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お店で出しているプロのレシピと家庭料理のレシピの違い

以前から思っている事なので、自分の考えを整理するためにも書いておこうと思う。

家庭料理のレシピ

私もレシピを書くのを仕事にしているが、基本的に、家庭料理としてのレシピなのでご家庭でアレンジされる前提で書いている。

足りない材料があれば、どんな材料で代替可能か、端折っていい手順はどこで、ダメなのはどこか、調理のどのようなポイント、コツが含まれていてこのような工程が発生するのか、アレンジする場合はどのような味付けがおススメか、全ては書けないが、書ける範囲でレシピに記載するようにしている。

要するに、各々のご家庭でそのご家族に合った味の料理を作るための「道標」のようなものだと思う。再現は出来るが、そこに至るルートは何本あっても良く、絶対でなくても良い。

お店で出すプロのレシピ

翻って、お店で出しているプロのレシピはどうか。

プロのレシピは、品質を担保するためのもので、必ず決まった味に到達するための言わば詳細な地図である。明らかに家庭料理向けのソレとは区別されるべきものだと思う。

そもそも、家庭料理のレシピでは「卵 1個」などと書かれているが、プロのレシピでは「全卵 50g」など、材料を見ただけで精度が全く違うのでその違いも分かるはずだ。

尊敬するasteriskの和泉シェフが、cottaのFacebookページやInstagramでライブ配信をされていて、インタラクティブのメリットを最大限に発揮して、視聴者からの質問にも進行に影響がない範囲で答えてくれる素晴らしい内容で大好きなのだが、上記に述べたようなプロのレシピと家庭向けのソレの違いが分からない方が多いような気がしてとても残念に思う事がある。

和泉シェフは、ほぼお店で出しているレシピを惜しげもなく公開して下さっているので(オーブンの違いなどは再現性に関わるので考慮して下さっているが)当然なのだが、家庭ではあまり手に入りにくい材料が出てくる。

それに対して、いちいち「◯◯が無い場合はどうしたら良いですか?」と質問が入るのだ。

「またか」と心底ガッカリする。

プロのレシピと技術を知りたくて、シェフのライブ配信を視聴しているのでしょう?

お店で出しているお菓子のレシピは、何度も何度も試行錯誤して完成されたレシピなのだから、お宅にないからと言って、簡単に代替してしまっては、シェフの味では無くなってしまう。
そうやって勝手なアレンジをしておいて「シェフのレシピで作りました」などとSNSにアップされようものなら、シェフの損害たるや想像に難くない。

それならば、一般消費者向けに書かれた、ある程度アレンジしてもそれなりのものが出来上がるレシピを見たり、教えてもらえば良いのだ。

(cottaが提供している配信なので、基本的にcottaで手に入らない材料は使っていないので、「シェフのレシピで作るならcottaで買って下さい」と言うそもそもの趣旨も理解していない方も多い)

以前にも書いたが、家庭料理の良さは「ブレがあること」だと思う。
体調や食材、調理の手間のかけ方のゆらぎによるブレ。味が濃かったり、薄かったり、時には「おや?」と思うような味でこその家庭料理だ。

だが、お店で出された料理にそんなブレがあったらどうだろうか?
同じ料理を頼んでも、行く度に味が変わるようなお店にお客はお金を払うだろうか?

いつ行っても変わらぬ美味しさで迎えてくれる事こそが、お店の料理の価値であって、食材によるブレをいかに無くすかに神経を研ぎ澄まして仕事をされているのがプロなのだ。

違いを知って使い分けよう

だから、家庭料理のレシピは「家庭で出来るレベル」で書かれている。小学生の国語の教科書と高校生のそれとの違いくらいと思って欲しい。

なるべくスーパーで手に入る食材を使い、なるべく手に入りにくい調味料は使わず、なるべく複雑な手順にならないように、作る人が楽しく料理と向き合えるように、逆の方向に試行錯誤し工夫されたレシピなのだ。

どちらのレシピを使うのかは、作る側による。

ご家庭で楽しむのであれば、無理してプロのレシピを使う必要は無いし、そもそも実は再現が難しいのだ。

試作のための食材費や、子供達が使いやすい調理器具の購入に使わせて頂きます!