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豹変してほしいし、手のひらも返してほしい

 「手のひらを反す」という言葉がありますね。先ほどグーグルで「てのひら」とだけ入力すると、出てきた検索候補がこんな感じでした。

手のひらを返す
手のひら
手のひらで踊らされる
手のひらを太陽に
手のひらツボ
手のひら ほくろ
手のひら 発疹
手のひら 反射区
手のひらを太陽に 歌詞

 どうして本家「手のひら」を差し置いて「手のひらを返す」がトップに躍り出てくるのかは分かりませんが、よく使われていることの表れなのかもしれません。よく使われているということは、そういう行為が当たり前のように見られることでもあります。つまり、人は態度をガラッと変えることが珍しくない。

 ご存じの通り「手のひらを返す」はネガティブな意味合いで使われる場合が圧倒的に多いです。いいほうから悪いほうに一変させる場合はもちろん、悪いほうからいいほうに一変させる場合もまた、ネガティブに用いられがちです。両方に共通するニュアンスとしては「あなたさっき正反対なこと言ってましたよね」でありまして、一貫性の無さを暗に批判しているわけです。

 「初志貫徹」みたいに、決めたことを貫き通す行為は割と称賛されがちです。貫き通すのはなかなかできないことであり、立派な側面は確かにある。言ってることをコロコロ変える人はやっぱりなかなか信用できません。

 ただ、一方で「君子は豹変す」という言葉もあるわけです。この言葉は一見すると君子がいきなり奇声を上げながら斧を振り回してくるような感じにとらえられる言葉ですが、実際の意味は「立派な人は自分の間違いが分かるとすぐに言動を一変させる」というポジティブなものです。

 三度の飯より初志貫徹が好きな生粋の初志貫徹マニアだって「俺はこっちの道に行くぜ」と決めた3分後に切り立った崖へ辿り着いた場合には別の方角に進む選択をするでしょう。むしろ、「いや、こっちに行くって決めたから、初志貫徹だから」と言って奈落の底にダイブしてもらっちゃ困るんです。是非とも豹変してくれ、手のひらを返してくれと願わずにはいられない案件です。

 そうなんです。先ほども書きましたけれども、同じ「手のひらを返す」でも、いいほうから悪いほうに返すこともあれば、悪いほうからいいほうに返す場合もあるわけです。前者はともかく、後者だったら是非、手のひらをグルッとしてほしい。仮に私の命を付け狙う殺し屋がいたならば、決して心変わりしないプロ中のプロよりも、泣いて土下座したら勘弁してくれる半端な人のほうがとても助かるわけです。

 他人のいい評価をされても油断はできないが、悪い評価をされたからといって諦める必要もない。手のひらがひっくり返るということは、こういう世界ということなんだと思います。

 ちなみに、私は「君子は豹変す」という言葉を聞くと、明石家さんまさんが食事する時によくやる「これがうまいって? そんなことあらへんやろ」パクッ「ほんまや!」のくだりを思い出します。すいません、最後に余計なことを書きました。

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