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立憲民主党 道下大樹 衆議院議員 第213回国会 衆議院 法務委員会 第3号 令和6年4月2日

140 道下大樹

○道下委員
 立憲民主党の道下大樹でございます。
 時間も限られておりますので、民法改正案について質疑をさせていただきますが、まず冒頭、この民法改正案について、私の所見を述べたいと思います。
 法制審議会家族法制部会において、離婚後も父母双方が子の親権を持つ共同親権を導入する民法改正要綱案をまとめて、そして、一月三十日、この採決が行われて、賛成多数で了承されたということでありますが、しかしながら、その参加委員二十一人のうち三人が反対を表明、慎重派委員の訴えをきっかけに加わった、DV、虐待を防ぐ取組の必要性などを盛り込んだ附帯決議は、内容が不十分だとして二人が反対したということであります。
 この家族法制部会の大村敦志部会長は、全会一致が望ましかったが、今回は、異論が残り、採決になったほか、通常では余り実施しない附帯決議もつけた、異例だと思っているということを述べられたということであります。部会長がこのような発言をするということは、非常に私は、この要綱案、そしてそれを基に作られた民法改正案というものが、この部会においてもまだまだ議論が不十分だったのではないかというふうに思いますし、また、家族法制部会の委員の一人は、部会の性質上、民法の範囲内での議論にとどまった、子の利益に直結する福祉分野の議論はほぼ手つかずで、じくじたる思いだと報道機関の取材に答えられたということでございます。
 福祉分野のみならず、先ほど枝野議員の質問に対して、法務省と外務省とのパスポートの発行について全然煮詰まっていないというか、話合いが、調整がついていないというのが明らかになった、生煮えの法案が出されたということを私は認識をしております。それを議論しなきゃいけないということは非常に困難を極める、与野党共に困難を極めるというふうに思います。
 まず、この法制案の中身に入る前に、よく、共同親権の導入を求める方々や団体、そして一部の議員の方が一つの理由にしているのが、ハーグ条約についてでございます。日本がハーグ条約を締結したわけだから他国と同様に共同親権を導入すべきだというような、ハーグ条約が理由にされているわけで、根拠にされているわけでありますけれども、ちょっとこの辺は私は違うというふうに思います。
 そこで、改めて、このハーグ条約について、外務省が中心に行っているハーグ条約の運営について、体制と業務内容について、今日は外務省の政府参考人にお越しいただきました、ありがとうございます、御答弁をお願いしたいと思います。


141 長徳英晶

○長徳政府参考人
 お答え申し上げます。
 ハーグ条約は、子の迅速な返還及び国境を越えた親子の面会交流の確保という条約上の義務を履行するために、各締約国に中央当局の設置を義務づけております。我が国は、ハーグ条約実施法に基づいて外務大臣を中央当局としており、その実務については領事局ハーグ条約室が担当しております。ハーグ条約室には、本日現在、法曹関係者、児童心理専門家、DV対応専門家などを含む二十人の職員が勤務する体制となっております。
 こうした体制の下、外務省は、ハーグ条約に基づく援助申請の受付、審査や、子の所在特定、当事者間の連絡の仲介、裁判外紛争解決手続機関やハーグ条約案件に対応可能な弁護士の紹介、それから親子交流支援機関の利用に関する費用負担などの様々な支援を行っているところでございます。


142 道下大樹

○道下委員
 ありがとうございます。
 ハーグ条約に関する業務は、今も御答弁あったとおり、子の返還援助申請の受付や面会交流に関する費用負担の援助等であって、親権を決めたり親権の在り方を議論したりする条約ではないという認識でよろしいですね。


143 長徳英晶

○長徳政府参考人
 先ほど述べさせていただきましたとおり、外務省では、ハーグ条約に基づく援助申請の受付、審査や子の所在特定などの様々な支援を行っているところでございます。
 委員御指摘のとおり、ハーグ条約は、監護権又は親権をどちらの親が持つのか、子がどちらの親と暮らすのかなど、子の監護に関する事項について決定することを目的とするものではございません。親権を決めたり、親権の在り方を議論したりする条約ではございません。


144 道下大樹

○道下委員
 ありがとうございます。
 改めて確認いたしますけれども、ハーグ条約というのは、締約国が共同親権であるか単独親権であるかということとは全く別の話であるということでよろしいですね。


