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雑誌記事索引紹介「辺見じゅん」

 映画『ラーゲリより愛を込めて』が大ヒット公開中です。二宮和也さんが演じるシベリアで捕虜となった山本幡男さんの、過酷な抑留生活の中でも希望を捨てず、日本にいる家族を思い、常に前向きだった生き様が描かれた物語です。山本さんの芯はあるけれど柔らかい精神と、彼を慕う男たちが起こす奇跡に胸が熱くなります。
 この『ラーゲリより愛を込めて』は第21回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』が原作になっています。今回はその著者である作家で歌人の辺見じゅんさんの雑誌記事索引を紹介します。
(紹介担当:S)

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1990年の第21回大宅壮一ノンフィクション賞は異例の3作受賞の年でした。

No1
第21回大宅壮一ノンフィクション賞発表 辺見じゅん『収容所から来た遺書』 中野不二男『レーザー・メス 神の指先』 久田恵『フィリッピーナを愛した男たち』
執筆者 沢地久枝/柳田邦男/立花隆/深田祐介/他
雑誌名 文藝春秋
発行日 1990年05月
ページ 330-337

No2
もう1つのドキュメント 収容所で生れた奇跡
執筆者 辺見じゅん
雑誌名 文藝春秋
発行日 1990年05月
ページ 338-342

『文藝春秋』1990年5月号に掲載された選評で立花隆さんは「選考委員全員が二重丸をつけ(これだけ意見が一致することは滅多にあることではない)、文句なしの受賞となった。この作品については、あれこれ賛辞をここに書きつらねるより、ぜひご一読ありたいと申し上げておく。」と絶賛しています。
映画では北川景子が演じる妻・山本モジミさんのシーンも多くありましたが、『収容所から来た遺書』ではそれほど多く書かれているわけではありません。

No3
2050年のメディア 23回 『ラーゲリより愛を込めて』原作秘話。なぜ妻は消されたのか ※辺見じゅん『収容所から来た遺書』のもととなるルポと単行本を担当した平尾隆弘と藤沢隆志に聞く
執筆者 下山進
雑誌名 週刊朝日
発行日 2023年01月13日
ページ 40-41

『週刊朝日』2023年1月13日号の下山進さんのコラムでは文藝春秋でルポの担当をした平尾隆弘さんと単行本の担当だった藤沢隆志さんに聞いていました。記事によると「夫婦の物語を軸にして書くと作品としては分裂してしまうかもしれない」「驚くべき遺書の物語を可能にした山本とはどいう人間だったのか、それをラーゲリを生き延びた男たちの証言で彫刻していくことに辺見さんは全精力を傾けた」と語ったそうです。たしかに原作はスベルドロフスクやハバロフスクの収容所で山本幡男さんと関わった多数の人の思い出で構成されています。
辺見さんは角川書店の創業者・角川源義さんの長女で、角川春樹さんは彼女の弟です。

No4
ポルノ主婦作家と大型女流新人 小説より奇なる、売り出し方のフィクション部分
雑誌名 サンデー毎日
発行日 1975年01月26日
ページ 129-131

『サンデー毎日』1975年1月26日号は辺見じゅんさんの人名項目で最古の記事で『呪われたシルク・ロード』を出版したころのものです。記事によると雑誌『野性時代』の編集後記で「大型女流新人」と絶賛されているが、これはオーバーな表現だ。角川書店の雑誌なので家族の影響で実力以上に持ち上げられているのだろうというようなことが記載されていますが、後の活躍で考察力や文章力は本物であり、決してオーバーな表現ではなかったことを証明します。

No5
人物ホットライン 文学賞、短歌賞、大宅賞をものにした鬼才
雑誌名 宝石(光文社)
発行日 1990年05月
ページ 69

No6
不沈戦艦の「最期」に新事実を掘り当てた辺見じゅんの新田次郎賞「男たちの大和」
執筆者 横山政男
雑誌名 週刊朝日
発行日 1984年06月15日
ページ 170-171

『宝石』1990年5月号では『収容所から来た遺書』で大宅壮一ノンフィクション賞、『男たちの大和』で新田次郎文学賞、歌人としても『闇の祝祭』で現代短歌女流賞を受賞したことが掲載されています。記事では「文学とノンフィクションと、短歌という三つの分野で大輪を咲かせた稀有な存在」と記載されています。
父・角川源義さんについて語った記事です。

No7
悠々として急げ 特別エッセイ 父の1冊、母の1冊を選べといわれたら… 勝者ではなく…父の処女作のこと 角川源義『悲劇文学の発生』青磁社
執筆者 辺見じゅん
雑誌名 文藝春秋臨増
発行日 2006年10月30日
ページ 168-169

