたします。
 パスポートの取得は、国外への旅行に直結するものでございます。例えば、短期の旅行につきましては、それは委員おっしゃるような監護の範囲というところで考えられるところがあるかと思いますが、長期の海外留学とか旅行とかいうことになりますと、それは転居ということにもなりかねませんので、そのような場合には、失礼しました、ちょっと違いますね。長期の場合には共同での行使が必要になるというふうに考えられるところでございます。


062 枝野幸男

○枝野委員
 途中でお気づきになっていると思いますけれども、監護権者が単独でできる行為の中に居所の指定、変更、書いてあるんですよ。居所の指定を国内に限るのは、どこか、民法上制約があるんですか。民法上、国内の居所の変更しか駄目だなんてどこにも書いていないですよ。海外でも監護者が単独でできるという条文ですよ。それを勝手に、外務省が勝手に解釈、外でやっているんですか。そんなおかしなことは駄目ですよ、逆に言ったら。外務省が勝手にやったのなら。違うでしょう、居所の変更が可能なんだから、海外に旅行するのだってオーケーじゃないですか。どこで制約するんですか。(発言する者あり)


063 武部新

○武部委員長
 速記を止めてください。
 〔速記中止〕


064 武部新

○武部委員長
 速記を起こしてください。
 竹内民事局長。


065 竹内努

○竹内政府参考人
 失礼いたしました。
 パスポートの取得、申請は、法定代理の範囲になってまいります。両親が子を代理してパスポートを取得するということになってまいりますので、そういう意味で、監護権者の監護権の範囲には入ってこないという整理でございます。


066 枝野幸男

○枝野委員
 お気づきだと思うんですが、民事局長、やはりちょっと休憩して、ちゃんとすり合わせた方がいいですよ。だって、先ほど、医療契約は法定代理でしょう。親が契約するの、あれは。代理じゃないの、法定代理の場合もあるでしょう。監護とか、ちゃんと整理した方がいい、全部法定代理以外のものなんですか。全部親が契約して子に効果が及ぶものだけなんですか、監護の範囲って。どこでそんな制約があるんですか。子供の法定代理しているケースはほかにもあるでしょう、子の監護とか教育とか。違いますか。


067 竹内努

○竹内政府参考人
 済みません。先ほどの医療契約との比較について御言及をされたところですが、パスポートの場合には、子供を代理して親が申請するということになりますと法定代理ということになろうかと思いますが、医療契約の場合には、親が締結するというようなことに……。済みません、ちょっとパスポートだけ答弁させてください。
 パスポートにつきましては、先ほどのように、子を代理して親が締結するということになりますので法定代理に入るという理解でございます。


068 枝野幸男

○枝野委員
 本当に監護や教育の範囲には法定代理行為は入らない、法務省はそういう解釈をしているでいいんですね。そして、医療契約は全部法定代理行為であって、子が契約当事者ではない、これでいいんですね。後で誰かが厚労省か何かとやりますよ。間違っていたら全部審議やり直しですよ。


069 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 親が子を代理して契約を締結した場合には、その契約上の義務が子に帰属するという重大な結果を伴いますため、親権者でない者に法定代理権を付与するということは慎重に検討すべきだと考えております。


070 枝野幸男

○枝野委員
 共同親権の場合の条文ですから親権はあるんだよ、共同行使の例外をここで決めているんですから。法定代理権は元々あるんですよ。ただ、共同行使じゃなくて単独行使できる範囲がどこかと聞いているわけですよ。
 子供に影響を与えるというのだから、医療行為が法定代理でやっていようが、子供が契約して親が承認しようが、同じように、医療行為の結果、子供に重大な帰結、影響を与えるのは一緒じゃないですか、契約の形態でなんて変わらないし。
 そもそも、監護や教育の範囲には法定代理行為は含まないなんて条文のどこから読めるんですか。どこにも書いていないじゃないですか。監護や教育についての親権の行使でしょう。親権の中には法定代理行為もあるし承諾行為もあるけれども、だけれども、制約なんかつけていないのに、何で法定代理行為に限ると勝手に解釈が出てくるんですか。