145 長徳英晶

○長徳政府参考人
 先ほど述べさせていただきましたとおり、ハーグ条約は、監護権又は親権をどちらの親が持つのか、子がどちらの親と暮らすのかなど、子の監護に関する事項について決定をすることを目的とするものではございません。この条約は、子の監護に関する事項について決定するための手続は、子が慣れ親しんできた生活環境がある国で行われるのがその子にとって最善であるという考え方に立ち、あくまで、その子が元々居住していた国に戻すための手続等について定めているものでございます。
 したがって、御指摘のとおり、ハーグ条約の仕組みと単独親権か共同親権かという議論は別でございます。


146 道下大樹

○道下委員
 ありがとうございます。
 今、政府参考人の方に御答弁いただきましたとおり、この点については、我々国会議員がしっかりと認識して今後の法案の議論をしなきゃいけないと思いますし、国民の皆様にもこの点は多く知っていただきたいというふうに思っております。
 それでは、外務省の参考人の方々、御退席いただいて結構です。
 それでは、次に、親の責務等について伺いたいと思います。
 改正案八百十七条の十二の二項でございますが、父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使又は義務の履行に関し、その子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならないというふうになっております。
 この互いに人格を尊重し協力しなければならないということなんですが、これは婚姻中は当然だと思いますが、別居や離婚後にこれらがしっかりと尊重し協力されるのかということが、今問題となっているわけであります。
 別居、離婚後に行われる、そうしたコミュニケーションが取れない以上に、暴力や暴言、濫訴などの行為、これは片仮名でポスト・セパレーション・アビューズといいますけれども、このポスト・セパレーション・アビューズは、互いに人格を尊重し協力しなければならないとの趣旨に反するという認識でよろしいか、大臣に伺いたいと思います。


147 小泉龍司

○小泉国務大臣
 御指摘のとおり、本改正案では、親権の有無や婚姻関係の有無にかかわらず、父母は、子の養育に関し、子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならないとされております。
 どのような場合にこの義務に違反したと評価されることになるかは、個別具体的な事情に即して判断されるべきであるとは考えますが、あくまで一般論として申し上げれば、暴力、暴言、濫訴等は、この義務違反と評価される場合があると考えております。


148 道下大樹

○道下委員
 そういう場合があるというか、それはもう本当に一〇〇%あるというふうに私は思います。
 次に、この濫訴は、共同親権への親権者変更の申立てを毎年のように起こす者のみではなく、決定の共同行使違反や、必要な情報を提供しなかったことに対する、これは必要な情報というのは後で質問しますけれども、学校だとか病院だとかそういったところに対する損害賠償請求や、医療機関や学校を被告にするというものが考えられますが、それを防止する対策はどのように行うのか、大臣に伺いたいと思います。


149 小泉龍司

○小泉国務大臣
 何が濫訴に当たるかについて一概にお答えすることは困難でありますが、現行法においても、不当な目的でみだりに調停の申立てがなされた場合には、調停手続をしないことによって事件を終了させる、こういう規律などがございます。
 また、本改正案では父母相互の協力義務を定めておりますけれども、不当な目的でなされた濫用的な訴え等については、個別具体的な事情によってはこの協力義務に違反するものと評価されることがあり得る、このことがそのような訴え等の防止策になると考えております。


150 道下大樹

○道下委員
 ちょっと今の答弁では、まだまだ、具体的な濫訴防止対策というふうに言えない、ちょっと受け止められないと思うんですが、もし、具体的に何かあれば、政府参考人、ありますでしょうか。もしなければ、また今度伺いますけれども。


151 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 委員御指摘の濫訴にどのようなものが当たるかということはなかなか判断するのが難しくて、お尋ねについて一概にお答えすることは困難なところもあるんですが、あくまで一般論として申し上げますれば、裁判手続の当事者は、信義に従い誠実にその手続を遂行すべきであると考えておりまして、民事訴訟法にもそのような規定がございます。
 その上で、個別具体的な事情にはよるものの、自己の主張が事実的、法律的根拠を欠くものであることを知りながら、あえて訴えを提起した場合など、訴えの提起が裁判制度の趣旨、目的に照らして著しく相当性を欠くときは、例外的に訴えの提起が不法行為に該当し得るものと承知をしております。


152 道下大樹

○道下委員
 そうした点、しっかりと認識をしたいというふうに思います。
 次に、現在、連れ去り、それから無断転園、転校、面会妨害を理由とする濫訴は、元配偶者を対象とするもののみならず、その両親や、また元配偶者を弁護した弁護士を被告にするものも含めて生じていると言われています。これをリーガルアビューズというふうにいいますが、その実態について、これは政府参考人に伺いますが、調査をしたことがあるのかどうか、伺いたいと思います。


