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ハリウッドザコシショウさんのCMだけは気になってしまうんです

 基本、CMは見てるそばから忘れてくんです。純粋に興味がないんでしょう。お笑い芸人が出てるCMでもそれは同じです。ただ、とある人が出てるCMだけは見てしまうんです。その「とある人」とはハリウッドザコシショウさんです。

 広告は、見せられる側からしてみたら、楽しいものの間へ勝手に滑り込む訳の分からない映像だったりするわけですが、広告を打つ側の企業からしてみたら、大金をかけて多くの人に自社のものを知ってもらう、大切な仕事なわけです。ですから、原則としていい面ばかりを見せ、ネガティブな表現は避ける。高級レストランを宣伝するんだったら、おいしい料理や行き届いたサービス、お洒落な店内なんかをアピールするべきで、値段が高いとか入りづらいとか食べ方の分からない料理が出てくるとか、そういうことを知らしめるべきではありません。

 さて、ハリウッドザコシショウさんと言えば、誇張しすぎたモノマネを筆頭に、叫び、喚き、暴れることが多く、珍棒とかそういうことを平気で言う、芸人の中でもかなりあくの強いタイプです。ある意味では、企業広告とは真逆の位置にいる人間でしょう。誇張しすぎたIKKOさんのモノマネなんて、普通に考えたらどうあがいても高級レストランの宣伝に活用できるとは思いません。だからこそ気になるわけです。こんな猛者を企業はどうやって広告に使うのかと。

 ハリウッドザコシショウさんはブレイクしてからそこそこの年月が経ったためか、CMの起用もちょこちょこあり、特に狙って見ているわけではない私にも見る機会が訪れるようになりました。ハリウッドザコシショウさんの芸風は先ほど書いた通りですから、どういうCMなのかと思って見るわけです。それこそ、動画の途中で滑り込んできても、スキップせずに最後まで確認する。

 個人的にはキレッキレの広報が広告代理店とタッグを組んで悪ふざけをするくらいのCMを期待するんですが、私が見たハリウッドザコシショウさんのCMは、みんな綺麗なハリウッドザコシショウさんを採用していました。例えば、こんなCMです。

 一応はネタをしてる姿も出てきますけれども、基本は哀愁漂う男として登場しています。ハリウッドザコシショウさんと言うよりは本名である中澤さんとしてCMに出ているかのようです。

 CMとしてダメという話ではありません。ハリウッドザコシショウさんの違う一面を見せるという手法を用いたわけであり、そして1本のCMとしてちゃんと完成した。そこには何の問題もありません。でも、ガムテープで作ったうんこを舞台上に持ってくるほうのハリウッドザコシショウさんを見てケタケタ笑っていた私としては、つい思ってしまうんです。「まあ、CMじゃあ、これくらいじゃないとクライアントからOKが出ないんだろうな」と。

 そこに出てきたのが日清カレーメシのCMです。最初、寝起きで見てたため、夢の続きかと思ったほどの内容でした。

 綺麗なハリウッドザコシショウさんだってそれはそれで魅力がありますけれども、日清のCMに登場するハリウッドザコシショウさんはもう、これぞハリウッドザコシショウさんという感じです。そのままのハリウッドザコシショウさんどころか、よさげなトッピングまで乗っかっちゃってるせいで、何度かじっくり見てようやく「あ、これCMか」と理解できるくらいのクオリティです。後半なんて「釜炊き製法」とか「国産米100%」とか、ちゃんと言わなきゃいけない製品のいいところすら言えてなくて、テロップでどうにか補ってようやくCMとしての体裁を保っている。

 もちろん、こういう手法はあるわけです。周りのCMがみんないいことを言ってるから、うちは敢えてその逆を突いてやろう、みたいな。そうすることで目立ったCMとなり、視聴者の印象に残りやすくなる。そうすれば、商品を買ってくれる確率が上がるかもしれない。

 それに、日清食品はもともと特徴のあるCMを打つ傾向の強い会社です。カップヌードルのCMでカンヌ国際広告映画祭でグランプリを取ったりもしている。ハリウッドザコシショウさんをCM内で暴れさせたところで、日清食品としては「うちはもともとこんな感じですけど?」みたいなノリかもしれません。

 しかし、やっぱり勇気ある会社というか、勇気ある広報だなあと思ってしまいます。当然、苦情だってくるかもしれませんが、日清食品側は「まあ、こんなもんでしょ」くらい、どっしり構えているのかもしれません。いや、本当に。いつも変なCM作ってんな、とは思ってましたが、ハリウッドザコシショウさんを使ってこんなCMにするなんて。

 今後カレーメシを買うかどうかは分かりませんが、CMは十二分に堪能しました。

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