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サイの綺麗な八つ当たり

 生き物が好きで、年に数回は必ず動物園や水族館に行っています。普段見ない生き物を見られるのはもちろん魅力ですけれども、人と明らかに違う行動を見ているだけでも楽しいんです。人っぽい行動を見せる瞬間も楽しいですけど。

 上野動物園でサイを見ていた時のことです。調べたらヒガシクロサイと呼ばれる種類のようで、柵を挟んでオスとメスが隣同士で暮らしています。

 近年になって、サイに遊び道具と思われるものが設置されました。プラスチック製のボールを糸でぶら下げた、振り子のような装置です。

プラスチックボールで遊ぶヒガシクロサイ

 一緒に行った生き物好きの友人によりますと、最近になっていろんな動物園でチラホラ見られるようになった装置で、動物の遊具として設置されているのだろうと推測していました。私も友人の推測には賛成です。何しろ、友人の推測を聞いている間にも、雄のサイが顔面に生えた角でプラスチックボールをボコンと勢いよく弾いているんです。これはもう遊んでいると見ていいと思いました。

 しかし、先ほども書きました通り、プラスチックボールは振り子のような装置となっています。それは画像でもお分かりいただけるかと思います。振り子を勢いよく弾けば、物理の法則に従って振り子は必ず戻って来る。サイが弾いたプラスチックボールもまた同様で、物理の法則に従って元の場所に戻って来る。元の場所とは即ちサイの体であり、プラスチックボールはサイの横っ腹にバチンと勢いよくヒットしました。その次の瞬間です。

思わぬ一撃を食らってダッシュを開始した瞬間のヒガシクロサイ

 サイは低い声で鳴いたかと思うと突然に走り出しまして、隣の雌サイが見える柵までやって来たかと思うと、向こうにいる雌サイに向かってひたすら唸り声を上げ始めたんです。

お隣の雌サイに向かって唸りに唸るヒガシクロサイ

 不勉強ながらサイ語に疎い私、雄サイが雌サイに何と叫んでいたのかは理解できませんでしたけれども、私の目には雄サイが自らが弾き飛ばしたプラスチックボールで脇腹を強打された腹いせに、隣の雌サイへガンガン文句を言っているようにしか見えませんでした。

 サイのこんな綺麗な八つ当たりを初めて見ました。何気に貴重な光景だったのかもしれません。

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