見出し画像

ISSが540度回転!?

2021年7月29日、国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングしたロシアのモジュール「ナウカ」がスラスターを噴射し、星出彰彦飛行士が船長を務めるISSの姿勢が大きく乱れた。アメリカ航空宇宙局(NASA)は当初、ISSの姿勢の変化は45度とツイートしていたが、その後の分析で540度(1回転半)とわかった。ロシアの多目的実験モジュール・ナウカは、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地から2021年7月21日、プロトンMロケットによって打ち上げられた。円筒型のモジュールの直径は4.2メートル、全長は13メートル、重さが約20トンで、「ナウカ」はロシア語で「科学」を意味する。ロシアのクルーはナウカがISSに接近する際、外れていた軌道を修正し、7月29日13時29分(協定世界時)にドッキングを完了させた。その後、ナウカのスラスターが噴射を始め、ドッキングから約3時間後の16時34分に、ISSの姿勢の異常をシステムが検知し警報を鳴らした。スラスターの噴射は制御不能な状況で、ロシアの地上管制室も止めることができなかった。ISSに設置されている4基のコントロール・モーメント・ジャイロ(回転する円盤の力を利用して、姿勢を制御する装置)は作動していたが、それでもISSの回転は止まらなかった。NASAの管制官は「宇宙船緊急事態」を宣言。モジュールをつなぐ接続部に歪みが生じる恐れからジャイロを停止し、ナウカを接続したISS本体側のサービスモジュール「ズヴェズダ」のスラスターを逆方向に噴射した。静止軌道上に配置されたデータ中継衛星を用いたネットワークでは、NASAとISSとの通信が優先されたが、緊急事態への対処中、ISSと地上管制室との通信で数分間の途絶が2回発生したといわれている。姿勢の異常が検知されてから約1時間後の17時29分、ナウカの推進剤が無くなりISSの回転は止まった。ロシアの地上管制室は、誤作動の原因を特定できなかった。ISSはサッカー場ほどの大きさで、重さは420トンある。回転によって太陽光パネルなどの構造的に弱い部位が分離する恐れもあった。ロシア国営宇宙公社ロスコスモスは、スラスターの噴射はナウカとISSのハッチを開ける準備中に発生したもので、一時的なソフトウェアの障害が原因としている。NASAは2022年2月、ISSの運用を2030年で終え、2031年1月に南太平洋の上空で大気圏に再突入さて燃焼廃棄する構想を発表した。

※ 見出し画像にはPixabayのフリー素材を利用しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?