見出し画像

『マジではだかの王様』を終えて

こんにちは。こんばんは。
劇団TOS団長の中藤充紀でございます。

先日10/9(土)、10/10(日)に劇団TOS旗揚げ公演『マジではだかの王様』
計4公演、無事にすべて終了しました。
(※2週間後、団員と当日来てくださっていたお客様の中からコロナ感染者が誰も出なければ本当の終わり)

公演を観に来てくださった皆様、本当にありがとうございました。

今回は実際に会場で『マジではだかの王様』をご観劇くださった皆様に向けて、この作品の脚本・演出を主に担当させて頂いた僕自身から色々とお話できたらいいな!と思ったのでnoteを書き書きしております。
結構長くなっちゃう可能性もあるんですけど、気になる人はぜひ見ていってください。
(※またTOSのYouTube動画で話す機会もきっとあるだろうけど)

『マジではだかの王様』のテーマについて

まずは作品のテーマについての話から。

劇団TOSを立ち上げて、公演に向けていざ作品を書くぞ!ってなった時に、まず最初に作品のテーマを設定する必要がありました。

僕は昨年、色々な失敗をし、恥ずかしながら大きな挫折感も経験しました。
それらを経ていくうちに「自分の本心」を大事にすることの大切さに気付くことができました。
いわゆる"心をはだかにする"ということですね。

この現代、自分の心をはだかにするのが苦手な人って意外と多いんだなと感じています。
僕も昨年までそうでした。今も「100%心をはだかにできているか?」と聞かれたら即答できる自信は一切ありません。

それぐらいに難しい。
何か行動をする時、何かを発言する時、ついつい人の顔色を伺ってしまうことってありませんか?僕はめっちゃあります。
「誰からも嫌われないように」「できる限り空気を読んで」そんなことをついつい考えてしまう。
でも、そんなことを考えながら出す決断って、いつもどこか芯が無いし、フワッとしているし、その決断に対して自分自身がモヤッとしてしまう。

なぜだろう?その答えはいたって単純。
自分の本心をないがしろにしているからです。

『マジではだかの王様』劇中第三幕。
ラルゴのアジトにてプリモがヴィーヴォに向けて言うセリフで、
「王様はさ、誰のために生きているの?」
といったものがあります。
このセリフ、劇中結構さらっと言われるものなんですけど、この作品の核となるセリフでもあるんです。

皆様は、自分の為に生きることができていますか?
僕は今まで、それができていませんでした。

「自分軸」で生きるのと「自分勝手」に生きるのでは、意味合いが全くもって変わってきます。

「自分勝手」に生きるのは基本的には良くないとされています。
わがままで自己中心的で、周りのことは一切考えない。他人の意見にも聞く耳を持たない。尊重もしない。なんだったら、自分の意見を押し通して、他人の意見も捻じ曲げようとしてしまう。他人を支配しようとしてしまう。
「自分勝手」な人は、それらの特性上どうしても周りの人から嫌われやすい傾向にあります。
皆様の中でもきっと「自分勝手な人間にはなりたくない!」とぼんやりでも思われている方はいらっしゃると思います。
(※それぞれの人に事情があるはずなので、「自分勝手」とされる人を否定する意図は一切ございません)

でも、だからといって、「自分勝手」になることを恐れるあまり「自分軸」を失ってしまうのも、それはそれで良くない。実に良くない。

「自分軸」を持つということ。それはつまり、自分の意志・意見をしっかりと持ちつつも、他人の意志・意見を聞き入れ、尊重し、でも、決してそれらに流されるわけでもないということ。
自分という人間をしっかりと持つということ。
もしかしたら、他人の意志・意見に影響を受けて、「自分軸」が変化を遂げることもあるかもしれない。それはそれでOK。

とにかく大事なのは、何かをアクションを起こす時、そこにはしっかりと「自分軸」を持ち込むべきであるということ。
そうすることで、自分の決断にも納得していけるだろうし、余計な言い訳も必要もなくなる。
逆に言えば、それは自分の選択に対しての責任をしっかりと背負うという意味でもある。
自分の選択に対してモヤッとしたり、ついつい言い訳をして諦めたくなってしまう時って、基本的にその責任の部分を「他人軸」に委ねてしまっていることが多いのかなと感じています。

