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遺伝子組み換え蚊?

約3000種が存在するといわれる蚊は、年間100万人以上の命を奪う世界一危険な生物で、ハマダラカ属、イエカ属、ヤブカ属(ネッタイシマカなど)の3種は人間に致命的な感染症をもたらす。ネッタイシマカは、高熱や激しい頭痛を引き起こすデング熱、妊婦が感染すると頭の小さい赤ちゃんが生まれる恐れのあるジカ熱などのウイルス感染症を媒介する。ビル&メリンダ・ゲイツ財団(マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏と妻のメリンダ氏が設立した世界最大規模の慈善団体)が出資している英国のバイオ企業「オキシテック」は、ネッタイシマカの遺伝子を改変した。「フレンドリー」と呼ばれるオスと野生のメスが交尾して生まれた幼虫のうち、メスは「致死遺伝子」の働きで死ぬ。致死遺伝子を引き継いだオスは成虫になり、メスが増えないことで蚊の個体数は減り続ける。オキシテックは、過去の実験において、ブラジルで最大95%、英領ケイマン諸島で80%の蚊を減らすことに成功、世界各地で約10億匹の遺伝子組み換え蚊を放ったが、人や生態系への影響はなかったとしている。

2021年4月、米国フロリダ州の南端から西方約240キロにわたるフロリダキーズ諸島で、遺伝子を改変した蚊2000万匹を野外に放つ実験が始まった。感染症を媒介するネッタイシマカの駆除を目的に、オスの蚊の卵を大量に入れた箱が島に設置された。2020年の8月には、キーラーゴ島で47人のデング熱患者が確認されている。人口約7万人の列島では観光業が盛んで、蚊媒介感染症の流行地域というマイナスイメージの定着を避けたいという事情もある。Florida Keys Mosquito Control District(FKMCD)は、他の生物や環境への負荷が大きい殺虫剤を使わずに島から蚊を駆除できると判断。オキシテックに駆除を依頼し、米国環境保護庁(EPA)とフロリダ州は実験を承認した。2003年6月に締結された「カルタヘナ議定書」で、遺伝子組換え生物の使用は規制されているが、米国は批准していない。健康や生態系への長期的な影響は不明で、情報公開も第三者による検証も不十分と訴える地域住民もいる。また、米国内の複数の環境保護団体も反対を表明している。

※ 見出し画像にはPixabayのフリー素材を利用しています。

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