071 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 現行の民法の下でも、親権者と別に、監護者の定めがされることがありますが、現行民法の解釈について、裁判例によれば、子の財産を管理することや子を代理して契約を締結することなどは監護者の権利義務には帰属しないとされております。
 本改正案は現行民法の解釈を明確化するものでありまして、このような裁判例に変更を加えるものではないと承知しております。


072 枝野幸男

○枝野委員
 その判例は、子の固有の財産について、親権者である親が勝手に処分とかしちゃ困るから、だから、それはせめて共同親権で、二人いるんだったら二人両方要るよね、それはそうですよ、事柄の性格上。
 だけれども、子供が病気ですとか、海外修学旅行があってパスポートを早く取らなきゃならないという話と、子供が、親が持っていなくて子供だけ持っているというのは、かなり特殊なケースですよ。そういうケースで、親が勝手に処分しちゃいかぬとか、子供に借金を負わせるような契約を親が勝手に単独でやっちゃ困るとか、そういう話と全然性格が違うので、法定代理全般について共同じゃなきゃいけないだなんて判例ですか。その判例の解釈で一回集中審議やってもいいぐらいですよ。いいですか、本当にそれで。


073 竹内努

○竹内政府参考人
 今、委員御指摘なさったのは、東京高裁の平成十八年九月十一日の決定のことかと思いますが、この決定は財産処分に関する事例ではないというふうに承知をしております。


074 枝野幸男

○枝野委員
 財産処分のようなケースが典型の、子供に多大な債務を負わせたりとかするようなこととか、子の財産を侵害するようなことになるとか、労働契約みたいに子供に物すごい負担を与えるかもしれないようなことについては、それは法定代理、ちゃんと二人でやってくださいと。だけれども、子供の利益になるための教育や監護の話についてはちょっと性格が違うでしょう。これだけやるわけにはいかないので、いずれにしろ、でも、単独で監護者ができるかどうかという範囲について、明確な答えが出てこないわけです。
 もう一つ申し上げると、実は、共同行使しなきゃならないというのは、離婚後だけじゃないんです。これは離婚後共同親権だけ問われているんですが、婚姻中でも、例えば協議離婚中であるとか、裁判離婚、裁判、調停中であるとか、DVから逃げている場合とか、それでも、今回の改正法で、共同親権で、共同行使が明文化されたわけです、まあ従来も、解釈上はそうなんですけれども。
 その場合、これは離婚後なんですよ、監護者の単独行使が可能になるのは、八百二十四条の三というのは。そうすると、八百二十四条の二を使わなきゃいけないんです。DVから逃げています、だけれども、例えば子供の手術だという場合、子供の手術は、先ほど、急迫の事情があるときで可能かもしれないけれども、例えば、それ以外の、日常の教育のこととか日常の監護に関することとか、そういうことは、八百二十四条の三は使えませんので、八百二十四条の二で、一項ただし書の三号とかを使って、単独でできる範囲はどこなんでしょうね。どうなっているんですか。
 従来の解釈を明文化したんだと思いますけれども、どこまでできるんですか。DVで逃げている親が単独で、離婚協議の相手方と意見が一致しなくても、子供の教育や監護のために単独でできるというのは、範囲はどこなんですか。


075 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 委員お尋ねのところは、改正案の民法八百二十四条の二第二項の「監護及び教育に関する日常の行為」の範囲というふうに理解してよろしいでしょうか。(枝野委員「うん」と呼ぶ)
 本改正案は、父母の双方が親権者である場合には、親権は父母が共同して行うこととした上で、監護又は教育に関する日常の行為をするときは、親権を単独で行使することができることとしております。
 本法律案における監護及び教育に関する日常の行為とは、日々の生活の中で生ずる身上監護に関する行為で、子に対して重大な影響を与えないものを指しております。例えば、その日の子の食事といった身の回りの世話や子の習い事の選択、子の心身に重大な影響を与えないような治療やワクチン接種、あるいは高校生が放課後にアルバイトをするような場合などがこれに該当すると考えられます。
 
〔委員長退席、熊田委員長代理着席〕


076 枝野幸男

○枝野委員
 今どき、修学旅行は当たり前です、日常ですよね。だって、国内の修学旅行ならオーケーなのに、海外の修学旅行、パスポートが取れないから行けないじゃ、子供がかわいそうじゃないですか。これも日常に入りますよね。


