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あなたの好きな煙草じゃなくて あなたが好き

好きな少女が吸っていたのは
確か赤と白のパッケージの煙草で
わたしは煙草を吸う友人に
これって何て煙草なの?と尋ねて
それが赤マルなんだと知った

わたしは呼吸器系が強くないし
いっしょにいることができないだろうからと
煙草を吸う男の人を好きになれそうになかった
だから一昨年までは1本も口にしたことがなかった
おじいちゃんとおばあちゃんも
わたしが喘息持ちだったからと煙草をやめた
避けてきたから煙の匂いがすごく苦手だったし
からだに良くない良くないと言われてきたので
嫌悪感すらあったと思う

それでも
はじめて煙草を吸うひとを好きになった
といっても、わたしの前ではほとんど吸わない
女の子たちがよく、そのひとの吸う銘柄をわたしは知っているぞと、同じ銘柄の煙草をわたしの好きなひとにプレゼントしていた
辛かった、わたしの入れない境界線の向こうで
それをいっしょに楽しめるひとたちがいるのが

どうせ人生いつか死んでしまうなら
1本くらい吸ってみてもいいのかもしれない
わたしのために周りの人間が煙草をやめるくらい
大事に、大事にしてくれたからだに
自分に毒をやる、それはとても悪いことで
わたしにとっての煙草は、ただのグレている表明だ
罪悪感で我に返るためのコンテンツだ

でも同じ銘柄を吸っている女の子の
好意のあからさまさが あんまり苦くて
だから好きなひとと同じ銘柄なんて吸いたくなかった
わたしもそんな あからさまな女のひとりになんて
絶対なりたくなかったから

だからその時期に偶然知り合った 文学的な少女の
過去の投稿にあった煙草の銘柄を選んだ
そのこは女の子というよりも少女のようで
紡ぐ言葉が素敵で、恋愛とかではないけれど
存在に惹かれていたから
彼女とお揃いなら それがいいと思った
赤と白の。とっても可愛い

いまでは煙草は グレた意思表明で
月に数本 吸うか吸わないかの
わたしの死に近づくための 死なない程度の
生きることへの大きな抵抗
罪悪感に 冷製のコーンスープで
苦くなった口のなかを 精一杯甘やかすのだ

煙草を吸うおとこのひとって
煙草を吸う女の子が好きじゃなかったりする
わたしが派手髪なのに
黒髪のおとこのひとが好きなのと同じみたいにね
わたしは好きなひとの"好き"から
自ら選んで離れていくの
間違っているとか知っていても仕方がない
そうやってしか
わたし だれの好きも信じられないから
そして間違っていくのを選んでいる
いつも破滅に向かっていく
不幸でもいっしょにいてほしい
わたしの運命のひとって 運命そのものなのかも

ねえそれならどうか わたしと心中してよ

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