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笑いに関する名言集――もし笑いがなかったら

 「名言集」で検索すると書籍とかサイトとか動画とかでおびただしい数の名言集が出てきますが、「笑い」に特化した名言集がほとんどないんです。ないんだったら作るしかないと思いまして、いろいろ集めては載せている次第です。

 ここでは笑いの名言を以下のみっつのどれかに当てはまるものとしました。

・笑いに関係する言葉が入っている名言
・笑いに関係する仕事をした人の名言
・笑う余地がある名言

 今回は「もしも笑いがなかったら」に触れている名言を集めてみました。笑いの名言なのに笑いがない。禅問答みたいになっていますけれども、ご覧になって頂ければすぐ腑に落ちると思います。例えば、これです。

人生において笑うことなくすごした日があれば、それは最も無為にすごした日であることは疑いない。
シャンフォール(1741-1794)、「格言と省察」

世界名言大辞典 新装版(明治書院、2018)、座右の銘(里文出版、2009)、世界名言集(近代文芸社、2004)

 シャンフォールはフランスのモラリスト、すなわち人をありのままにとらえて道徳を追求した文筆家です。平民の出身でしたが、才能により宮廷で人気となり、戯曲で成功を収めるなど生前から名声を博しますが、革命の際に逮捕されて時代に幻滅、自傷行為に走り、その傷がもとで亡くなったとされています。

 上記名言が収録されている「格言と省察」は死後に友人たちの手で刊行された遺作でございます。この名言が人気なのか、今までに3冊の名言集で確認されています。笑いをいかに重視していたのかが分かる言葉です。

 後世にも似たような名言を遺している人物がいます。

笑いなき人生は、物憂き空白なり。
ウィリアム・メイクピース・サッカレー(1811-1863)

名言 人生を豊かにするために(里文出版、2011)

 サッカレーはイギリスのヴィクトリア朝を代表する小説家で、上流階級を批判した「虚栄の市」などで知られます。

 結果的にシャンフォールが18世紀、サッカレーが19世紀の担当になっております。当然と言うべきなのか、20世紀担当もいらっしゃいます。

笑いのない日は、無駄な一日である。
チャールズ・スペンサー・チャップリン・ジュニア(1925-1968)

名言 人生を豊かにするために(里文出版、2011)

 チャップリン・ジュニアはその名の通りチャップリンの子供であり、2番目の妻との間に生まれました。主に役者として活躍し、父親との共演経験もあるようです。

 名言は分厚い辞典ができるくらい多く存在しているため、このようにかぶってしまうことが普通にございます。こうなると21世紀担当が誰になるのか、俄然気になって参りました。今後に期待です。

 さて、話をちょっと戻しまして、サッカレーは更にこんな名言も遺しております。

笑いを知らない人間は、つねに雄大であり、自惚れ屋である。
ウィリアム・メイクピース・サッカレー(1811-1863)、「断片」

世界名言大辞典 新装版(明治書院、2018)

 批判精神強めの作風だったサッカレーらしい名言ではないでしょうか。

 笑わないとこんなことになるよ、という視点の名言は他にもございます。

人があやしてくれる時に笑いなさい。でないと、やがて人はあやしてくれなくなりますよ。
西洋のことわざ

明日が変わる座右の言葉全書(青春出版社、2013)、生きる財産となる名言大語録(三笠書房、2002)

 西洋と言っても広いんですが、これ以上、細かな記述はございませんでした。恐らくは西洋の広範囲で使われることわざなんだと思われます。

 さすがことわざ、身につまされる一文でございます。本当にそうですよね。国を問わず通じるあるあるなんじゃないかとさえ思います。だから、西洋に広く浸透したのかもしれません。

 次は国も内容もだいぶ違っている名言です。

談笑しながら双方から友好を求め合うようでないと、とても大成はできないと考えます。
坂本龍馬(1836-1867)

偉人名言迷言事典(笠間書院、2021)

 ご存じ幕末の人気者こと坂本龍馬です。薩長同盟の成立に協力するなど、倒幕および明治維新に影響を与えたとされています。

 上記の言葉は長州藩士の印藤いんどうのぶるに送った、薩長の和解について書かれた手紙の一文です。手紙がどれだけ効いたのかは幕末素人の私にはよく分かりませんけれども、歴史的事実として薩長が同盟を結んだのでございますから、効果はあったのだと思います。

 続いてはこちら。

人或(あるい)は謂う「人主は宜しく喜怒愛憎を露(あらわ)さざるべし」と。余(よ)則ち謂う「然らず。喜怒節に当たり、愛憎実(じつ)を得れば、即ち一嚬(ひん)一咲(しょう)も亦仁政の在る所、徒らに外面を飾るは不可なり」と。
[人によって「人の上に立つ者は喜怒愛憎を顔に出さないほうがよい」という。しかし私は「そうではない。喜怒も的を射、愛憎も事実にかなうのならよいではないか。それは、上に立つ者がしかめ面をしたり笑ったりすることも、仁のある政治の有様を示すものであり、ただ外見だけを取りつくろってはならない」といいたい。]
佐藤一斎(1772-1859)、「言志四録」

新装版 新編 言志四録(PHP研究所、2015)

 佐藤一斎は日本の儒学者であり、彼の代表作でもある「言志四録げんししろく」は後半生の四十年あまりを費やして書かれた随想録となっています。

 「言志四録」は「指導者のためのバイブル」とも呼ばれており、上記のような人の上に立つためのアドバイス的名言が多数収録されているようです。表情ひとつに至るまで気を配る。リーダーは大変なお仕事です。

 最後は少し、いやだいぶ毛色の異なる名言です。

恋をしている時には、ばかなまねをして、世間の笑いものにならなかったような男は、決して、恋愛によって、賢くなるということはないであろう。
テオドール・ライク(1888-1969)

世界名言集(近代文芸社、2004)

 ライクはオーストリアの心理学者で、フロイトの教えを受けた最初の学生のひとりとして知られます。犯罪学や文学、宗教に関する精神分析の研究で知られ、著述家としても活動されました。

 しかし、この名言は心理学者としてというよりは、親戚のおじさんみたいなアドバイスです。いや、それくらい分かりやすい言葉にして残そうとしたライクなりの気配りの賜物かもしれません。

◆ 今回の名言が載っていた書籍


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