「ピンチのない小説は面白くない。浮き沈みを楽しもう」。元CTO藤井が語る、エンジニアとしての生き方
開発リードを務める藤井さんは、前職でCTO、前々職で起業を経験。経験豊富な藤井さんが選んだのは、CTOという肩書きを外して、overflowの開発チームで手を動かす道でした。
藤井さんがなぜ、overflowを選んだのか。再度スタートアップにジョインして、感じていることとは。インタビューを通して迫りました。
藤井 拓也|開発リード
20代後半まで職を転々としながら小説家を目指す。その後、プログラミングを独学し、SIerに入社。技術系取締役として起業を経験したものの、のちに解散。前職ではクラウドサービスのスタートアップにて取締役CTOを務める。2022年10月に正社員としてoverflowへ入社。
大変だった経験を生かし、CTOとVPoEの力になりたい
── 藤井さんは珍しいご経歴を歩まれていると聞きました。詳しく教えていただけますか?
高校卒業後、小説家になりたいと思いながら、職を転々としていました。僕がプログラミングを始めたのは、27歳の頃なんです。PCすら持っていなかったので、C言語のプログラムをノートに書いて、独学で勉強しました。
それからSIerで働くことになり、8年かけて50人規模のプロジェクトを任されるくらいの立場になりました。友人と共に起業も経験しましたが、キャッシュアウトにより解散。前職では、スタートアップ企業の5人目の社員としてジョインし、CTOを務めました。
── さまざまな経験をされてきたのですね。どのようなきっかけでoverflowと出会ったのでしょうか?
スカウトです。最初にスカウトを送ってくれたのが、overflowだったので、早めにお返事をして、そのままご縁をいただいた形です。転職で絶対に譲れなかったポイントは「既にCTOがいること」でした。
── 再度CTOとして転職することは考えなかったのでしょうか?
いや、「もう絶対にCTOはやりたくない」と思っていました(笑)。実際に自分で経験してみて、とにかく大変だったので、CTOとしてお声がかかった企業はすべてお断りしていたんです。僕自身の力不足もあるけれど、「こんなに大変な仕事ってあるんだ」と思うくらいに大変でした。
内部の協力を得ることに苦戦したり、高い期待値にプレッシャーを感じたり、非常に難しい技術にぶち当たったり……。挫折も経験しました。
それでいて「できて当然」という空気感もあったので、褒められるわけでもなく(笑)、孤独を感じることも多かったですね。
でも、この経験があるから、CTOやVPoEの気持ちを誰よりも理解できるはず。ぜひお力になりたいと思っています。
── CTOの大谷さん、VPoEのahomuさんはどのような方だと思われますか?
大谷さんは、ご自身でコードをゴリゴリ書かれていて、実装力や技術力があり、ナレッジを豊富にお持ちです。さらに、現在もなお新しい技術をキャッチアップし続けていて、とてもじゃないけど真似できないなぁというのが正直な感想です。
ahomuさんは、VPoEそのものだなと思います。すごくクレバーですし、相手の言葉の意味を理解しながら柔らかいコミュニケーションをとる方です。
お二人がご自身のミッションに専念できるよう、過去の経験を生かしていきたいです。
オープンな開発環境で、この会社だけの正解を導き出す
── 元CTOから見て、overflowの開発メンバーはいかがですか?
末恐ろしいです(笑)。プログラミングを始めた頃の僕と同じくらいの年なのに、こんなにレベルが高くていいの!?と、こちらが危機感を覚えるほどです。みなさん馬力があり、学習速度が早く、学習意欲も高くて。
今は自分がこれまで培った経験で勝負しているけれど、その貯金を使い切ったらもうどうしようと怖さを感じています(笑)。
── 怖さすら感じていたとは!藤井さんは現在、どのような業務ミッションをお持ちですか?
OffersのtoB側の開発リードという役割を担っています。PdMやマネージャーが描く理想像を、責任を持って作りきるのが私のミッションです。さらに、Flexible(業務委託で週2,3日の稼働)のメンバーがバリューを出せるように、マネジメントも一部担当しています。
overflowではFlexibleの方々が多く参画していて、技術も組織も非常にオープンです。そこが、この会社のいいところだと思います。
── Flexibleメンバーが参画すると、どんなメリットがあるのでしょう?
「ベストプラクティス」に辿り着きやすくなります。「ベストプラクティス」とは、その会社にフィットした技術のことです。
世の中には技術にまつわる情報が山ほどあふれていますが、自分たちの開発環境とコンテクストが違うものも多いです。そのため、実際に役立つものはほんのわずかしかありません。
overflowの場合は、副業として多くのメンバーがジョインしているため、さまざまな企業で積み上げられた知識やノウハウが集結しています。ネットで見た情報ではなく、実体験を基にしたものなので、いずれも生きた情報。この会社における「ベストプラクティス」が、猛スピードで導き出されていくんです。技術や組織を自社内にとどめる企業が多い中、overflowは大きな強みを持っていると感じます。
あと、Offersの開発チームは現在、面白いフェーズにあると思っています。
── その理由はなんですか?
