見出し画像

お笑い芸人は何でも「笑いにすれば許される」のか調べました

 好きだからこそ見えなくなる場合があるわけです。言い換えると、好きでも何でもない人の方がよく見える場合がありますし、何だったら嫌いな人の方が本質を突くこともある。例えば、私はお笑いが好きなんですが、だからお笑いについて無意識のうちに見て見ぬふりをしていることもきっとあると思うんです。

 「これがその証拠だ」と強く主張できるようなものではありませんが、ネットでこんな書き込みを見たんです。「お笑い芸人は、笑いにすれば許されると思っている」。詳細はスッカリ忘れてしまいましたが、お笑い芸人が不祥事を笑いに変えていた時に見かけた記憶があります。

 文章の調子から推測して、お笑い芸人に興味がないか、むしろ嫌いな人の書き込みだと思いました。人には好みがありますから、別に嫌いな人はいていいと思います。ただ、お笑いばかり見ているとなかなか出会わない主張でしたので、妙に印象に残りました。

 お笑い芸人またはそれに興味がある人からしてみたら、「どんなつらいことでも笑いに変える」という考え方はお笑いの優れた利点だと考えがちです。それによって人生の困難を乗り越えた人が多くいると知ってもいる。ただ、その「つらいこと」に、身から出たサビ的な不祥事まで適用させるのはどうか。上記の書き込みをされた方は、その辺りを気にしていらっしゃるのだと考えられます。「笑いに変えれば不祥事がチャラにできると思っていないか」ということなのかもしれません。

 では、本当にお笑い芸人は不祥事を笑いにして許されてきたのでしょうか。長年、お笑いを楽しんできた人間としては、そこの辺りが気になりましたので調べました。世間一般に考えて、不祥事の中でも許されづらいもののひとつに、法に触れる行為がございます。逮捕となりますと風当たりはかなり強い。何より、不祥事かどうかの境目に比べて、逮捕されたかどうかの境目は明確です。そのため、今回は逮捕された事例が中心となっております。

 調査方法は基本的にインターネットで調べまして、中でもマスコミ等に取り上げられたもの、すなわち信憑性の高いものを選んでおります。内容が内容のため、個人名は伏せてありますが、ご了承くださればと存じます。

 結果を先に申し上げますと、事例によって不祥事後の状況に違いがありました。状況は主に3種類に分かれます。

1.謝罪や謹慎を経て復帰し、事件をネタにしている
2.謝罪や謹慎を経て復帰したが、事件をネタにはしていない
3.逮捕を機に芸人を引退してしまった

 逮捕を機に引退されてしまった方々は、そもそもネタにする場が与えられておりませんので、笑いにするしない以前の状態です。ちなみに、主な事例は以下の通りです。

覚せい剤取締法違反容疑
少女への強制わいせつ容疑
窃盗容疑
盗撮の現行犯
窃盗および建造物侵入の容疑
住居侵入及び窃盗未遂の現行犯

 上記の中には本人から引退の申し出があった場合や、逮捕をきっかけに常習だったと判明したため事務所側がマネジメント契約を解除してそのまま引退となった場合も見られました。いずれにしろ、不祥事を笑いにする前に芸人を辞めてしまった形となっています。

 もちろん、逮捕され、謝罪と謹慎を経て復帰した芸人もいらっしゃいます。今回、調べた限りでは、逮捕によって芸人を引退する事例よりも謹慎後に復帰した事例のほうが多く見られました。

 復帰した方々の逮捕理由として比較的多かったのが、未成年の女性と関係を持ったこと、他人の暴力を振るったこと、あとは道路交通法違反です。この傾向は長らく続いておりまして、いずれも本人のタレント生命に大きな打撃を与えております。昭和の破天荒芸人として知られる方もまた同様で、複数の不祥事を繰り返した結果、所属事務所からマネジメント契約を解除されています。「昔は大らかな時代だった」とは言われていますが、大らかだろうがなかろうが、ダメなものはダメだったことが推測されます。

 さて、先ほど、今回判明した限りでは逮捕されても復帰している芸人が多いとは書きましたが、己の不祥事をネタにしている芸人は少数派でした。もちろん、世に出ていないだけだとの可能性は否定できませんが、少なくとも不祥事を公の場でネタにしている人はかなり少ないようです。