077 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 まず、国内の修学旅行は、学校行事の一環でございますので、それは身上監護に関する行為に入ろうかと思いますが、パスポートの取得という面では、やはり法定代理ということになってまいりますので、そこは父母の代理権のみということになろうかと思います。


078 枝野幸男

○枝野委員
 では、外務省、本人申請で、親の承諾にしてください、親権者の承諾に変えてください。そしたら、楽になるから。どうですか、外務省。


079 長徳英晶

○長徳政府参考人
 お答え申し上げます。
 未成年者に係る旅券発給申請については、現状においては、旅券発給申請の法定代理人署名欄に一方の親権者の署名を求めているところでございます。
 他方、外務省としましては、本改正案の議論を踏まえて、本改正案の解釈に基づき、今後、未成年者の旅券取得について、適切な手続を定めていきたいというふうに考えております。


080 枝野幸男

○枝野委員
 採決までに結論を出してくださいよ。論点、分かりましたでしょう。
 今みたいなところでみんな不安に思っているわけですよ。一々、子供が修学旅行に行くのに、別れて、うまくいっていない、顔も見たくない、別れた元の配偶者と意見をすり合わせて了解をもらわないと、いちゃもんをつけられて子供が修学旅行に行けなくなるなんて、不安なわけですよ。だから、早く、この法案の採決までには、委員会採決までに結論を出してください。
 こればっかりやっていられないので、父母の協議が調わないときの話をしたいんですが、改正案の八百二十四条の二、三項で、家庭裁判所が単独行使を認めることができるとしますが、この手続は、家庭裁判所、例えば、民事事件における保全処分、差押えみたいな処分、即日ぐらいにやってくれますよね、多くの場合は。それから、刑事事件における逮捕状手続、これも即座にやってくれますよね。必要に応じてこれぐらいのスピードでやってください。できますか。


081 馬渡直史

○馬渡最高裁判所長官代理者
 現時点で法改正後の裁判所の運用について具体的に申し上げることは困難でございますが、改正案にある改正後民法八百二十四条の二第三項により、特定事項に係る親権の行使を父母の一方が単独ですることができる旨を定める手続につきましては、一概には言えないものの、親権行使の内容、時期、その他の状況に応じまして、スピード感を持った審理が必要な場合があることは当然考えられるところでございます。
 仮に家族法が改正された場合には、今後、そのような場合も想定しながら、例えば、改正法施行後の運用に関する大規模庁での集中的な検討、全国規模での検討会の機会を設けるなどいたしまして、各裁判所における施行に向けた準備、検討が適切に図られるよう、必要な情報提供やサポートを我々として行ってまいりたいと思っております。


082 枝野幸男

○枝野委員
 いや、現実に、刑事司法では、逮捕状というのは、人の身柄を拘束するというすごい強力な法行使を即日でやってくれるんですよ。同じようなことができる体制を整えてください。そうじゃないと、これは危なくて使えませんよ。裁判所に申し立てたけれども、普通の家裁の手続、何か月も先の話に、幾ら指定をされて審判をやられたって何の意味もないですから。できますね、やってください。
 
〔熊田委員長代理退席、委員長着席〕


083 馬渡直史

○馬渡最高裁判所長官代理者
 仮に改正法が施行された場合の運用についてはこれからの検討になってまいりますが、これまでの運用、今の運用にとらわれることなくしっかりと検討をする必要があるというふうに考えているところでございます。


