バナナの種 11

9月4日に島バナナ便第６便が届いた。台風９号の前に収穫しておいたものらしい。父の畑は、先日の9号による被害はそれほどなかったよう。現在台風10号が近づいているが、沖縄より九州の方が心配な進路予報だ。

今回は、一緒にバンシルー（グァバ）が入っていた。第４便・５便に入っていたレンブもバンシルー同様、こちらではなかなか見ることのない珍しいものなのだが、日本の果物に求められがちな「平均して甘くてジューシー」を満たしていないので、島バナナほど積極的なお裾分けはしにくくて、大半をひとりで食べている。

最近、レンブとバンシルーの魅力は香りだと思うようになった。レンブは軽やかで上品な温帯の果物を思わせる香り、バンシルーは濃く力強くバナナよりも青いイメージの香りがする。

冷蔵庫の下段の野菜室に入れたバンシルーの香りは、上の扉を開けた時にもふわっと漂ってきて不意打ちのような気分になる。どこかの家の庭先の大きくなりすぎた木からボトボトと果実が道に落ち、熱いアスファルトの上で潰れてムンムンと匂いを放っていたこと、いろんなことがままならなかった子供の頃のまだ終わらない夏の日。記憶が形を取り始める前に扉を閉める。