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鈴木明子 参考人 第213回 参議院 法務委員会 令和6年5月7日

鈴木明子 参考人
中央大学法学部兼任講師
共同養育支援法全国連絡会母の会 アドバイザー兼共同責任者

参議院 法務委員会 共同親権法案
令和6年5月7日【文字起こし】

※個人的な内容理解のための、庶民による文字起こしですので、誤字脱字については、ご容赦下さい。


001 鈴木明子 参考人

中央大学法学部兼任講師
共同養育支援法全国連絡会母の会アドバイザー兼共同責任者 

『中央大学・法学部』で兼任講師を務めております、鈴木明子と申します。『共同養育支援法全国連絡会母の会』に於いては、アドバイザー兼協同責任者を務めさせて頂いており、わが子に会えない母親たちの存在についてお話しする機会を頂いております。

今回、この貴重なお時間を頂き、大変ありがたく思っております。

私、法学部で兼任講師をしておりますけれども、法学や法律の専門家ではないという事は、お伝えしておきます。私の専門は民俗学であり、『日本の家制度』或いは、地域社会を研究対象としております。

少し前の日本社会に於きまして見られた、『親子の断絶』というのは、離婚によって生き別れた母親が、わが子の姿を遠くから見つめるという、切ない話がありました。

時代が移り変わり、性別役割分業が進み、母性優先という現象が登場し、現代の日本では、母親・単独親権者が多数となり、母親に引き取られる子どもたちが、増えております。かつては父親の再婚によって、いじめられる子どもたちの話がたくさんあり、『シンデレラ』や『白雪姫』といった話が、分かりやすいと思いますけれども。そうしたお話、同じお話しが日本にもたくさんありました。

一方、現代では、母親の再婚相手による、子どもたちの虐待という悲しい事件が後を絶ちません。日本文化を研究している身としては、祭りや行事といった伝承母体としての『家』というのは揺らいでいるのに、何故か現代社会に於いては、『ひとり親』という問題に関して、『家』由来の『縁切りという文化』が残っているのに、愕然としております。

母親・単独親権者が増えている一方で、わが子に会えない母親が増えているとも言われております。

従前の監護状況によって、監護者が決められているのであれば、母親による面会交流の申し立ては、増える筈はなく、減る筈ではないか、という仮説を立て、研究をしております。

今回は、『わが子と引き離される、母親』についての話を取り上げていきたいと思います。

現在、家裁を利用している人々からは、家裁は嘘が通る、証拠を出しても考慮してもらえないなど、様々な悪評を聞きます。国会での答弁に於きましては、適切に審議されていると、繰り返されておりますが、「ブラック・ボックスな家裁」と言われる事があります通り、密室の審議であるため、客観的な検証が難しく、誰かが声を上げても、個別の事案として一蹴されてしまう現状があります。

しかし、個別の当事者の話も、研究の蓄積によって、客観的なデータになり得るという事は、これまでの他の当事者研究からも、明らかであり、日本の近現代史に於ける歴史を、歴史的な観点を踏まえていくという点で、私の専門分野は、親和性が高いと考えております。

『わが子と引き離される母親たち』というのは、アンコンシャス・バイアス(unconscious bias)によって、同じ立場の父親たちからも、偏見の目を向けられる事もあり、弱い立場に置かれております。

「産後すぐに、追い出された」「専業主婦で追い出された」「共働きの家庭で、お父さんたち同様に、仕事から帰ったら、家がもぬけの殻であった」等々、従前の監護者であった子どもたちを連れ去られたお母さんたちは、精神的にも、肉体的にも、また金銭的にも追い詰められている事も多く、話を集める事は難しく、研究としてはなかなか進めるのが難しい現状もあります。

しかし、断片的ではありますが、現在進行形で起きている『わが子と会えない母親の存在』を浮き彫りにする事によって、その背景にある、単独神経による子どもの奪い合いと、面会交流の現状、関与する手法の現状についての一端を明らかにし、今後への手掛かりにして頂きたく存じます。

母親の現状を明らかにする事はまた、母親より何倍も多い、お父さんたちの現状の理解にも通じると考えております。

今回の民法改正に関しては、まだまだ不十分であり、改善して頂きたい点は多々あります。

しかし、日本的な『縁切り文化』の意識を変える、第一歩にはなるものと信じております。

まず、資料の方1から見て頂きたいと思いますけれども、資料1の1、グラフ1に関しましては、既によく知られている、離婚件数に関しての統計データをグラフ化したためので、そこは飛ばさせて頂きます。今回、使いたいのは、資料1の2からになりますが、『ブラック・ボックスな家裁』と言いましたけれども、家裁というのは、プライバシーの問題という事で、情報はほとんど公開されておりません。