それらをテーマとして、今回皆様に舞台をお届けしたかった。
"心をはだかにし、自分の本心と向き合う"
これが、『マジではだかの王様』の主題です。

『マジではだかの王様』が誕生したきっかけ

そもそもこの作品はどういう経緯でできたんや!?という話なのですが、実はこの作品、ある曲から着想を得た...というより、ある曲をオマージュした舞台作品になっているんです。
そう。この舞台の元ネタとなった曲があるんです。

実はこれ、まだTOSの団員にすら話したことがない内容なんですよね。
ここで話そうかどうかすごく迷いました。
別にそれを知らなくても作品自体は十分楽しんで頂けると思うんですけど、これを知って頂くことでよりニヤリとできる人もいるのかなと思います。

今回、『マジではだかの王様』の元ネタとなったのがこの曲。
僕が昔から大好きなUVERworldさんの『バーベル~皇帝の新しい服ver.~』

まずはぜひ曲を聴いてみてください
https://www.youtube.com/watch?v=qOO_VdPS0xQ

どう?はだかの王様。筋肉。プロテイン。ダンベル。まんまでしょ?
なんだったら「お前これパクリじゃねぇかよ!」って怒られてもおかしくないレベルです。

台本を作る際に、前述のテーマを先に決定したのですが、僕は肝心なところで躓いてしまいました。
「伝えたいテーマを物語にどうやって昇華させたらいいんだ?」と。
色々と考えてみても、中々良いアイデアが思いつかず。
そんなある日の深夜、曲を聴きながらぼんやりと散歩をしていたら、たまたまこの曲がイヤホンから流れてきて、その時にビビッと来ました。
「これだぁあああ!!!」って。

このバーベルという曲、初めて聴いたのは確か中学生の頃だったんですけど、その時は「ただ面白い曲だな~!」程度にしか思っていなかった。
でも、台本作りに頭を悩ませていた時に聴くと、また別の曲のようにも聴こえてくる。

そこで、責任感やプレッシャーが多いであろう立場の国王が、実は内心「筋肉を見せたい」という感情を抱えているストーリーであれば、今回作品で出力したかったテーマにがっしり当てはめられるな!と感じました。
(※筋肉厨の王様というアイデアをお借りさせて頂きました。UVERworldさん本当にありがとうございます。これからも一生曲を聴き続けます)

それから、筋肉を見せたい→ボディビルダーを夢見る→それの障害となる役の登場(アレグロ、ドルチェ)→夢を応援する仲間の登場(クリシェ、ラルゴ、プリモ)といった形で、ドンドンと連鎖的に物語が出来上がっていったわけでございます。

脚本執筆の際に考えていたこと

さて、脚本のテーマと世界観は決定できた。
次はストーリーの構成を練らなくては!ということで、物語の展開、起承転結の部分を考えていかなければなりません。

そして最終的に出来上がった起承転結がこちら↓
起:ボディビルダーという夢に憧れつつも、中々行動が出来ずにいた国王ヴィーヴォ。
承:ヴィーヴォがラルゴ&プリモと出会い、マジではだかの王様同盟を結成。
転:クリシェ投獄。アレグロとドルチェの策略によりヴィーヴォ、夢を断念。マジではだかの王様同盟の解散。
結:2年の努力の末、ボディビルダーとなったラルゴ&プリモ。それをサポートしたクリシェ。ヴィーヴォ、ボディビルダーになることを決心。アレグロとドルチェの説得にも成功。

ざっくりとまとめるとこんな感じ。
でも実は、『マジではだかの王様』という作品、最初これとは全く別物ストーリーだったんです。
そう。ストーリー全体に改変が加わって、最終的に今回上演した『マジではだかの王様』の物語が完成しました。
(※ストーリー改変については、以前TOSの動画でもお話しました↓
https://www.youtube.com/watch?v=lc3jfZWzLIo&t=2s)