153 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 法制審議会家族法制部会の調査審議の過程におきまして、当事者団体が実施したアンケート結果の紹介があったことがあります。このアンケート結果によれば、シングルマザー及びシングルファーザーのうち、一一%が法的な手続を悪用した嫌がらせを受けたことがあると回答したとのことであります。
 なお、法務省において、御指摘のような祖父母ですとか弁護士に対する濫訴について調査したものはございません。


154 道下大樹

○道下委員
 先ほど、父母での調査によって一一%、濫訴を受けたことがあるということでありますが、やはりこうしたもの、リーガルアビューズというものはしっかりと調査しないと、いわゆる父母間の関係を超えていろいろなところに影響が波及するというか、元配偶者のみならず、それに関係する者全てに対して訴えを起こすということが今でもあるわけでございますので、これはしっかりと調査をしていただきたいというふうにお願いしておきます。
 次に、いわゆるフレンドリーペアレントルールを定めたものではないというような認識でよろしいか。
 例えば、オーストラリアの家族法では、二〇一一年において、DV、虐待の主張をちゅうちょさせる結果を生み、このフレンドリーペアレントルールというものは既に廃止されているというふうに認識していますけれども、法務省、大臣の認識を伺いたいと思います。


155 小泉龍司

○小泉国務大臣
 フレンドリーペアレントルールは、これは様々な意味で用いられているため、一義的にお答えすることは困難でありますけれども、御指摘の規定、これは、子の養育に当たっては、父母が互いに人格を尊重し協力して行うことが子の利益の観点から望ましいと考えられることから、父母相互の人格尊重義務や協力義務を定めたものであり、DVや虐待の主張をちゅうちょさせるものではないと認識しております。


156 道下大樹

○道下委員
 今ちょっとですね、日本で共同親権を導入しようとしている中で、海外でこのようなフレンドリーペアレントルールだとかがあるので共同親権を導入すべきだという根拠にしていることだとか、別れた上でも父母共同で同じ時間、同じ機会、子供と接するだとかそういったことでのいわゆる離婚後の平等性というものを意識した上で共同親権を導入すべきだというような、数年前の海外の事例を用いて言っていることもあるんですけれども、実は、海外ではだんだん、そういう日本で今導入を検討しているような共同親権というものが、それでは逆に影響が出てきている、問題が生じている、そして、面会交流したときに子供を殺害したというオーストラリアでの事例もあるものだから、海外では、実はこういう共同親権と言われるものはだんだん後退しているというのが世界の流れなんですよ。
 これは先ほども、大臣は、フレンドリーペアレントルールというものの定義が一概には言えないとおっしゃいましたけれども、これはしっかりと定義を明確にしなきゃいけないし、海外でどのような英語が使われているのかということをしっかりと見極めなきゃいけないというふうに思います。
 法制審の英語訳資料では、親権をペアレントオーソリティーと仮の訳をしています。今回の民法改正案における親の責任及び親権の英訳を、法務省政府参考人、示していただきたいと思います。


157 竹内努

○竹内政府参考人
 お答えいたします。
 本改正案が成立した場合には、その後、改正内容を英訳することを考えておりますが、その際の、親の責務や親権の訳語につきましては、現時点では未定でございます。
 親権は、親の権利のみではなく、義務としての性質も有しておりまして、これを子の利益のために行使しなければならないと理解されていることから、本改正案では、この点を明確にすることとしております。
 改正内容を英訳する際には、こういった点が諸外国に正しく伝わるよう、適切な訳語を検討してまいりたいと考えております。


158 道下大樹

○道下委員
 海外に対して正しく伝わることと、我々としても、あえて英訳を見た上で、その日本語訳に込められている意義というか定義というものを認識しなきゃいけないというふうに思いますので、よろしくお願いします。
 次に、八百二十四条の二の、親権の行使方法等について伺いたいと思います。
 この八百二十四条の二のところ、親権は、父母が共同して行うものとすることとの文言が、いわゆる原則共同親権との誤解を招いていると私は認識しております。
 いわゆるニュートラルフラット運用との整合性、また、法制審の議論を鑑みれば、親権者の決定及び親権の行使方法は、何らかの原則を設けるものではなく、ひたすら子の利益の観点で判断するものという認識で間違いないか、法務大臣に伺いたいと思います。


