[雑誌、棚からひとつかみ ~“エロ雑誌”の巻~]


大宅壮一文庫は、いわゆるエロ雑誌(エロ本)も所蔵しています。古いものですと『夫婦生活』を思い出しますが、他にも知る人ぞ知る雑誌となっているものが多数ございます。エロ雑誌の全盛期は過ぎ去ったとの認識が強く、歴史を振り返る書籍が近年刊行されています。かつての黄金時代の裏話、埋もれた事実などを当時ライターや編集者だった方々が回顧しているインタビュー・対談・座談記事などをWeb oya-bunkoでは大量に検索できます。
なお本年5月には大宅壮一文庫蔵書検索OPAC[暫定版]を公開いたしました。今までは紙のファイルでできた所蔵台帳に手書きで所蔵データを記載してきましたが、電子化したことにより出版社別、一部分がジャンル別や発行年別などでも所蔵雑誌が検索可能です。それにより見つけたエロ雑誌をご紹介いたします。『エロ雑誌(エロ本)』とは何か、という明確な定義は見つからなかったので、と思われるものということになります。
※雑誌の選定、内容紹介など本橋信宏・東良美季著『エロ本黄金時代』河出書房新社刊、安田理央著『日本エロ本全史』太田出版刊を参照させていただきました。

・『夫婦生活』発行:夫婦生活社
夫婦のセックスライフ専門誌としてスタートし、婦人雑誌ブームの火付け役とも言われ全盛期には35万部も出版されたとのことです。何度か休刊し、発行も家庭社・家庭新社・手帖社と変化していきました。
元は文藝春秋から刊行されていた『話』がはじまりとのことで、『夫婦生活』創刊号には表紙に「『話』改題」と記載されています。
所蔵
・1949(昭和24)年6月創刊号~1968(昭和43)年8月号まで欠本もありますが概ね所蔵しています。

・『平凡パンチ』発行:平凡出版
日本初の若者向け週刊誌。「右手に(朝日)ジャーナル、左手に(平凡)パンチ」とも言われ全共闘世代、団塊の世代に人気のある雑誌でした。休刊後には漫画中心の『NEWパンチザウルス』として刊行されました。
所蔵
・1964(昭和39)年5月11日創刊号~1988(昭和63)年11月10日休刊号まで欠本もありますが概ね所蔵しています。
 
・『ポケットパンチOh!』発行:平凡出版
平凡パンチの姉妹誌として刊行。親から隠せる小さな新書版サイズ(ポケット版)のエロ雑誌の流行をもたらしたとのことです。
所蔵
・1968(昭和43)年6月創刊号~1977年2月号の間で30%くらい所蔵しています。

・『GORO』発行:小学館
篠山紀信の「激写」の印象が強い、若者向けビジュアル誌として影響力が大きかった雑誌です。掲載写真を元に作られた写真集『激写135人の女ともだち』がベストセラーとなり、後に小学館の写真雑誌『写楽(シャガク)』が創刊されたとのことです。
所蔵
・1974(昭和49)年6月13日創刊号~1992年1月1日最終号までほぼ欠本なく所蔵しています。
 
・『Mr.Dandy(ミスターダンディ)』発行:中央出版
創刊号には広告が全くなく、またヌードグラビアはほぼ外国人のみです。裏表紙はジョン・レノンと小野洋子です。
まるで素人が作ったような、ある意味スタイリッシュなエロ本です。次号以降は“新都会派男性月刊誌”“MEN’S MAGAZINE”と記載され、掲載記事が、“武装ガードマン海外派遣”“火星は超古代の核戦争で絶滅した”“天候や海流を操るソ連の(略)小氷河期秘密計画”などいかにも男性読者の興味を引く内容になっています。発行も(株)ダンディ社、(株)サンデー社と変わっています。
所蔵
・1974(昭和49)年5月創刊号~1984年10月号の間で10%くらい所蔵しています。
 
・『PLAYBOY』発行:集英社
一流の粋を集めたゴージャスな誌面。全ページがオールカラー。これまでの日本には存在しない雑誌だったとのことです。片面記事でもう片面に広告ページが続くというページ構成が斬新で、以後この形式が流行したそうです。
一般的には『PLAYBOY日本版』と表記されると思います。当館ではこの表記になります。
なお『週刊プレイボーイ』は雑誌には『weekly プレイボーイ』と表記されています。
所蔵
・1975(昭和50)年7月創刊号~2009年1月休刊号までほぼ欠本なく所蔵しています。

・『ニューセルフ』発行:日正堂
名編集者・末井昭氏が手がけたデザイン性の高い雑誌です。発行元の日生堂は後の白夜書房のようです。
所蔵
・1975(昭和50)年12月創刊号のみ所蔵しています。

・『ウイークエンドスーパー』発行:セルフ出版
『ニューセルフ』に引き続いて末井昭氏が手がけた雑誌です。発行元のセルフ出版は後の白夜書房のようです。
所蔵
・1977(昭和52)年7月創刊号~1981年8月号の間で5冊ほど所蔵しています。