Offersのローンチから時間が経ち、個人の開発力に頼っていたフェーズから、組織的に開発していくフェーズに移り変わってきています。これからは、チームメンバーを増やして、開発力を一気に上げていくフェーズです。品質を上げて、事業を伸ばしていく。スケールするための開発に携われるのは、環境として面白いと感じます。
若手エンジニアの育成にも注力中
── 最初は独学でC言語を学ばれていたんですよね。最初がCって、レアな気がしました。
C言語なのにWebページを作っていましたからね。苦行でしたけど、今となってはよかったです(笑)。というのも、C言語をきっちり勉強したことで、どう書けばどう動くのかという、ソースコードのメタの部分がイメージできるようになったからです。
リスト構造や型などの基本パターンを押さえていたので、PHPやRubyなども、そこまで悩まずに済みました。おかげで、キャッチアップのスピードも速かったはずです。最初は難しかったですが、一歩目で基礎を固められたのはよかったですね。
── エンジニアとして、さまざまなピンチを乗り越えてこられたのではないかと思いますが、印象的なものを一つ教えてください。
数え切れないほどのトラブルを経験していますが、僕が出した中で一番ひどいバグは、きっとあれですね。アプリの全ユーザーの通知トークンを、たった一人のユーザーにすべて集約してしまったんです。「朝から携帯がガタガタ言ってるんですけど」と電話がきて、飛び起きたことがあります(苦笑)。
── ヘビーなご経験もされてきたんですね。さまざまな経験を積んでいるからこそ、後輩の指導には力が入るのではないでしょうか?
そうですね。自分が経験したことは、なるべく若手メンバーに伝えたいなと思っています。
── コードレビューで大事にしていることを教えてください。
コードを限定的に見るのではなく、周辺を調べたり、目的を探ったりすることを大事にしています。「このコードはどこに繋がっているのか」「そもそも本当に必要なのか」といったところまで、一緒になって考えていきます。
そうすることで、キャッチアップの幅も広がるし、その方のやりたいことがどんどん明確になっていくので。
── 藤井さんが思う、「実力のあるエンジニア」とはどんな人ですか?
一つに、自信があること。優秀な人は優秀だとわかるんですよ。それっておそらく、滲み出る自信なんですよね。
もう一つは、コミュニケーション力があること。チームを尊重して、気持ちのよいコミュニケーションをとれる力も欠かせないと思います。
overflowの開発メンバーは、誰しもがこの二つの要素を持っていると感じますね。
物語の中を生きるように、いつ、どんなときでも人生を楽しむ
── 藤井さんが仕事で大事にしているモットーはありますか?
「物語の中を生きるように、いつ、どんなときでも人生を楽しむこと」です。
スタートアップは、成功を求めて入ってくる人が結構多いと思っているんですね。上場して、SOの利益で成功したいとか。自分のキャリアを伸ばして成功したいとか。
でも、会社って波があって、常に順調なんてことはないじゃないですか。僕も過去に、成功イメージが遠のいたことがあったんですよ。うまくいかないな、駄目だなって。
でも、うまくいかないときこそ、何を目的とするのかが大事だと思っているんです。「成功」を求めるのは、きっと、スタートアップにおいて本質的じゃないから。
── 藤井さんは何を目的に働いているのでしょうか?
「体験すること」自体を目的にしています。会社が変化していく過程とか、事業が厳しい状況を乗り越える瞬間とか、そういう景色を楽しんでいくことのほうが、成功を求めるよりも、遥かに幸福だなって。
ずっと上手くいく小説なんて、面白くないじゃないですか。何もピンチがない小説なんて。浮き沈みがあること自体を楽しんだほうが僕はいいと思うし、ずっとそのマインドでいたいと思っています。
── 経験値が物語る、重みのある言葉だと感じました。
何度かどん底も味わったけれど、このマインドなので、すべていい経験だったと振り返って思います。一つたりとも無駄はなかった。
人生の中で、大正解だったと感じることも二つあって。ひとつは、エンジニアになったこと。もうひとつは、スタートアップ業界にきたこと。
若い頃、小説家になろうと思ったけれどなれなくて、フリーターになって、奥さんと出会って、結婚しようと思ったけれど月給10万ちょっとしかなくて。当時はどうやって生きていくんだと、途方に暮れていました。
でも、エンジニアになろうと決めて、仕事を始めたら性に合ったんです。どんどん自己効力感が上がっていきました。自分が世の中の一部としてちゃんと機能できている、そんな喜びを感じるようになったんです。
── そこから、スタートアップにも挑戦された。
スタートアップに入って、視界が一気に開けた感じがしました。SIer業界はエンジニアとしての実力を身に付けるのには良かったけど、自分の仕事が事業の一部であるとは捉えられず、どうしても下請け感覚が拭えなかった。でも、スタートアップにきてからは、事業と自分の繋がりを感じられるようになって、一気に面白みが増しました。
── エンジニアになって、スタートアップ業界を選んで、よかったですね。
本当に、過去の自分に感謝です。
── 最後に、これからの目標を教えてください。
僕自身、キャリアプランは特にないんですね。スタートアップにいる限り、キャリアプランは意味をなさないと思っているからです。どんなときでも、その状態を楽しむことだけがモットー。
僕の願いは、会社がどんどん大きくなっていって、景色が変わっていく状態を、なるべく最後まで眺めていたい、ということ。overflowの変化をこれからも楽しみたい。
そして、overflowという船に一緒に乗ったみんなが、できるだけ幸せでいてほしいと願っています。特に、若い方々のキャリアがしっかりと伸ばせるようにと。そのために、過去の経験を総動員して、みなさんをサポートできたらと思っています。
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