159 小泉龍司

○小泉国務大臣
 本改正案は、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが子の利益の観点から重要であるとの理念に基づくものであり、その上で、離婚後の親権者を父母双方とするか、その一方とするかについては、個別具体的な事情に即して、子の利益の観点から最善の判断をすべきであり、本改正案もこのような考え方に沿ったものとなっております。
 また、父母双方が親権者である場合の親権行使については、現行法においても、父母が共同で行うこととした上で、一定の場合にはその一方が単独で行うという枠組みの規定となっており、本改正案は、このような枠組みを変更するものではございません。
 その上で、個別の場面における親権行使の在り方については、本改正案は、親権は子の利益のために行使しなければならないとの考え方を明記しており、この考え方に沿った判断をするべきものであると考えております。


160 道下大樹

○道下委員
 何らかの原則ということを設けるものではないですね。はい、うなずいていただきました。ありがとうございます。
 次に、この民法改正案について法務省以外の関係する省庁に伺いたいと思いますが、ちょっと、時間が限られていますので、順番を入れ替えまして、厚生労働省さんに伺いたいと思います。
 先ほども枝野議員の中で、質問ではなかったんですけれども、お話がありました。医療現場では、メスを入れたり、大きな手術という、侵襲性のある医療行為では、多くの、家族の同意を得る、同意書、この取付けが行われております。
 単独親権か共同親権かの確認方法や、双方の意思が一致しなかった場合の調整方法について、厚生労働省はどのような事態と対策を想定しているのか、伺いたいと思います。


161 宮本直樹

○宮本政府参考人
 お答えいたします。
 医療は、患者、家族と医師等の信頼関係の下で提供されているところ、そうした関係の中で、医療行為に関する手続については、それぞれの個別の事情に即して判断されることになるため、一概にお答えすることは困難でありますが、一般論として、御指摘のような手続が必要となった場合には、父母双方が親権者であることは来院した親に確認を取り、双方が親権者である場合には、同意を取得できていない親に対して、事情を説明した上で同意書を送付する等の対応が考えられると承知しております。
 いずれにいたしましても、厚生労働省としては、今後、法務省とも相談しながら、医療機関に対して適切に今般の制度趣旨等の周知に努めてまいりたいと考えております。


162 道下大樹

○道下委員
 今、手続的なお話をいろいろ伺いました。同意書、親権の確認と、あと、他方の親から、親権を持つ親から、同意が得られていなかったら、郵送ですかね、書類を送って、それで確認をしてもらうということなんですが。
 時間が十分にあるときにはそれはできるかもしれませんが、すぐに治療しないと後遺症が残るとか、病気が治らないとか、命を落としてしまうというようなときに、法案では、八百二十四条の二の第三項、子の利益のため急迫の事情があるときは、片方の、単独の親権行使でいいというふうには法案では書いてありますけれども、その点について、急迫というのは、厚生労働省として、どのような場合は急迫で、どのような場合は急迫じゃないというふうに明確に決められていますでしょうか。


163 宮本直樹

○宮本政府参考人
 今先生おっしゃったようなことにつきましては、現行におきましても、要するに、親が離婚していない場合においても共同親権を行使するという場合がございます。そういった場合の運用においては、やはりもう片方の親の同意が必要になるという場合がございますので、そういった医療機関の実態、今もそういうことで行われているという実態があるということを踏まえまして、今明確にどういう場合が緊急かというようなものは示したものはございませんけれども、そういった実態を踏まえまして、今後、法務省ともよく相談しながら、医療機関に適切に示してまいりたいというふうに考えています。


164 道下大樹

○道下委員
 ここだけ見ても、具体的なものがまだ決まっていないんですよ。全て、民法改正案が仮に成立した後に、法務省と関係省庁が調整して検討するということなんですよ。しかも今回は、この法は公布後二年以内に施行するということで、余りにも短過ぎるというふうに思います。
 ちょっとこの後も質問しようと思ったんですが、済みません、総務省さん、文科省さん、来ていただいたのに申し訳ございません、総務省の方には、また、私、総務委員会に所属しておりますので、そちらの方で質問させていただきたいと思いますが、一番最初、ハーグ条約について、ハーグ条約を理由に共同親権導入だというのは、やはりこれはミスリードだと思いますので、それはしっかりと違うという認識を持った上で、今後の法案審議に当たりたいと思います。
 御協力ありがとうございました。失礼します。

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