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銀箸 箸の話/その1

外飲みの時には必ず傍にある相棒。独身の頃に無理して購い、以来ずっと飲み屋で一緒に過ごしてきたのが、この振出銀箸である。

マイ箸ブームの渦中に出逢った箸専門店「門」(現在は閉店し、本店は東京銀座の夏野に集約)さんで一目惚れ。旅行用、毒味用として時代小説での存在は知っていたが、その振出銀箸が眼の前にあるとは!
槌目にサイズもいわゆる割場サイズで使い勝手も良い。銀なので抗菌作用を期待して、普段おしぼりで拭く程度で済ませ時折洗剤でしっかり洗う。やや不衛生であることは自覚しつつ、酒の席なので見送り気味になり、目立つ汚れもないのでそのままと…。洗うたび汚れが出るので良しとして今に至る。

飲み屋では目立つので、話の当てに使いがちで受けもよく、かれこれ十数年来と話せばそこから別の話題にと。居酒屋トークのアタマに便利である。
また、高価で付合いも長く、肌身離したくない一品。なので紛失したくないからか、酒の席では「こいつ」が居ることを確認できなくなるほど酔い潰れない意識が強くなった。物を亡くす事が大嫌いなので、意識は常に財布以外に全てに向けて飲んでいる。その甲斐あってか、十数年呑み歩いていても、傍らに居続けてくれている。

粋は隠して張り合うもの。その一つの振出し銀箸。こいつは現代でも、隠してなおチラ見せる見栄なのだ。

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