・『ビリー』発行:白夜書房
創刊時はまじめなカルチャー雑誌だったとのことです。創刊号には川本三郎、桑田佳祐、近田春夫、鈴木邦男など当時から有名だったライター、ミュージシャン、活動家などが誌面に登場しています。後に『Billyボーイ』に改題します。あまりに売れず過激な誌面へと路線変更していったとのことです。
所蔵
・1981(昭和56)年6月創刊号~1984年11月終刊号まで欠本もありますが概ね所蔵しています。

・『写真時代』発行:白夜書房
写真誌のようなかたちをしているので「買いやすいエロ本」として人気だったそうです。こちらは“末井エロ本の最終到達点”とのことです。
所蔵
・1981(昭和56)年9月創刊号~1988年4月号まで欠本もありますが概ね所蔵しています。
 
・『アクションカメラ』発行:ベストセラーズKK
100万部売れた馬場憲治著『アクション・カメラ術』(ベストセラーズKK発行)に便乗する形で創刊されたとのことです。第2号から発行がワニマガジンになりました。
パンチラ盗撮などの技術的な要素はあまり掲載されていないようです。
所蔵
・1982(昭和57)年1月創刊号~4月号まで所蔵しています。

・『スコラ』発行:講談社
・創刊時は講談社から刊行されましたが、休刊をはさみスコラ、スコラマガジンと発行元は変わってゆきました。ヌードやカラミ写真を取り入れたセックスハウトゥ記事が本誌の目玉となったそうです。
“エロ雑誌のコラムが活字文化を育てた”、“エロ本のモノクロページがサブカルを育てた”などよく言われるかと思いますが、個人的にはコラム「スコラ・スクランブル」が初めてエロ雑誌にエロではない何かがあると気づいたページでした。あれだけはっきりエロ記事と異なったデザイン・紙質で編集されていれば大抵は気づくかと思いますが、エロ本業界初なのかどうか興味がつきません。
所蔵
・1982(昭和57)年4月22日創刊号~2010年7月休刊号まで休刊を挟みながらほぼ欠本なく所蔵しています。

・『ペントハウス』発行:講談社 
『PLAYBOY』のライバル誌として刊行されました。「話題の女」のあまりうれしくないスクープ(セミ)ヌードを目玉にしたり、お金をかけて真面目にバカバカしい企画に挑む姿勢で、エロ本的な魅力では『PLAYBOY』を上回っていたそうです。休刊後にぶんか社から『ペントハウスジャパン』が刊行されますがこの2誌に関係はないそうです。
所蔵
・1983(昭和58)年5月創刊号~1988年12月休刊号までほぼ欠本なく所蔵しています。

・『ビデオ・ザ・ワールド』発行:白夜書房 
辛口のビデオ評とインタビューで最も評価が高かったAV(アダルトビデオ)専門誌だったそうです。本橋信宏さんが書いた記事が村西とおる監督をメディアで初めて紹介したものだそうです。
所蔵
・1983(昭和58)年11月創刊号~2013年6月休刊号までほぼ欠本なく所蔵していますが、現在は埼玉県越生分館に所蔵しています。

・『ビデオボーイ』発行:英知出版 
AVメーカーとして有名な宇宙企画の兄弟会社・英知出版の最初の月刊誌とのことです。
所蔵
・1984(昭和59)年5月創刊号のみ所蔵しています。

・『ベッピン』発行:英知出版
『ビデオボーイ』に続いて刊行された英知出版の雑誌とのことです。創刊号にはほとんどヌードはなく、アイドル雑誌のようです。
所蔵
・1984(昭和59)年8月創刊号のみ所蔵しています。
 
・『ザ・ベストマガジン』発行:KKベストセラーズ
女優の顔に水をぶっかけるインパクトのある表紙が記憶に残ります。
2011年の休刊まで27年間に渡って連載されたという村上龍のエッセイ「すべての男は消耗品である」は、創刊から3冊目(1984年8月号)から「男と女のいい関係」というタイトルで連載開始していますが、連載第78回(1991年1月号)から「すべての男は消耗品である」にタイトルが変更しています。
所蔵
・1984(昭和59)年6月創刊号~2004年6月号までほぼ欠本なく所蔵しています。

・『マガジンウォー』発行:マガジンマガジン
「右寄りのエロ雑誌」として名高い本誌の編集長は反体制活動家の時代があったとのことです。福田和也、リリー・フランキー、杉作J太郎、杉森昌武などが若い頃から活躍されていました。
所蔵
・1992(平成4)年5月創刊号~1999年1月号までほぼ欠本なく所蔵していますが、現在は埼玉県越生分館に所蔵しています。

・『ビーバイビー』発行:メデューサ
坪内祐三著『靖国』(1999年1月30日発行)について著者のロングインタビューが掲載されたそうですが、当館所蔵号には掲載ありません。創刊号の内容は普通のエロ本といったかんじです。
所蔵
・1999(平成11)年1月創刊号のみ所蔵しています。
 
※発行元は所蔵している一番古いものに基づいています。
2019年7月30日現在

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