それでは本邦初公開。改変前の『マジではだかの王様』の起承転結を観ていきましょう↓
起:ボディビルダーという夢に憧れつつも、中々行動が出来ずにいた国王ヴィーヴォ。
承:ヴィーヴォがラルゴ&プリモと出会い、マジではだかの王様同盟を結成。
転:クリシェ投獄。マジではだかの王様同盟3人で助けに行くも、アレグロとドルチェに見つかる。その場で大喧嘩。アレグロがラルゴを射殺。ヴィーヴォ挫折するも、プリモが殴ることによりヴィーヴォ復活。
結:ヴィーヴォ、はだかでパレードを決行。民衆の前で肉体を披露。アレグロとドルチェが阻止に入り、喧嘩状態へ。実は生き抜いていたラルゴが再び登場し、その場をまとめる。全員でラップ対決し、アレグロとドルチェの説得に成功。実はアレグロ、ヴィーヴォのことが恋愛的に好きだった(?)。最終的に仲直りしてみんなでドーナツを食べに行く。

本当にざっくり書くとこんな感じ。どう?後半とかマジで別物でしょ?
でも、『マジではだかの王様』最初はこんなお話でした。

そもそも、今回の劇団TOSの旗揚げ公演。
元々は6月上演予定だったところ、緊急事態宣言の影響で10月に延期になったのですが、もし無事に6月に上演出来ていたら、上演内容は改変前のものになっておりました。
つまり、延期が無ければ最新版『マジではだかの王様』は誕生していなかったわけです。

じゃあお前、なんでそもそも改変なんてしたの?と思われる方もいらっしゃると思うので、簡単にですが理由を説明させてください。
理由としては何点かあるのですが....
①伝えたかったテーマが最終的にフワッとしてしまっていた
②書き始め当時、僕の頭が映像脳過ぎて場面転換と暗転が死ぬほど多かった
③全員で喧嘩・ラップするシーンがカオス
④舞台作品としての魅せ方をもっと追求したかった

基本的にこれらが主な理由です。
パッと見、改変前のストーリーも色々な事件が起きていて面白そうに感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、これに関しては色々とやりたいことを盛り込み過ぎて、このままだとものすごく大味な作品になってしまうなと僕自身が感じてしまったんです。

だから、旗揚げ公演の延期もきっと運命だったんだろうなと思うようにして、団員のみんなにも割とわがままを言って、物語(主に後半)を大幅に変更させて頂きました。

物語改変後は、よりヴィーヴォの内面の葛藤に焦点を当てるようにし、舞台的な演出・表現も可能な限り盛り込むことを意識しました。
その結果、ヴィーヴォの感情・黒と白という役が増えた。
クリシェの過去をより掘り下げる為にクリシェの父・母という役が増えた。
なんということでしょう。物語と演出に大幅な変更を加えたことにより、登場人物が4人も増えてしまったのです。

でも、この改変のお陰で、物語を通して伝えたかったテーマの輪郭がよりくっきりとしたし、ストーリーも全体的にすっきりとしたし、舞台的にも見やすく、且つ見応えのあるものにできたなと感じております。

『マジではだかの王様』の登場人物について

次は登場人物についてです。

配役を決める際、TOSのメンツでこの物語をやるなら...この配役が最強だろうという布陣で組ませて頂きました。
役それぞれが抱えているストーリーや感情を、キャストみんながしっかりと分析し、役と向き合ってくれているのが毎稽古でひしひしと伝わってきておりました。
千秋楽終演後、キャストみんながそれぞれの役に別れを告げている時は、正直うるっと来るものがあった。
それだけ、自分の役を愛しながら演じてくれていたんだなと。
登場人物をそこまで愛して演じてくれたことに、まず感謝の気持ちでいっぱいです。
登場人物の魅力を120%のパワーで出力してくれて、本当にみんなありがとう。

公演を観に来てくださった皆様の感想ツイートもたくさん拝見させて頂いております。(※舐めまわすように)
「この役のここが素敵!」「この役たちの関係性が好き!」そういった内容の感想を発見する度に、誇らしい気持ちになってしまうというか、ついつい周りに自慢したくなってしまう気持ちになります。
「うちのキャラめっちゃ良いでしょ?分かる?」って。
親心ってこういうものなのでしょうか。

登場人物それぞれについて語ってしまうと、このnoteが冗談抜きでハリーポッターよりも長くなってしまう可能性があるので、今回は割愛させてください。

今回書いた登場人物の中で僕が個人的に一番お気に入りなのは「クリシェ」です。
『マジではだかの王様』の中で一番人間味が溢れてて好き。
自分の選択に後悔の念を抱きながら、そこから逃げることなく、言い訳もせず向き合い続け、ヴィーヴォよりも一足先に自分の中で答えを見つけ出したクリシェ。
何を隠そう、第四幕の牢でクリシェがヴィーヴォに向けて昔話をするシーンが僕は今回の劇で一番好きなのだ。

