風(ふう)を装う

前まで美容室が苦手だった。昔は床屋で鏡の自分を見ながらボーっとしてたまにおじさんと話すくらいだった。

でも高校に入り、美容室に行くようになり床屋との違いに驚いた。皆髪を切ってもらいながらスマホをいじったりしていて、店員さんからは飲み物とお菓子まで出された。飲み物とお菓子の隣にはタブレットがあって中身はファッション雑誌ばかりのサブスク。
はたしてどのタイミングでスマホをいじれば、飲み物を飲めばと。我が物顔でタブレットを見ながら飲み物を飲むことなんて自分には恐れ多くてできなかった。だから店員さんが「ちょっとすみません」と言って自分から離れた瞬間に飲み物を飲んでいた。

そんな僕は最近プライベートサロンというところを見つけた。プライベートサロンというのはマンションや自宅の一室を利用する小規模な美容室で、そこは代々木八幡(ちょっと身の丈にあっていない)の大通りから少し外れたアパートの一室で髪を切るところが一つしかなく本当にお客さんは僕しかいないのだ。こんな自分のために一室の一時間を割いてくれるのがおこがましいということもあるが、それを上回るものが他人の目がないということだ。
今までは他人が偉そうにふんぞり返っている(勝手な解釈)姿を斜に構えてみていたり、そう思われないようにしなかった事ができるようになった。
髪の毛を切られながらファッション雑誌をタブレットで読み、手が空いたらハーブティーを飲むこともできた。

そう、完璧な内弁慶。結局普通の美容室に行けば何もせず時間を過ごすだろう。
前の自分から成長したか成長してないかなんて関係ないと思う。成長したように見せればいいのだ。そうすれば自分の中でいい意味でも悪い意味でも成長したと勘違いできる。
早く自己肯定感を上げるために髪を切りたい次第です。

                       2020.3.23

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