084 枝野幸男

○枝野委員
 外務省も、家庭裁判所すらこれからの話だと言っているんですよ。これがどうなるかでこれについての評価は全然変わるんですよ。私は、一般的にも共同親権は必要かどうかと疑問に思っていますけれども、だけれども、仮にこれを認めるとしたって、今みたいなところがはっきりしなかったら賛成できるわけないじゃないですか。大前提の準備ができていないんですよ。生煮えで出してきているんですよ。
 最後に、実はこれは、夫婦間とか親子の関係だけを問題にしていますが、例えば医療機関、今、ここのやり取りで、緊急の手術は片方の親がオーケーですとサインしたらやっちゃっても問題ない。だけれども、何か裁判がありましたよね。俺は同意していないと言って、父母のもう一方が文句をつけた裁判がありましたでしょう。
 そういったケース、怖いでしょうね、医療機関としても。片方の親、父母の一方の署名をもらったから大丈夫だと思ってやったら、もう片方の親から、いや、俺は同意していない、俺は親権者だとかと言われたら困るじゃないですか。外務省だって、そういうのは警戒しているから、片方からいちゃもんをつけられたら止める、そういう手続をしているわけでしょう。
 これは、こういうところばかりじゃないわけですよ。例えば、広い意味での取引の相手方は、法定代理であるにしても、それから、法定代理ではない、まあ法定代理なんだな、日常の行為の、契約行為があるわけですよね。その相手方は、まず、この子供の親が婚姻中であるのかどうかだなんて分からないわけですよ。婚姻中であるかどうか分からない上に、離婚後の共同親権なのか単独親権なのか相手方は全然分からないんですよ。違いますか、そうなりませんか。


085 竹内努

○竹内政府参考人
 例えば、取引行為を前提にいたしますと、取引の相手方にとってみれば、婚姻中で共同親権なのか離婚後で単独親権になっているのかというようなことは、確かに分からないことがあるかと思います。


086 枝野幸男

○枝野委員
 例えば、子供の不動産を処分するとか、子供を連帯保証人にするとか、こういう契約であれば、相手方も相当な慎重なことをしてくださいという話は分からないではないんです。だけれども、例えば医療行為であるとか、パスポートを取るであるとか、まさに日常の範囲がどこまでか分からないから、どこまで確認をしなきゃならないのか、大混乱が起きますよ、これは、共同親権、離婚後でも認められたら。
 今なら、離婚していることは、聞いたりとか例えば学校とかそういったところで、一定、把握をしようと思ったらある程度できるかもしれないけれども、共同親権か単独親権かまでちゃんと確認しないと、しかも日常の範囲がここでのやり取りでもはっきりしない、そうしたら、もう全部両方取れという話になりかねませんよ。だから、こういうとんでもない弊害が起こるんですよ。
 私は、百歩譲って、この日常の範囲とか、急迫の行為とか、こういったところの範囲もよく分からないということを考えると、仮に共同親権、つまり婚姻中であったとしても親権者の外形を持った者の一人が、父母の一人がちゃんと親権行使の形をつくって代理行為とか承諾行為をしていれば、相手方は免責される。重大な過失がなければ、故意又は重過失でなければ免責される。もちろん、不動産の取引であるとか連帯保証人にするとかであれば、ちゃんと確認しなけりゃそれは相手方の重大な過失でしょう。でも、医療機関とか、それから学校でいろんな関係があるとか、普通の日常の取引、まさにかなり幅広い範囲については、それは、この法律をどうあろうと、親の一人と思われる人が外形的に親権の行使として行った行為については、相手方は免責される、この条文を入れてください。これを入れてくれれば、相当不安が解消される。
 つまり、実態として監護している人が子供のためによかれと思ってやることは、多額の財産の処分とか、保証人になるとか、そういう、ちゃんと確認しない相手方に重過失を取れるようなケース以外は何でもできちゃう。こうしないと、危なくてしようがないです。
 どうですか。


087 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 本改正案では、父母双方が親権者である場合には親権を父母が共同して行うこととした上で、親権の単独行使が許容される範囲を明確化するために、子の利益のために急迫の事情があるときや監護又は教育に関する日常の行為をするときは、親権の単独行使は可能であると定めております。
 親権者が未成年の子を代理して法律行為を行おうとする場合などにおいて、当該代理行為等の相手方の判断に支障を生ずることがないよう、委員御指摘のとおりですが、先ほど述べたような親権の単独行使が許容される範囲を含め、改正後の民法の内容について、関係府省庁等とも連携して、適切かつ十分な周知、広報に努めたいと考えております。
 また、取引の相手方の保護につきましては、現行民法の第八百二十五条によりまして、父母が共同して親権を行う場合において、その一方が共同の名義で子に代わって法律行為等をしたときは、取引の相手方が悪意でない限り、その行為が他の親権者の意思に反したときであっても、そのためにその効力を妨げられないとされておりまして、この条文を改正する予定はしておりません。