司法統計のデータはありますが、大枠しか見えていないため、数字などのデータだけは、もっと公開して欲しいと研究する立場から思っております。

また、是非、利用者アンケートなど、行って頂きたいと思っております。

今回、用いた数字も、実は一般公開されているものではありません。仮説を基に、様々な資料を探し、最高裁判所に問い合わせて、入手する事が出来た資料になります。

元の資料に関しては、資料1の4として添付しておりますので、そちらをご覧下さい。こちらの資料を基に作ったのが、グラフ3、4になります。

私の方では、母親についての言及が中心となりますが、わが子に会えない母親が増えているのではないかというふうに言われておりますけれども、このグラフを見て頂きますと、母親による面会交流の申し立て数は、実は増えておりまして、現在、母親・親権者数が増えており、父親・親権者が減っている中で、減少していないという現状が浮かび上がって参りました。

即ち、わが子に会えない、父親・親権者が減っているにも関わらず、わが子に会えない母親たちは、増えている事になります。

こうした事が、何故起きているのかという事に関しましては、背景について参考でお話したいと思っておりますけれども。一番、大きな理由といたしましては、資料グラフの4のところに、丸で囲みましたけれども。2009年以降、数字が増えております。これを微々たるものと捉えるのか、どうかは人によって違うかもしれませんが。それまで、毎年1%程度の増えだったんですけれども、2010年から約2%ずつ、約倍増えていく事になっております。

何故、そういう事になったのかという事を、私の方で歴史的な状況、どうだったのかという事で調べてみたところ、資料2、3などにあります通り、増加がみられる背景としては、日弁連が、『日弁連60年史』というものを公開しまして、そこで『単独親権による子どもの奪い合い』ですね。それから、『親権を奪われたら、子どもに会えなくなる』というような事を公開した。これが、大きいのではないかというふうに思っています。

逆に言えば、父親でも、『先に連れ去ったら親権を獲得出来る』という事で、父親による連れ去りが行われるようになり、こうした数字に、その結果が表れているというふうに思っております。

さらに言えば、『連れ去り勝ち』によって親権を獲得する、裁判所の運用実務。これが、可視化されたという事になってくるのではないかなというふうに思っております。

このように、従前の監護者であった母親であっても、ひとたび連れ去られてしまいますと、男女平等によって、監護者になれないだけでなく、会う事さえもままならない状況に陥ります。

本来は、話し合いの場の筈であった調停が、司法制度改革によって、2004年以降、家庭裁判所へ人事訴訟、即ち離婚裁判が移管されました。そういたしますと、訴訟を見据える対立の場に、家庭裁判所が変わった、と。これも司法制度改革の影響として、言われるところでございます。

さらに、民事から家裁という事で、地方裁判所から、家裁という事で、全く客観的な検証が出来ない、密室の審理の場に変わってしまった、という事もあるかと思います。

さらにもうひとつ、これも言われている事なんですけれども、代理人弁護士がつく事例が増えた事によって、そこがまた、さらに追い打ちを掛けたのではないか、と。そういうような事も、言われております。

ただ、家庭裁判所の調査官や調停委員、弁護士の方などと話をしますと、真摯に対応されている方たちがいる、というのもよく分かっております。しかし、一方で、子どものためになっていると、どうしても思えないような話も多数、聞こえてきます。

依頼人が、代理人がつくという事は、やはり、そこには勝ち負け、勝負というものになって参ります。そうすると依頼人を勝たせる、という勝負になってしまうので、依頼人を勝たせるためには、どうしたらいいのか。相手を貶める。そうした状況が、出てまいります。そうした事によって、一層、『親子の断絶』が進んでしまっているという事が、母親の立場に於いても、見られるようになったと思います。

さらに言えば、単独親権意外に葛藤を高める要因のひとつとなっていますのが、民法770条の『その他、婚姻を継続し難い重大な事由』、有責主義などとも言われておりますが、離婚に際し、親権者指定を獲得する為、悪質な場合には、『子の連れ去り』や『追い出し』を行ない、親権者としての優位性を手にするために、相手を悪者にし、相手を貶めて、自分を有利にするという事で使われております。

是非、今回そうした葛藤を低めるために、今回の民法改正では、取り上げられませんでしたけれども、1996年の民法改正要綱案で提案されていた、『破綻主義』などに対しても、今後、議論として考えて頂きたいなというふうに思っています。

では、そうした、わが子と離されている母親の面会交流の現状について、次に資料からお話をしていきたいと思います。

資料5に関しては、母親が審判で決まっても、会えなかった事例という事で、これは『家庭の法と裁判』に挙げられている資料です。ご覧下さい。

そして、資料6に関しましては、従前の監護者であり、共同親権中の母親が、監護権を取り戻せないだけでなく、わが子に会えない現状について、挙げております。こちらの方も、お読み頂ければ、というふうに思います。