 ネタにしている方々も内容に気を遣っていることがうかがえます。例えば、メッセンジャー黒田さんの事例です。

 ウィキペディアに書かれていることを簡単にまとめると、不祥事から復帰までの状況は以下の通りです。

2009年12月26日、ガールズバーで支払いを巡ってトラブルになり、店員を一方的暴行し、全治2週間の怪我を負わせた傷害容疑で逮捕される。番組の降板や打ち切りが相次ぐ。
2010年1月12日、被害者と示談が成立したため起訴猶予処分で釈放される。記者会見で本人が経緯を説明し、その後は活動を自粛する。
2010年4月4日、舞台で復帰し、自虐ネタを披露した。

 まず、当然と言えば当然なんですが、不祥事の代償はキチンと払っています。逮捕はもちろん、番組の降板や打ち切りなどがそれにあたります。世間から批判も受けていただろうと推測されます。また、被害者と示談を成立させてから復帰していることから、被害者の方に誠意をもって対応していることがうかがえます。それから、復帰した際に披露したのが自虐ネタであることから考えて、被害者をいじるようなネタではないのではないかと考えられます。自虐ネタに終始した理由は恐らく、悪いことをした上に被害者をいじったら大変なことになるからでしょう。

 報いを受け、被害者には誠意をもって対応し、いじりはしない。それでも、不祥事前のような活動ができる人は稀です。それに加えて、自身の不祥事をネタにする人ともなりますと、該当者はかなり少なくなる。私は寡聞にして江頭2:50さんやビートたけしさんしか存じ上げません。

 江頭さんは1997年にテレビの企画としてトルコで芸を披露した際、全裸になり現地警察に拘束され、罰金刑に処されます。更に2013年にはDVD発売イベントで下半身を露出したため公然わいせつ罪で略式起訴され、罰金20万円の略式命令を受けています。

 しかし、現在の江頭さんはYouTubeを中心に目覚ましい活躍をされており、上記の出来事を動画で語っています。

 ただし、話し方を見て分かるように、かなり表現に気を遣っていることが分かります。

 何なら今回調べたところ、関東弁護士連合会のサイトでもトルコの事件について語っていた記事を見つけました。

 そして、ビートたけしさんと言えばもちろん、フライデー襲撃事件です。

 かいつまんで経緯を説明しますと、1986年12月8日、当時たけしさんと交際していた女性が記者の強引な取材によって怪我を負わされます。これを知ったたけしさんが激怒し、翌9日にたけし軍団の皆さんと共に記者が所属する雑誌「フライデー」の出版社に押しかけた結果、暴行に発展し、たけしさんたちは住居侵入・器物損壊・暴行の現行犯で逮捕されます。これにより一部レギュラー番組が打ち切りになった他、芸能活動を自粛することとなります。1987年6月10日にたけしさんは傷害罪で懲役6か月・執行猶予2年の判決が下され、襲撃に参加したたけし軍団の方々は起訴猶予処分に。6月25日、たけし軍団のラジオに乱入する形でメディアに復帰、テレビも7月12日に生放送という形で復帰します。1988年には当時の雑誌編集部と草野球の交流試合を行うことで和解したとのこと。

 フライデー事件については当時の大きな出来事でもありまして、当事者や関係者などが現在に至るまで様々なところで触れています。例えば、以下の動画が一例です。

 この2例については、彼らの芸風とか、時代背景とか、起こした事件の内容とか、事件後の対応とか、様々な要素が入り混じった結果、たまたまそうなった部分が大きいように思います。狙ってできるようなものでは決してない。

 繰り返しになりますが、今回は調査で判明した範囲しか触れておりません。まだまだ事例はたくさんあるに違いない。それこそ、本当は己の不祥事をネタにしている方はもっといるかもしれないし、いないかもしれない。ただ、今回に調べた限りでは、自分の不祥事を笑いにしている人はあまり確認できませんでした。

 もちろん、何でもネタにしようと思えばできますし、それを笑ってくれる人だって一定数はいると思います。だから、プライベートで笑い合って自分の精神を落ち着けている可能性はゼロではございません。ただし、人前で披露となると、されている方はほとんどいません。そういう意味では、例え芸人だろうと何でも笑いにして許されるわけではないのは確かなようです。

 今回は以上となります。ここまで読んでくださりありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?