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まとめ買いに翻弄されてきました

 まとめ買いという考え方がありますね。大体のものはたくさん買うと、単位重量辺りの値段は安くなる。例えば、100グラムの物体を買うと100円だったのが、1000グラム一気に買うと800円で変えたりする。100グラムだと1グラム1円だったのが、1000グラムだと1グラム0.8円になってるわけですね。だから、たくさん使うものは一気に買った方がお得なわけです。

 私は一時期、まとめ買いの魅力に取りつかれていました。だから、長く保存できそうなものは迷わずまとめ買いしていました。例えば、糊やうがい薬、殺虫剤なんかがそれです。もう、どれも迷わず最大サイズを買っていました。そして、お得だと喜んでいました。

 最初に異変が現れたのは糊でした。買ったのは極太の消えいろピットでした。最初は色がついているのに、塗った糊が乾いてくるとその色が消えるやつですね。

 買った当初はしばしば糊を使う生活をしておりましたので、長い時間をかけて使い切っていくのだろうなと思っておりました。しかし、どういうわけか次第に糊の使わない生活態度に改まったんです。生活の変化としてはあまりにも地味すぎて、糊を使わなくなったことに気づかぬまま、時は流れてゆきました。

 そんな私に糊を使わなくなったと気づかせてくれたのが極太消えいろピットでした。数年ぶりに糊が必要となりまして、消えいろピットを使おうとすると蓋が固いんです。嫌な予感がしてどうにか蓋をあけると、塗ってもないのに消えいろピットの色が消えてたんです。ちゃんと蓋をしてあったのに糊はすっかり乾いており、スティック状のままガチガチになっていました。蓋をしたってちょっとは隙間ができますから、そこから長い時間かけて水分が丹念に丹念に抜けていき、しっかりと乾燥していったのでしょう。まだ半分も使い切らぬまま、私の極太消えいろピットは使用不可となってしまいました。

 じゃあ、液体タプタプのうがい薬なら大丈夫だろう。私はそう思っていました。私はもともと身体が丈夫ではなく、冬になれば「それきた」と言わんばかりに風邪をひいてきました。寒い日は大体喉が痛い。だから、うがい薬だって最大サイズを買いましたし、それで使い切れると思っていました。

 しかし、毎年のように風邪でダウンしていてはいかんと思い直した私は、ジョギングを始めてしまったんです。しかも、最初は短い距離で、以降は様子を見つつ距離をじわじわ増やしていくという無理のない長期計画です。続けられるような工夫を施してしまったゆえに、ちゃんとジョギングする生活が定着し、それで身体がちょっと頑丈になったのか、風邪をひく頻度が下がってしまいました。喉の痛い日も減り、うがい薬の出番も比例して減ってゆく。でもまあ、うがい薬は液体ですし、容器の密閉効果も消えいろより遥かに高い。だから、乾燥なんてありえないと安心していたんです。

 そのうち、感染症が流行してきてうがいの重要性が再評価されるようになりました。もちろん、私は「今こそうがい薬が役に立つ時だ」と意気込みました。久々に使ったところ、なんか変な味がするんです。いや、もともとうがい薬なんて喉が飲み込むことを拒む味なんですが、それが更に変な方向へ変化していたんです。「え、そっち?」みたいな変化なんです。もちろん、本来のうがい薬とは違った意味で飲む気がしません。

 多分、長時間の放置で成分が劣化したんだと思います。要は腐ったみたいなもんだと思います。古すぎてうがい薬として役立たないどころか、喉に害を与える可能性もある。うがい薬はまだ半分くらい残っていましたが、こちらも泣く泣く廃棄処分となりました。

 さて、残るは殺虫剤です。引っ越してしばらくした頃、自宅にゴキブリが出てきたため急いで薬局に駆け込み、「やっぱ大は小を兼ねるだろ」と一番デカいスプレー式殺虫剤を購入しました。早速、ゴキブリを化学兵器で殺処分した私、ゴキブリがやってくるたびにこの大型化学兵器で向かい撃ちました。

 しかし、落ち着いて考えたら、家にゴキブリが出ることなんてそこまで多くないんです。多くても年に数回、暖かい時期に出る程度です。それもゴミ捨てや部屋の掃除など、ゴキブリを寄せ付けない方向に生活改善を試みたせいで、私の大型化学兵器は徐々に出番を減らしてゆき、年に1回の稼働があるかどうかになってしまいました。今でも手の届くところに大型化学兵器を用意してあるんですが、最近になって表面の文字が消えかけていることに気づきました。「使用上の注意」みたいな割と大切なところまで等しく文字が薄くなっている。

 中の化学物質は大丈夫なのか。ちゃんとスプレーは作動するのか。心配になってさっき使ってみましたが、一応、スプレーとしては機能しているようです。化学物質の状態についてはぶっつけ本番で確かめるしかないのが恐ろしいところです。

 将来の予測とは難しいものです。人類の予想を未来は常に裏切ってきました。今たくさん使ってるから今後もたくさん使うとは限らないんです。それをようやく学んだ私、大量の買い置きをするかどうか、もう少し考えるようになりました。

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