脚本・演出としての責任

今回の舞台で初めて、脚本・演出を担当をさせて頂いたわけなのですが、まず感想として、めちゃくちゃ楽しいという気持ちがありつつ、それと同時に色々な責任を負わなければいけない立場でもあるんだなということがよく分かりました。

僕の書く作品一つで、数十万円単位のお金も動くことになるし、公演に関わる人数はキャスト・スタッフ・お客様すべてを合計すると平気で100人は超えてくる。
公演の規模が大きくなるにつれて、それらの数字も桁ごと変わっていくことでしょう。正直、想像しただけで吐きそうです。
(※当然、より大きなキャパ・動員数を目標にはしています)
パッと聞くと「え、それだけ人もお金も動かせるのって気持ちよさそうじゃん!」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、決してそういうものでもありません。
むしろ、脚本・演出としての責任の重さが、まるで重機のタイヤの如くずっしりとこの肩にのしかかってきます。
それが、「公演を打とう!」「劇団を作るぞ!」と言い放った、いわゆる言い出しっぺとしての責任。

だからこそ、絶対に手を抜いてはならない。
脚本・演出として、最大限自分の引き出しを活用して、面白い作品を生み出さなければならない。
多くの人やお金が動いた挙句、「この作品しょーもな...」というものを残してしまったら、その公演は誰のものにとっても悪い思い出として昇華されてしまいかねない。それは絶対にあってはならない。
そんな責任感が、この脚本・演出という立場にはどうしてもついて回ってきます。

重いね。重たいよ。でも、その分やりがいも凄まじい。
一番最初の公演を終えて、恐る恐る公演の感想を覗いてみたら「面白かった!」という一言を見つけられて、どれだけ幸せな気持ちになれたことか。
「あ、僕はその一言が聞きたくて舞台を作っているんだな」ということに気付くことができたし、心底ホッとしたのを覚えています。

正直、僕は演劇人としてはまだまだアマチュアです。
だから、これからもっともっと精進しなければいけない。
YouTuberだったやつがただ思い付きで始めた劇団だと思われないよう、これからもしっかりとお芝居を続けていきたい。
色んな作品に触れて、舞台にも触れて、エンターテイナーとしてお客様に楽しんで頂けるものを作り続ける。
これが劇団TOS内での僕の使命だと感じているし、これからもブラさずに、真摯に向き合っていきたい仕事です。

劇団TOSの処女作である『マジではだかの王様』。
皆様にとっても大切な作品になってくれたら、僕は感無量な気持ちで一晩涙で枕を濡らすと思います。

旗揚げ公演を終えての感想。そしてこれから

長々と書いてしまいましたが、今回旗揚げ公演を無事に終えられて本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。

旗揚げ公演を無事に打てたことで、やっとTOSも劇団としての仲間入りを正式に果たせたのかなと感じております。

このご時世だからこそ、公演を打つまでに色々な課題も山積みでした。
コロナ感染対策に関して、考えさせられることも本当に多かった。
キャスト、スタッフのPCR検査を全員陰性の状態で公演を迎えられるかどうかも、ずーっと気になるくらいには不安だった。

この旗揚げ公演は、僕一人の力だけでは絶対に成し遂げられなかった。
団員みんなの素晴らしい活躍・協力・アドバイス、そしてお手伝いのスタッフさん、施設の方々、公演を観に来てくださった皆さん。
本当に多くの方々の行動によって、実現することができました。

この場を借りてもう一度お礼を言わせてください。
この公演に関わってくださったすべての方々へ、本当にありがとうございました。

劇団TOSはしばらく旗揚げ公演の余韻に浸りつつ、徐々にまた次回公演に向けて動き出して参ります。
ここだけの話、第二回公演でやりたい事も、その次の公演でやりたい事も、実はすでに決まっていたりします(小声)
劇団TOSの仲間と、これから先の未来にワクワクしながら、一つずつじっくりと実現していきたいと思います。

また数カ月お時間いただくことになりますが、次回公演もどうか期待して待っていてください。
今後とも、劇団TOSをよろしくお願い致します。

劇団TOS団長 中藤充紀





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?