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境目ばかり気になる人生

 気にしちゃいけないと思いつつも、境目が気になるんです。

 例えば、ターミナル駅のホームで電車を待っている時なんです。ただでさえ利用客の多いターミナル駅でございますけれども、出勤や帰宅の時間帯になりますと、より一層の利用客でごった返します。電車が来るたびに大量の客が乗り込む。車内が人で溢れていても、発車時刻が過ぎていてもどうにか乗ろうと試みる人さえいる。

 そうすると、駅員さんがこうアナウンスします。「次の電車をご利用ください」。何なら「次の列車、続いて参ります」なんて言ったりもする。「次もすぐ来るからそんな焦らないでください」と暗におっしゃっているんだと思います。

 そういう駅ですと、まあ本当に次の電車がすぐに来ます。マジで数分と経たずやってきて未だにビックリします。だから駅員さんも自信を持って「次の電車をご利用ください」と案内ができるわけですね。

 ただ、気になるんです。この「次の電車をご利用ください」は、何分後にやってくる電車まで適用されるのかと。

 極端な例なら分かるんです。「次の電車をご利用ください」と言われたから1本見送ったのに、実際に来るのが1時間後だったら、「いつ来るんだよ」とひと暴れし始める人が出てくるでしょう。下手したら暴動が起きる。逆に、電車が数分も経たずにやってくれば、平和に事が進むと理解できる。問題は、暴動と平和の間です。「次の電車」が5分後ならどうか、10分後ならどうなるのか。当然、鉄道会社としては、多くの人が「本当だ、すぐ来た」と思ってくれるラインを考慮して「次の電車をご利用ください」とアナウンスしているはずなんですが、そのラインがどこなのか分からないんです。

 ネットで軽く調べても正確な情報は出てきませんでした。でも、これは鉄道会社に問い合わせたら教えてくれる可能性がございます。問題は、どんな調査をしても判明しそうにないものの境目が気になった時です。

 例えば、年齢を重ねた方が、自分よりも年下の人にする、割とよくあるタイプの励ましの言葉がございます。「その年齢だったらまだ何でもできる」というようなやつです。60代の人が悩める30代に言ったりする感じですね。

 ある程度は当てはまる励まし方だと思うんです。でも、いろんな年齢を検討していると、「ん?」となる場合が出てくるんです。120歳の人が90歳の人に「まだ若いんだ、何でもできる」と言うと、「いやいや、あなたから見ればそうかもしれませんが」となるでしょう。逆に30歳の人が0歳の人に言うのもなんかよく分からない。まだいろんな人の手を借りないと生き延びることもままならない0歳児に向かって「若いんだからこれから何でもできる」は「何言ってんだ」と言われても仕方がありません。

 つまり、この励ましには年齢的な制限がある。ではこの励ましが成り立つかどうかのボーダーラインが何歳なのか、いろいろ考えましたが納得できる年齢が思いつかないんです。結局、解決の糸口が見つからないまま現在に至ります。

 こういう例もあります。国とか文化の境界線になるもののひとつに山があるんだそうです。もちろん、そんなものなど気にせず強制的に真っすぐラインを引いてしまう場合もございますけれども、山の尾根に沿って境界線が引かれる場合は珍しくないとのこと。

 山が自然の障壁となっているんだなあと、私でも簡単に推測できます。何しろ、山に登るのは大変です。壁のような岩肌をしがみつくように登らなければいけない場合もあれば、草木が生い茂る道なき道を突き進む必要が出たりもする。危険な旅になることは必至でありまして、普通の人が近寄らなくなっても不思議ではない。必然的に山が境界線になるわけです。

 ただし、山と言ってもいろいろあるんです。8000メートル級のガチ勢から、日和山みたいなネタ枠まで揃っているわけです。ちなみに日和山は国土地理院認定の日本一低い山でございまして、標高は3メートルとなっています。

 その辺の民家より低い標高が何の障壁となるのかという話なんです。ちなみに日和山は人工的に作られた山でございまして、自然にできた山で日本一低いのは弁天山となっています。

 標高は6.1メートル。これも障壁と言うには低すぎます。では何メートルの山なら障壁となり得るのか。これが分からないんです。山の性質にもよるでしょうし。

 たぶんこれからもいろんな境目を気にしては、どこが境界か分からないと投げ出す人生を歩むと思います。何卒、よろしくお願い申し上げます。

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