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ChatGPTの天然ボケをいじったりいじられたりする芸人たち

 笑いを取ろうとする時にマズい姿勢として「『これ面白いから笑ってね』という気持ちが言動に出てくる」というものがあります。様々な方から異口同音に聞いて参りましたし、私もそう思います。理由はいろいろあると思います。例えば、不自然さが気になって笑うどころじゃなくなる人もいるでしょうし、「笑ってね」感が強いと押しつけられた感じがして反発してしまう人もいるでしょう。

 別にスベっても大した損害のない人ならいいんですが、笑いを仕事にしているお笑い芸人となると死活問題ですから、様々な対処で日々を乗り切っています。なるべく「これ面白いから笑ってね」を出さないようにする癖は皆さん自然と身に着けていらっしゃいますし、「これ面白いから笑ってね」が出てしまった場合には敢えてそれをいじるなんて対処法を使ったりもします。後者の典型例として「どや顔」がございまして、「笑ってね」感が顔に出てしまったところを指摘して笑いを誘う形になっています。失敗を糧にしやすいお笑い芸人ならではの対処法です。そして、もうひとつ昔から活用されている対処法がございます。「天然ボケ」、しばしば「天然」と略される、意図しない笑いです。

 天然の強いところは、「これ面白いから笑ってね」感がゼロという点です。不自然さがないですし、押しつけがましくもない。また、誰も意図していないから、人の予想を裏切る展開になりやすい。「予想を裏切る」は人の笑いを誘いやすい行為のひとつであり、それを自然に出せるため、往々にして笑いへ繋がりやすくなるわけです。

 意図しないために笑ってしまう。これは人だけでなく機械、例えばコンピューターも同様のようです。コンピューターは人による何らかの意図によって作られたはずなんですが、なかなか狙ったように動かない。人はそれをバグなどと呼んで直そうとする。一方で、思っていたのと違う動きが時に笑えるため、かねてよりお笑い芸人がいじってきました。

 インターネットが一般に普及し始めた時、ビートたけしさんがウランについて調べようと「ウラン」で検索したところ、大量の胡蝶蘭コチョウランが出てきたと著書でネタにしていたと記憶しています。著書名はスッカリ忘れてしまいましたが。とにかく、当時は今よりも検索精度が低かったため、意図せぬ検索結果がしばしば出て、時に笑いを誘うものとなっていました。

 ゲームだと見た目にインパクトのあるバグが出やすいため、現在に至るまでネタにされてきました。YouTubeなどの動画サイトで検索すると、その手の愉快な動画がたくさん出てきます。また、ゲームとしてはちゃんと動いているんだけど、その動きが稚拙ゆえに笑えてしまうという作品もございまして、例えば最近でもFUJIWARAさんが企画として動画で扱っていらっしゃいました。

 ChatGPTは今まさにこの手の洗礼を受けていると申しますか、様々な形でネタにされまくっている最中と言えます。様々な機械が歩んできた道に足を踏み入れたわけですね。

 ご存じの通り、ChatGPTは公開が2022年11月30日と最近で、誰でも簡単に綺麗な文章が生成できることで大きな話題を呼んでいます。世間に及ぼすインパクトが大きいので、ChatGPTそのものの解説から、うまい活用法、起きるかもしれない悪影響など、記事や動画などで今もいろんな方がいろんな主張をされている真っ最中です。

 こうしている間にもChatGPTは膨大な情報を学習している最中でしょうけれども、今のところ日本語に関しては生成される文章内容が正確性に欠けているため、お笑い方面ではそこをいじる企画がちょこちょこ見られるようになってきました。

FUJIWARAのお二方の場合

かまいたちのお二方の場合

 いずれも「ウラン→胡蝶蘭」形式の笑いで、予想外の方角から放り込まれる変な文章を読んで笑う形になっています。つまり、ChatGPTの天然を笑うわけですね。出始めたばかりの現在ならではのいじり方です。

 しかし、技術は進歩します。ChatGPTもまた同様です。もうあっという間にいじる隙もないほど正確な文章を超スピードで作り上げられるようになるかもしれません。そして、現在において、なぜかその時代を見越したかのような使い方をしているのが江頭2:50さんです。

 ChatGPTの生成した文章をおおむね正しいものとして扱っており、それによって江頭さんの信頼を得ます。それが「江頭さんがChatGPTに従う」という形式の下地となり、ChatGPTが提案した罰ゲームを実行する場面に繋がっています。現段階においてChatGPTをネタにした企画としてはひねりが効いており、それゆえに異質な存在となっています。AIに支配された人類を先取りしていると申しますか、自ら支配されに行っていると申しますか。FUJIWARAとかまいたちの2組がChatGPTを上からいじっているのだとしたら、江頭さんは下からいじっている、もしくは無理やりにでもいじられにいっている感じです。

 今はChatGPTの天然を笑っていますけれども、今後はどうなるのかは分かりません。江頭さんみたいに、振り回される様子をネタにされる世界が来るのか、これまでに登場した様々な技術と同じように人々の日常に馴染んでゆき、「この間もChatGPTを使っていたら」とエピソードトークの中でサラッと出てくる程度になるのか。いずれにしろ、ネタのされ方はやがて変化していくだろうなあとは思います。

 ちなみに、ChatGPTにおける江頭さんの情報が他の2組に比べて正確なのは、江頭さんが最もキャリアが長く、また芸風に猛烈な特徴があるため、インターネット上に情報が多く存在しているからなのかなあと、ぼんやり考えてみたりしました。あとは、他の2組の質問はかなり具体的だった点も影響しているかもしれません。

 今回は以上となります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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