088 枝野幸男

○枝野委員
 それを、単独行為で大丈夫ですよと。監護者が、八百二十四条の三はいい規定だと思うんですよ、これを設けたことは。これを作ったことで、だから、離婚するときは、必ず監護者の指定、協議離婚の場合でも、この議事録を使って周知をしてください。もしこの法律が、法案が本当に通ってしまったら、協議離婚であろうが何だろうが、監護者をちゃんと指定して、監護者であれば、単独でかなりのことができる、大部分のことができると。
 問題は、その範囲が、今のやり取りとかパスポートの話にしろ、はっきりしない。はっきりしないんだから、もう基本的には単独でオーケーで、相手に、悪意か、重大な過失の場合もまあいいですよ、だって、本当に多額の子の不動産を親が勝手にやっちゃいますというときは相当慎重な手続を相手に求めていいと思うんですよ。だから、そういう条文を一個置けば、相当不安は解消する。監護者さえちゃんとしておけば、共同親権だろうと何だろうと、子供とか、それから監護している親が、何か別れた元の配偶者との関係でその承諾を取らなきゃいけない、判こも取らなきゃいけない、そういったことで苦労することがなくなるわけですよ。そうすれば、この法案に対する世の中の評価、見方、全然変わってきますよ。
 だから、これを設けませんか。親の親権行使の相手方は、監護していると思われる者の、父母の一方の親権行使で、悪意又は重大な過失がなければ免責されるという条文を一個置けばいいんですよ。どうですか。


089 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 委員の御趣旨は、現行民法の八百二十五条による、先ほど申し上げました、夫婦が共同して親権を行う場合において、その一方が共同の名義で子に代わって法律行為をしたときは、その取引の相手方が悪意でない限り、その行為が他の親権者の意思に反したときであってもその効力を妨げられないという、この規定がございまして、改正後におきましても、この規定、同じようにありますので、それで達成されるところがあるかと存じます。


090 枝野幸男

○枝野委員
 ただ、その条文だけで十分に機能しないのは、今の外務省ですよ。単独で出されてもパスポートを出しているけれども、もう片方の親から文句をつけられたら止めると言っているんでしょう。それをされちゃうと動かなくなるんですよ。だから、行為の時点でオーケーだったら、もうそれで自動的にオーケーにしてあげてください。そういう書き方にしてもらわないといけないんです。
 いちゃもんをつけられるまでに法律行為の効果が、例えばパスポートの発行が終わっていなければ、いちゃもんがついたところで止めるということを外務省がやっているからいけないんです。それをやらないでください。出てきたところで自動的にやればいいだけですよ。そうでしょう。
 例えば、医療行為であろうが、様々な日常の売買とかそういう取引であろうと、それも、その行為の時点で、後から言ってきても駄目だ、行為の時点でその外形が整っていたら、後からいちゃもんをつけても、それは構わない、気にしなくていい、そういう規定にしなきゃいけないということを申し上げたいんです。これは是非考えていただきたい。
 もう時間がなくなったんですが、これは最後に。
 共同親権を認めるケースであっても、今のようなことをやれば大分心配は収まるんじゃないかとは思っている一方で、ただ、やはり本質的に、共同親権というのは、離婚後も共同して親権を行使することを前提にしているわけですよ。
 さっき言ったとおり、離婚の場合でも、仲よく離婚するケースも例外的にはある、芸能人の離婚なんかのニュースを見ていても、本当かどうか知らないけれども、そういう話もあるから、一概に全否定はしないけれども、逆にしないといけないんじゃないんですか。
 協議離婚の場合だと、早く離婚しないといけないとかという事情に追われているから、共同親権だろうと何だろうと、とにかく離婚したいというような話で、真意でなく共同親権で離婚しちゃうケースがある。それは、事後に家庭裁判所に持っていって単独親権に変更とかといったって、そうした方は経済的にも困窮しているケースが多くて、なかなかそんな手続に持っていけない。
 だから、例外的に共同親権が、ケースはあっても構いませんから、その代わり、例外と原則を逆にして、双方の真摯な合意がある場合に限って、家庭裁判所の審判を経た場合だけ共同親権にできる、これならば、私は百歩譲ってオーケーだと思う。逆に、家庭裁判所が責任を持ってくれ、家庭裁判所に必ず持っていってくれ、協議離婚じゃ駄目だ、協議離婚であっても、親権者の決定については、共同親権にする場合は必ず家庭裁判所に持っていって、家庭裁判所の審判。その代わり、家庭裁判所の責任は重いですよ。それで間違って、そこで共同親権にしたせいで、結果的にDVで人が死んだというのは、家庭裁判所の責任だから。
 せめてそういうケースに変えてほしいんだけれども、どうか。これは法務大臣に聞いた方がいいのかな。まあ、どっちでもいいです。


