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やる気のない指圧の謎を解いた気がします

 タモリさんの名言で「やる気のあるものは去れ」というものがあります。

 様々な懐疑論がありつつも、今でも「やる気」はいいものとされることが多いです。そういうものが好きな方は一定数いらっしゃいます。調べたら、社名に採用しているところもございました。大人気です。

 「やる気」の利点は行動に直結するところだと思っています。「やる気がある人」というのは比較的多くの人に良く見られやすい点も利点でしょう。そんなこんなで「やる気は」今でもポジティブな位置をキープしている。

 冒頭のタモリさんの名言は昔から存じ上げていました。その時は「タモリさんらしい変な発言」と思っていました。しかし、それから年月が経つにつれ、その発言が少しずつ、しかし確実に重くのしかかるようになってきているんです。きっかけは、とあることに気づいたからです。「あれ、やる気のあるなしと仕事の成果ってあんまり関係ないぞ」。

 そうなんです。仕事で必要なのは技能であり知識であり判断力である。乱暴に略せば慣れているかどうかが重要なのであって、やる気も関係はあるかもしれませんが、「慣れ」ほどではない。どんな怪我や病気も完治させてやろうと意気込みに意気込む素人よりも全てがダラダラしているベテラン医師のほうがうまく治療できるのは明らかです。もちろん、ダラダラ医師が適当な治療をして事故を起こす可能性はございますけれども、何をやっても大体事故の素人に比べればはるかに信頼できる医療行為をしてくれるはずです。

 個人的にも、新人の頃のほうがやる気に満ちていたでしょうし、それが言動に溢れていたと思います。仕事に慣れてきた今ではやる気なんてかけらも見せませんし、業務中に同僚と生産性のない雑談をすることも増えてきました。でも、新人の頃より仕事はできますし、起こすトラブルも格段に減った。何なら、やる気あるハキハキした言動をすると、みんな意外と苦笑いするんです。無意識のうちに無理をして、不自然な受け答えになっていたのかもしれません。

 やる気があればいいとは限らない。その考えがちょっとした謎を解決に導いたことがあります。世の中には指圧マッサージをしてくれるお店があり、それなりに繁盛しているのか私の生活圏にも数軒は確認できています。お店の正面はガラス張りのことが多く、外から中の様子が確認できる。路面店よりも2階の店でより顕著な傾向です。

 しかし、指圧している真っ最中の店員が、なんかみんな外を見ているんです。どの店もそうなので、お店と言うよりは指圧業界の文化なんだと思います。店の前を歩く私と目が合ったことなんて一度や二度ではありません。もちろん、中にはお客の身体と向かい合い、一心不乱にツボを押しまくってる方もいらっしゃいますけれども、窓際で施術している店員を中心に外を見ていることが多いんです。手はお客の身体を押しているんですけれども、どうも心ここにあらずと申しますか、やる気は全然感じられない。

 これも考え方を変えれば、外を見てる方のほうがベテランで腕もあり、逆に一心不乱のほうが新人という可能性があるわけです。もうベテランですとお客のちょいちょいと触れただけでどこが悪いか一瞬で判断し、指圧の強さも瞬時に適切なところまで持っていけるんでしょう。何なら外をぼんやり見た方が、視野が広がって適切な施術ができるのかもしれません。

 心ここにあらずとか思って申し訳ありませんでした。この考えが当たっているかどうかは分かりませんが。

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