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新メカ大好き歯医者さん

 半年に1回のペースで歯科医院へ歯の検診に行ってるんです。いま通っているところの先生は患者の話をよく聞いてくれますし、物腰が柔らかで何かあれば丁寧に説明してくれるため、歯に何かあればここへ行くことに決めています。

 長らくかかりつけにしている理由はもうひとつあります。治療の時、先生はいつもいろんな器具を嬉しそうに説明しながら使うからです。初めてその歯科医院へ行ったときからそうでした。何かするたびに、これまでに通ってきたどの歯科医も使わない器具を出してきたんです。針のない麻酔を初めて見たのもこの歯科医院でした。たぶん新しい機械とか器具を駆使して何かする人が好きなんだろうと思いました。もちろん、ちゃんと歯の治療をしてくれるから通っているんですが、先生のメカ説明を聞きに行っている面もあったんです。

 さて、ご存じの通り、世界はマスクをつけて人と会わなければいけない時代に突入しました。熱を出して倒れるのは嫌ですけれども、歯が痛くなるのも防ぎたい。そんなわけで、外に出かけても大丈夫になってから歯科医院へ検診に行きました。マスク時代になって初めての検診です。

 久々の歯科医院は当然ながら対感染症仕様になっていました。待合室の椅子は互いに距離を取って配置され、窓やドアを開けて換気に気を遣っていました。椅子に座っていると受付の女性が検温にやってきたのですが、なんか見たことのない形の非接触体温計なんです。それで思い出しました。ここの先生は新メカが大好きな先生だったと。

 先生の格好も対感染症仕様になっていました。顔はマスク、眼鏡、フェイスシールドの三段構えでしたし、半透明の手袋を二重にしています。どれもいいものを使っているのか、よそで見たことのない形なんです。診察室ではピカピカの送風機が動いていました。

 検診自体はすぐに終わりました。しかし、これまたご存じの通り、マスクの時代は半年で終わりませんでした。再び検診のためにいつもの歯科医院へ行くと、待合室にも送風機が置かれていました。更に次の検診では診察室の送風機が2台になり、そのまた次の検診で行った時には待合室の送風機も2台になっていました。つい先日の検診では診察室に3台目が入荷し、いよいよ5台体制です。いつも流れているはずの環境音楽は送風機5台スペシャルのゴウンゴウンという音ですっかりかき消されていました。

 室内に存在するウイルスは1匹だって除去したい。先生のそんな強い意志を感じました。感染を防ぐためなら診察室の空気なんかいくらでも吹き飛ばしたいに違いありません。

 私、風速20メートルというちょっとした台風クラスの風が出る激烈送風機にビュービューやられた経験が2回くらいあるんですが、次の診察辺りにはそのデカい送風機が壁に埋め込まれているかもしれません。当然、検診中はビュービューやってほしい派の私です。

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