家裁での調停や審判が決まっても、交流が出来ない状況に関しまして、続いてお話を少し、挙げていきたいと思います。

親権を父親、監護権を母親に分属して、離婚後に面会交流をしていたが、ある日、親権者の父親に、子どもたちを連れ去られ、その後、会えなくなってしまった。何が起こったのか、どうしていいか分からないうちに、元・夫の再婚相手と養子縁組されてしまった。こういう人たちが何人もおります。

日本人男性と日本で結婚し、子どもを連れ去られ、子どもと会えなくなってしまった、外国籍のお母さんたちも何人もおります。

目の前で子どもたちを車に押し込められ、連れ去られ、暫くして、やっと試行面会で子ども達に会えた時、「ママの事、大嫌い」と言われるも、「そう言わないと、ママに会えなくなっちゃうから」練習して来た、という幼い子どもたちの悲痛な声なども聞こえて参ります。

連れ去られた直後、子どもたちは、「ママに会いたい」そういう事を言う人、子どもたちは多いです。

しかし、連れ去られて暫く経って来ると、「ママ、大っ嫌い」というような言葉を発するようになります。

資料6のAさん、資料7の1にも詳しくあるので、見て頂きたいですが。

幼い子どもが、「ママを、クソババア」というような、そういう状態に陥っております。

もうこれは、監護者が子どもにそうさせているという事は明らかであり、家庭裁判所が、この状態は問題ないと見做している現状は以上ですし、こんな状況、放置している家庭裁判所自体が、児童虐待に加担していると言っても過言ではない状況になります。

Aさんの場合、夫自身が不貞している、有責配偶者です。まだ、離婚していない共同親権がですが、子ども達と5年、会えていません。「ママの事を嫌い」と言っていた子どもたちが、いつしか引きこもりとなり、不登校になるといった、悲しい事例もたくさんあります。

子どもの奪い合いが、子ども達に影響を及ぼしているという話が、たくさんございます。

資料7の1から7の3に関しましては、こうした母親でさえも、わが子達に会えない状況に関しまして、海外のメディアで取り上げられているという事例です。

今、お話ししました通り、家裁で決まっても、会う事が出来ません。

即ち、面会交流の権利性がない。さらに言えば、法の支配がないという状況にあります。

今回の法改正が、そうした状況に対して、どの程度、寄与するのかというのは分かりませんけれども、是非、そうした問題に対して、何らかの制度設計や、ガイドラインの方を、お願いしたいというふうに思っております。

最後に、もう時間ありませんけれども、制度設計を考えるための仕組みの基礎資料として、幾つか挙げておりました。

家庭裁判所の充実や行政の支援など、様々に提言されていますが、法律を業としてない立場だからこそ、少し忌憚なく、思いつくままに述べさせて頂きます。

家裁の充実が問われておりますが、資料10は、1980年・事件が少なかった時代に、家裁調査官が貢献的機能を果たしていた記録です。家裁の充実には、裁判所定員法など、他の法改正が必要になってきますし、また、ただ、増やせばいいというものではなく、貢献的役割が重要です。

増大した事件数からいって、同じ事を期待するのは難しいため、家裁以外の機関や職種との連携が必要になって来ると考えます。

子ども手続代理の活用も言われていますが、子どもの意思を適切に聴取するためには、心理職などの関与求めたいところですが、家事事件手続法に子どもの意思とある事により、法律事務とされてしまうため、弁護士にしか関与が許されないのでしょうか。心理職や、支援機関や、第三者の関与といった時に、問題になってくるのは非弁行為であります。

またADRの利用等もありますが、この事に関しても、別の法制審を立ち上げないと、利用する事が出来ないのか、などなど。

考えて頂きたい事は、たくさんあります。

親教育や、共同養育計画の作成などが重要な課題となってくると存じますが、行政や支援機関をはじめとして、関与する体制について、改めて、非弁行為などの問題を踏まえて、捉えて頂く必要があると考えています。

最後に、今回の民法改正は、子どもの為と言われております。

その一方で、『親権は親による選択という視点』でしか、語られておりません。

法によって、強制的に親権を剥奪されて来た、現行の強制・単独親権制度化に於いても、『親に捨てられた』と捉える子どもたちがいます。

民法改正で、最終的にどうなっているのか、分かりませんけれども。

『親に捨てられる、子どもたちにとって、これ以上、残酷な事はない』と私は思っております。

是非、そうならないように、きちんと判断出来るように。そして、子どもの意思、子どもの涙を減らすようにという事で、改めて、子どもたちの未来のための法改正として頂くように、お願い申し上げて、終わらせて頂きます。

ありがとうございました。

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