091 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 本改正案の趣旨でございますが、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが子の利益の観点から重要であるという理念に基づいております。
 その上で、離婚後の親権者を父母双方とするか、その一方とするかについては、その御家庭の個別具体的な事情に即して、子の利益の観点から最善の判断をしていただきたいというふうに考えておりまして、本改正案もこのような考え方に沿ったものでございます。


092 枝野幸男

○枝野委員
 大口先生が先ほど質疑されていたのを院内放送で見させていただいていて、確かに、例えば、裁判離婚になって、裁判所がこの条文の解釈をどう考えて、どう判断するか。DVの具体的な証拠まで挙げろだなんて言わないということは、多分そういう運用をしてくれると僕も思うんです。
 だけれども、そこまで持っていけない、離婚のときに、協議離婚でも何でも、とにかく早く、とにかく離婚しないとというのは、やはり離婚のケースの相当なケースであり得るんですよ、切迫していて。その場合には、真意でなく共同親権にしてしまう、合意してしまう。そうすると、子供が不幸ですよ。本当に双方でコミュニケーションを取って、夫婦仲は悪くなったけれども子供のことは一緒にやろうね、そういうケースはありますよ、確かに。そういうケースは共同親権にしてもいいけれども、そうじゃないケースも協議離婚では共同親権になってしまいかねない。それは排除しないと、子の利益にならないから、共同親権にする場合は、必ず親権者の指定を家庭裁判所に持ち込む。家庭裁判所の責任で、大丈夫だな、真摯な合意だな、これならば、僕は百歩譲ってありだと思うんです、先ほどの取引の安定の話と併せて。
 どうですか。


093 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 本改正案におきましては、裁判所が父母の双方を親権者と定めるかその一方と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係のほか、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないということとしております。
 その結果、例えば、父母間での協議ができない理由などから父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるような場合には、その一方を親権者と指定することとなると考えられます。


094 枝野幸男

○枝野委員

 いや、だから、それは分かっていて、それはそれなりに適正に運用されると期待したいですし、まあ一〇〇%ではないけれども、一定信頼しますが、家庭裁判所に持ち込まないで共同親権が行われるんですよ、協議離婚で。そこから審判に、家庭裁判所に持ち込むというのは相当なエネルギーがないとできないんですよ、特に貧困のシングルファーザー、シングルマザーは。
 だから、必ず裁判所に持っていって、今のような基準で裁判所が適正にオーケーだなという確認ができるときだけにしてくださいと私は申し上げているので、大臣は本当に、同じ埼玉で非常に優秀な方と存じ上げているので、分からぬふりをしてずっと聞いていらっしゃったと思うので、御理解をいただけたと思うので、今の、私の今日申し上げた二点を最低限変えていただかないと、とても賛成できないなと申し上げて、あとは、まさに今申し上げた、そうはいったって離婚の現実の場面では、共同親権だろうが何だろうが、本当はこんな人の顔も見たくないし無理だとかというケースであっても、とにかくまず離婚を取ることが大事だからということが実態では行われている話などは同僚議員がやってくれると思いますので。
 引き続き真摯に受け止めて、別にこの法律の目指すものは私たちも、私も否定しないんですが、まともなものにするために、是非柔軟に修正を考えていただきたいということを申し上げて、私の質疑を終えます。
 ありがとうございます。



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