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情報を探すコツその2:情報は何と比較して・何を対象としてなのか

この記事は卵巣がん体験者の会スマイリーのTwitterで呟いた情報に加筆修正を加えた記事です。

患者に配慮しているのかよくわからない医療情報

スマイリーに届く相談のなかには医療機関が提供している情報をどう理解すれば良いのかわからないというものがとても多いです。

例えば、癌研有明病院のがんに関する情報・がんの種類について・卵巣がんのページの「卵巣がんの組織型」についてを例にお話しします。
https://jfcr.or.jp/hospital/cancer/type/ovary.html

この項目では、卵巣がんの4つの代表的な組織型について抗がん剤が効きやすいのか・効きにくいのか示されてます。

漿液性がん、類内膜がん、明細胞がん、粘液性がんの4つですが、前2者は抗がん剤がよく効き(特に漿液性がん)、後2者は抗がん剤が効きにくく

と示されてます。
しかしこういった表記では患者さんは「何に比べて」「どれくらい(効くか・効かないのか)」わかりづらく不安になるのです。
例えば「効かないのになんで抗がん剤をするの?」「それって製薬会社を儲けさせるため?」みたいな陰謀論まで持ち出して相談をしてくる患者さんもいます。

もちろん同じ卵巣がんの組織型同士を比べてだと察する患者さんもいます。しかし比べるのが「同じTC療法を使う他のがん」「これら4つの組織型」なのか記事に書いてなければ誤解するのはしかたありません。

このように「何に比べて」「どれくらい効くのか(効かないのか)」が示されていない情報は、患者さんの価値観・想像力で大きく左右され言葉が一人歩きしてしまいます

金原出版「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん治療ガイドライン2020年版」には何と比べてどれくらいの奏功率の差があったかは明示されています。
しかしその奏功率の差を踏まえても、明細胞がんや粘液性がんにとっては臨床試験結果からTC療法が標準治療であること・抗がん剤治療の必要性がしっかり明記されています

もちろん患者さんのなかには「数字は怖いから知りたくない」という方もおられます。
そうした方への配慮で敢えて数字を示していないのかもしれません。
もし、そうであるなら「効きやすい・効きにくい」という言葉も患者さんにとっては精神的影響が大きく配慮すべき言葉なのではないかと個人的に思います。
またそれらが正確に把握できないのに不安を増大させるのは患者さんにとっては不利益でしかなく、情報を読み取る側も冷静に、時には主治医とその情報についてしっかり話し合い自分にとってどうなのかを正確に知る必要があります。

誰に対しての情報なのかを見極める目も大切

また、患者さんから問い合わせのある情報で多いのが「光免疫療法」「プラズマ治療」です。
光免疫療法は一部のがん種で有用性が報告されていますが卵巣がんには今の所はそうした情報はありません。
またプラズマ治療に関しては名古屋大学の2017年のリリース

今回の研究では、マウス卵巣がん腹膜播種モデルを用い、実際の病態により近い腹腔内に散らばったがん細胞に対しプラズマ活性溶液を腹腔内投与することで、卵巣がんの進行を抑え、生存期間を有意に延長することを初めて示しました。

とされており、マウスが対象であることが明示されており、人が対象ではないことをきちんと把握して情報を読み取ることが大切です。

情報を読み取る時には
「何と比べて(もしくはどういった条件で:例えば初発か再発かなど)」
「誰が対象で(人間か動物か、卵巣がんかほかのがんか)」

などをしっかり読み取ること、そこがぼやかされている情報は真に受けるべきではないことを知ってください。

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