『文藝春秋臨増』2006年10月30日号では辺見さんが源義さんの処女作である『悲劇文学の発生』を紹介し、源義さんが国文学者の師・折口信夫さんの影響を受けたことや、一兵卒としては勇敢ではなかったが出版事業は苦労の末に成功したこと。その代わりに学問への道を断念したことを大変無念に思っていた、といったことが語られています。
「辺見じゅん」という名前について掲載した記事もありました。

No8
角川事件独占スクープ第2弾 姉・辺見じゅんが実弟「春樹逮捕」に詠んだ短歌14首の怨憤
雑誌名 サンデー毎日
発行日 1993年10月03日
ページ 26-29

『サンデー毎日』1993年10月3日号は角川春樹さんが逮捕された時期に詠んだ短歌が掲載されています。その記事の中で二人をよく知る知人が「春樹は小説が書きたかったんです。“辺見じゅん”はもともと春樹の小説家としてのペンネームでした。それを姉にプレゼントしたわけです。“辺境を見る”という意味ですね。」と語ったそうです。名前についてのエピソードは他に見つけることができませんし、その知人の名前も記載されていませんので真偽の程はわかりませんが、そんな記事もありました。
辺見さんは出版社も作っています。

No9 インタビュー
出版再考 このままでいいのか、わるいのか? 私はなぜ「小さな本屋」をはじめたのか ※出版社「幻戯書房」、父・角川源義の精神を受け継ぐ、他
執筆者 辺見じゅん
雑誌名 本とコンピュータ
発行日 2005年03月
ページ 74-80

『本とコンピュータ』2005年3月号では2002年に設立した出版社「幻戯書房」と父・角川源義さんについて語っています。記事によると源義さんは晩年、もう一度、出版社をつくりたがっていた。角川書店の創業時のように2、3人で自分の好きな本だけを出したいと言っていた。その思いを受けついで「幻戯書房」を設立したそうです。丁寧な出版を心がけていて「私が書いてほしい著者の本であるとともに、その著者がいちばん書きたいことを書いてもらえたらと願っています」と語っています。
辺見じゅんさんの創作したものや活動には、すべて偉大な父・源義さんへ寄せる哀切な思いが底流にあるようです。そんな辺見さんだからこそ父が影響を受けた民俗学のように事実を一つ一つ紐解き、死者たちの声を語り継ぐことができたのかもしれません。
辺見じゅんさんの記事索引、その他です。

No10 書評
Bookwormの読書万巻 名作コンパス テーマ・墓 監視兵の目を盗み墓標に記した氏名と生年月日 ※辺見じゅん『収容所から来た遺書』文春文庫
執筆者 梯久美子
雑誌名 週刊新潮
発行日 2022年03月24日
ページ 118

No11
弔辞 鮮やかな人生に鮮やかな言葉 辺見じゅんへ いのちの距
執筆者 森村誠一
雑誌名 文藝春秋
発行日 2014年12月
ページ 261-262

No12
蓋棺録 辺見じゅんさん 偉大な父を尊び、本を愛し、死者たちの声を語り継いだ作家
執筆者 与那原恵
雑誌名 婦人公論
発行日 2011年11月22日
ページ 162

No13
蓋棺録 ノンフィクション作家・歌人・辺見じゅん
雑誌名 文藝春秋
発行日 2011年11月
ページ 520-521

No14
私が愛する日本 日本人の美学 アムール句会 ※シベリアの日本人俘虜たちのあいだで催されていた句会、山本幡男
執筆者 辺見じゅん
雑誌名 文藝春秋臨増
発行日 2006年08月15日
ページ 54-55

No15
オヤジとおふくろ 初めて母と呼んだ日。
執筆者 辺見じゅん
雑誌名 文藝春秋
発行日 2006年07月
ページ 211

No16 書評
綱島理友の古本野球史 74回 戦後のプロ野球の顔。大下弘の評伝と言えばこの本の右に出る本はない。辺見じゅん「大下弘虹の生涯」新潮社 1992年刊
執筆者 綱島理友
雑誌名 週刊ベースボール
発行日 2005年09月05日
ページ 63

No17
大宅賞の「而立」 受賞者たちのつぶやき 待ちつづけた妻の歳月 ※受賞作『収容所から来た遺書』(文春文庫・刊)
執筆者 辺見じゅん
雑誌名 本の話
発行日 1999年07月
ページ 22-23

No18 対談
語り継ぐ太平洋戦争 桜の季節に散っていった特攻隊員が戦後残したもの
執筆者 神坂次郎/辺見じゅん
雑誌名 Voice
発行日 1996年04月
ページ 166-175

No19
30代の出会い 夢ありて楽し ※『呪われたシルク・ロード』出版の頃
執筆者 辺見じゅん
雑誌名 ミセス
発行日 1996年04月
ページ 192-193

No20 対談
50年目の鎮魂 『レクイエム・太平洋戦争』と『虹の岬』 国民一人ひとりの戦争体験を確かめることの大切さ
執筆者 辻井喬/辺見じゅん
雑誌名 Voice
発行日 1995年01月
ページ 126-134/137

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