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自分のでも他人のでも、思い違いに苛まれる

 とある漫画家のインタビュー記事を見たんです。

 その漫画家はものすごく好きというわけではないんです。単行本を買ったことがないくらいですから、ファンを名乗るのはおこがましい。でも、その漫画家の作品が載っている雑誌を一時期ずっと買い続けておりましたし、SNSもかなり昔からフォローし、軽く動向をチェックしています。その漫画家はたまに短い漫画を載せてくれるため、地味に楽しんでいます。

 その漫画家は誰もが知る人というわけではありませんが、かと言って無名というわけでもない。もう何十年も専業で活動していることからも、ずっとファンがいることは想像に難くありません。作風は一貫してヘタウマな絵から繰り出されるシュールなギャグでございまして、そんなスタイルだからか、たまによく分からない活動をするんです。もう具体的な内容を書けば誰を指しているのか一発で分かるくらい特殊な活動をしている。

 そのインタビュー記事では、漫画家の特殊な活動に触れつつも、不可思議で魅力的な人物像を掘り下げる内容となっておりました。

 どういう流れかは忘れましたけれども、その漫画家は意外と女性ファンが多いという話になりました。その原因として、インタビュアーは「下ネタがないからではないか」と推測していました。漫画家は「そう言えば描かないですね」と同意していました。

 そこまで読んで私は疑問に思ったんです。その昔、SNSで見た漫画にスケベ椅子が登場していなかったかと。あの独特な形状と一緒に「スケベ椅子」の文字まで書かれていましたから、スケベ椅子をスケベ椅子のつもりで登場させたのは明確です。

 この漫画家は本当に不可思議な方ですから、スケベ椅子を下ネタと認識していなかった可能性も検討しましたが、現実味の薄い推測と言わざるを得ません。先ほども申し上げた通りシュールな作風の方でございますから、何の脈絡もなくいきなりポコンと椅子を登場させ、以降は一切現れなかったのも事実ではございます。下品な描写なんて全然ない。ただ、ここまで明確に登場させていると、心配になってくるんです。事実と違うことをこんなハッキリ言って大丈夫なのかと。

 似たような経験は他にもあります。お笑い芸人について検索していると、当然ながらお笑い好きな方のブログなりSNSなりがヒットする場合がございます。もちろん、内容は好きなお笑い芸人についてです。

 その日も「推しの芸人!」みたいな感じで愛情たっぷりの文章が連なるブログを見たんです。何でも、推しの芸人が東京進出するとかどうとかで、地元で活動を支えてきた作者は推しの芸人との思い出を綴っておりました。

 しかし、何の気なしにそのブログの作者プロフィールを確認したところ、肝心の「推しの芸人」に全く違うお笑い芸人の名前を挙げていたんです。

 ちょっとこれは大丈夫なのか。私はまた心配になりました。しかも、SNSでサラッと公開したスケベ椅子とは違い、作者プロフィールは簡単に確認できます。プロフィールで宣言しているのと全然違う芸人をガッツリ推している文章を堂々と載せて大丈夫なんでしょうか。読者にツッコまれたり、場合によっては炎上に繋がったりしないんでしょうか。

 私は自分で病気を疑うほど思い間違いが多く、自分は大丈夫なのかと心配になっていました。自分の思い違いよりも他人の思い違いを目撃することのほうが少ないため、不安になっていたんだと思います。こうやって他人の思い違いと出会えば安心するだろうとたかをくくっていたんですが、出会ったら出会ったで他人を心配してしまうと分かりました。

 相変わらず思い違いに苛まれる私でございます。

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