チーバくんを探せ

　千葉県に住んでいる友人が職場に張り出すポスターを作ることになりました。「電気を節約してください」みたいな従業員に呼びかける系のやつです。せっかくならキャラクターを使いたいと思い、友人は千葉県のマスコットである「チーバくん」を使うことにしました。商用でないため無償でガンガン使えるのが主な採用ポイントだったそうです。

　どうせ無償だからと、チーバくんをポスターいっぱいに拡大して使ったそうです。その脇に「電気を節約してください」と本来書くべきメッセージを書く。そこで気がつきました。拡大したチーバくんの足元に「チーバくん」という文字がイラストと同じ比率で巨大化しているではありませんか。しかし、友人は慌てず、「チーバくん」の後ろにペンで「を探せ」と書いて職場に貼りました。

　そんなある日、職場の同僚が友人に話しかけてきたそうです。

「あのポスター作ったの君でしょ？」
「そうですけど」
「あのポスターにチーバくんが隠れてるの？」

　隠れてるも何も、ポスターの中で何よりも目立っているのがチーバくんなんです。

　どうやら同僚は「チーバくんを探せ」という文字を読んで、巨大チーバくんの他にもポスター内にチーバくんが隠れていると思ったようです。友人もそれはすぐに悟ったのですが、ちょうどその時はいろいろと立て込んでいたため、ちゃんと説明するのが面倒になり、適当な発言で煙に巻こうと思い立ったそうです。

「そうですよ、隠れてるんですよ」
「そうなんですか？どこを見てもいないんですけど」
「もっとよく探してください」

　それだけ言い残して友人は仕事に戻ったそうです。

　そんなわけで友人の職場には、でかでかとチーバくんが描かれたポスターをじっくり見ながら、「チーバくんはどこにいるんだ」と呟く奇怪な人間が少なくともひとりは出来上がっているそうです。