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全てを諦めさせる一言

 世の中には言っちゃいけないことが存在します。いわゆる放送禁止用語から、ぐうの音も出ない正論まで、種類はいろいろあるようです。

 一方で、別に言ってもいいんだけど、そんなん言われたらもうやってられませんわ、みたいな言葉もございます。言われた途端に力が抜けるというか、どうにかしようとする意思を根こそぎ持ってくような言葉です。

 たまたま「内向型人間の時代」という本を読みました。アメリカでかなりの売り上げを記録した本だそうで、日本でも評判が良かったのか文庫化されています。内容はタイトルでおおよそお分かりでしょう。大人しい、物静かな、いわゆる「内向的」な人たちの優れている点をまとめてありました。

 中でも印象に残っている部分があります。「アメリカ人の3分の1が内向的な人間だ」。

 アメリカ人のイメージは「ヘイ、ジョージ。今日も最高の1日だな。うるさいカミさんさえいなけりゃな、HAHAHA!」みたいな、口を開けばジョークを言って自分で笑ってる、賑やかな感じだったんです。実際に会った印象でも、眼鏡をかけててちょっとふくよかな、いわゆる「ナード」と呼ばれていそうな人ですら、嬉しければ両手を上げて「イエア!」と叫ぶなど、割と感情をあらわにするし声はデカいしで、なるほど日本人と違うなと思ったものです。そんな人の3割以上が内向型認定されてしまう。

 内向型の基準がおかしいんじゃないのか、と疑いもしましたが、アメリカ人にも周りに気を遣って騒いでるタイプが意外と多いのかもしれない。いずれにしろ私は思いました。「アメリカ人でそれなら、日本人が内向型になるのは当たり前じゃないか」。無理して明るく過ごす気をゴッソリ持ってく本でした。

 こんなこともありました。大学生の頃、冷房の効いた部屋で涼んでいると、知り合いのナイジェリア人留学生がやってきました。ニコニコしてますが、頬は汗が伝っています。部屋の涼しい空気をひとしきり満喫したあと、ナイジェリア人留学生はこう言いました。「日本の夏は暑いですね。ナイジェリアより暑い」。

 そんなバカなと思いました。ナイジェリアと言えば日本より遥かに赤道が近い、ゴリゴリのサバナ気候で知られる国です。そんなナイジェリア人に暑い暑い言われちゃあ、日本人が夏にヒーヒー言うのもしょうがないというものです。暑い中でもちゃんとやろうなんて自然の摂理に反してる。何しろナイジェリア以上です。暑さを言い訳にダラダラしてもしょうがないと思うようになりました。

 真冬に何書いてんだ、って話ですが。

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