見出し画像

設定過剰をもっと過剰に

 友人と雑談をしていたんですが、どこをどう間違ったのか、ギリシャ神話に出てくる神様は無茶苦茶なやつが多いという話になったんです。

 例えば、ゼウスです。全知全能の神様として知られ、ギリシャ神話を代表すると言っていいほどメジャーな存在でございます。このゼウス、いろんなところで子供を作っていることでも有名なんです。相手は大きくわけで2種類ございます。すなわち、神様と人間です。

 有名なだけあって、ウィキペディアにもちゃんと載っていたのでまとめました。まず相手が神様のほうです。

相手:メーティス :アテーナー
相手:レートー :アポローン、アルテミス
相手:マイア :ヘルメース
相手:ディオーネー :アプロディーテー
相手:ヘーラー :アレース、ヘーパイストス
相手:セメレー :ディオニューソス
相手:デーメーテール(またはステュクス) :ペルセポネー(またはコレー)
相手:ムネーモシュネー :9人のムーサ
相手:エウリュノメー :3人のカリス
相手:セレーネー :パンディーア、ヘルセー、ネメア

 続いて、相手が人間のほうです。

相手:ダナエー :ペルセウス
相手:アルクメーネー :ヘーラクレース
相手:レーダー :ディオスクーロイ
相手:アンティオペー :ゼートス、アムピーオーン
相手:エウローペー :ミーノース、ラダマンテュス、サルペードーン
相手:カリストー :アルカス
相手:イーオー :エパポス

 とりあえず、載っていたのはこれくらいですが、奔放なハリウッド俳優が真面目に見えてしまうほど大暴れしています。「いや、それくらいするでしょ。全知全能なんだから」というゼウスのすまし顔が目に浮かぶようです。

 そんなゼウス伝説でございますけれども、それに対して友人が興味深い説を展開していました。「ゼウスはビッグネームだから、それにあやかろうとした人がたくさんいたのが原因じゃないか」と。

 ギリシャ神話は何千年も前の昔に始まったとされ、初期は口承によって伝えられてきたようです。

 つまり、いろんな人の伝言ゲームによって発展してきたお話らしいんです。伝言ゲームですから、当然ながら言い伝えられている間に話が変わってしまう場合もあるでしょうし、時には意図的に改変されたのかもしれません。

 冒頭でも書いた通り、ゼウスは全知全能の神様であり、ギリシャ神話でもかなりのメジャーどころです。とにかくビッグネームである。そうなると、自分が好きなキャラクターをゼウスとくっつけたいと考える人がいてもおかしくありません。何だったら、自分が考えたキャラクターをゼウスに差し出す人がいたかもしれない。

 ウィキペディアによりますと、ゼウスには正妻がとりあえず3人は確認できます。少なくともバツ2なわけですね。でも、正妻以外の子もゼウスに近づけたいと考えた大昔の誰かが、例えばゼウスが妻の目を盗んでダナエーとあれこれしていたことにして、ついでにペルセウスという子供もできた設定を作ったんです。そうなれば、推しのダナエーが神話の中で存在感を増すでしょうし、推しの子供までできる。大昔の誰かはそれで満足した。

 みたいなことを何回も繰り返した結果、ゼウスは奔放なハリウッド俳優もビックリな女性関係が出来上がってしまったのではないか。それが友人の仮説です。

 あくまで一個人の仮説ですから、合っているかどうかなんて分かりません。本当は違うのかもしれない。ただ、そう考える気持ちはよく分かります。似たような現象を、近年のドラマで見たからです。

 そのドラマは人気があるため、何シーズンも制作されています。当然、何シーズンも経れば登場人物は増えていきますし、設定だって次々に追加されていく。それがまた、物語にも登場人物にも深みをもたらしてゆきます。

 しかし、場面がとあるサブキャラの自室になった時です。部屋がものすごく雑然としている点に気づいたんです。無線機があるかと思えばプラモデルが置かれ、壁には電車の駅名標がかかっている。最初は何だろうと思ってみていた私、ようやく部屋がゴタゴタしている理由が分かりました。そのサブキャラの趣味が全部そこに詰まっていたんです。

 何シーズンにもわたって作られるドラマでは、しばしば複数の脚本家が各エピソードを担当します。それによって様々な切り口の話ができあがると共に、脚本家一人ひとりのの負担を軽くする目的もあるのでしょう。

 その際、登場人物に新たな設定をくっつけることもあるでしょう。例えば、趣味です。もちろん、適当に設定を追加するわけがありません。物語に必要だから、特定の趣味を追加し、その人物のセリフや行動に必然性を与えたに違いありません。ただ、シーズンが増えすぎた結果、サブキャラがいろんな趣味を持っている設定になってしまい、結果として自室の描写がカオスになってしまった。

 このサブキャラの異様な多趣味っぷりは、ゼウスの滅茶苦茶な女性関係と構造が似ていると思ったんです。いろんな人が設定を盛り込んだ結果、なんか異常なキャラクター像が出来上がってしまった。

 ただ、それが成功か失敗かは場合によると思います。事実、ゼウスはもうそういう神様として世界で広く認知されています。私が見たとあるドラマのサブキャラも、何だったらこの世の趣味を全て自室に押し込むような人物に成長していってほしいと思います。もちろん、その時も是非、自室をドラマで公開してほしいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?