ラグビーW杯を終えて
2023年11月
個人的に一番面白かったのはポルトガル。試合開始から常に全力、とても心を動かされた。フィジーに勝った試合だけでなくジョージア、ウェールズ、オーストラリアに果敢に立ち向かっていく姿、睡眠時間を減らしたかいがあった。
W杯は準々決勝が面白いというのは、今大会でもさらに強調された。そういえば毎年の花園高校大会も元旦の4試合がとても面白い。今後海外大会の観戦はやっぱり準々決勝を軸に考えていこうと思う。
盛り上がったラグビーW杯だが、これでラグビー万々歳かというと、そうではない。大会を経て課題は残った。なかには高まったかもしれない。今後ラグビーが抱える課題について、述べておきたい。
1)インプレー時間
40分を越えた試合は3つ(ついでにいうと全てNZの試合、やっぱり面白いラグビーをやっていた、フォスターって実は名将なのかも)。平均は34分余り。このところIF(ワールドラグビー)が苦心してゲームのスピード化、インプレー時間増加のための様々な施策を施しているが結果としてはあまり芳しくなかった。(もっともインプレー時間だけが全てではないが)。しかし、フッカー出身の私すらラインアウト前の円陣は不要に感じるし、プロップ会が楽しみな私でもスクラムだって16人それぞれもっと早く用意しなくてはいけないと思う。乱暴かもしれないが個人的には試合時間は60分間くらいでよいと思う。短くても長くても選手の体力は同じであり短いなりに選手は最初から積極的にボールを動かすだろう。無駄な時間を減らしトータルで最低限2時間以内に収める競技にならないと、他の娯楽と勝負していくのが難しい。
2)ヘッドコンタクト・レッドカード
決勝ではまさにこの課題が露呈した。この試合のレッドの判定は支持したいし、選手の安全を守るという強い姿勢を示した。国内でも変更されたタックルの高さと対応など課題は多い。まもなく開幕するリーグワンではレッドカード後の取扱に大きな変更がなされると聞く。しかしこれは慎重にするべきと思う。前例に囚われず良いと思われることを試験的に取り組むのはとても良い、しかし同時にリーグ・日本が目指すもの、これまで大切にしてきたこと、これらを総合して議論を重ねることを、意志決定者には望みたい。
3)レフリングとTMOのバランス
これまた決勝で感じたこと。バーンズ主審のパフォーマンスになんら異議はない。しかし、52分、NZモアンガの素晴らしいランからサポートしたスミスがインゴールにとびこんだが結果的にはノートライ。TMOからの介入によってラインアウトからのノックオンがあったと。しかし実際のプレー中主審は少なくとも3回は「ノーノックオン」と言っていた。選手がレフリーを信頼するラグビーで、主審が3回以上も力強く「ノーノックオン(ノックオンじゃないからプレーしてよい)」と言われたら、選手はプレーを続けるだろう。しかし、数分後、素晴らしいプレーだけでなく、レフリーの判断もろとも覆された。個人的にはレフリーがあそこまで強く判断したのなら、映像であってもバーンズを尊重してほしかった。今後レフリーは相撲の行司のような存在になっていくのだろうか。大げさな言い方かもしれないが、ワールドラグビーは大きな決断をしたことに気付くべきだろう。
4)普及と強化
W杯の日本代表の活躍もあって、国内も大いに盛り上がった、と思う。しかし地元の新潟県の高校ラグビー新人戦が11月から始まるが、出場チームは6チーム。ついに我が母校も単独チームは組めなかった。シーズン制スポーツを可能にする登録方法、15人制でなく人数を変えるルール変更、など課題は重く、数年後にシニアカテゴリーにも積み残されていく。
W杯でいえば、次回は参加チームが4チーム増えるらしい。間違いなくいえることは、競ったゲームを増やす必要があること。最後まで白熱した試合もあった一方で、全48試合の平均得点差は27点。20%にあたる10試合で50点差が開いた。いわゆる「ティア2」にあたるポルトガル、ジョージア、ウルグアイは勿論だが、今後は未知なる4チーム、アジアでいえば香港や韓国の強化がとても大切になる。日本も、日本代表の強化に尽力するのは勿論だが、出来る範囲でアジアの隣国の強化を支援することが、将来的に自分達のラグビーの発展のためになるだろう。例えばであるが長年アジア地域のラグビーを積極支援・交流している流通経済大などには期待したい。
5)医科学研究
最後。試合中のパフォーマンスに関してのデータ、選手のゲインメーター、タックル、パスなどは、以前は専門スタッフが夜通し映像を見ながら「正」の字で算出していたが、2023年の今はとうとう試合の最中に誰の目にも触れることができるようになった。今後は自動撮影、自動トラッキング、パフォーマンスデータの自動検出はますます増えていく。そういうなかで、医科学研究は競技の発展のためにどういう貢献ができるのだろうか。勝利への近道を示す戦術研究の推進か、安全性を高める知見の提供か、このあと数ヶ月は日本だけでなく世界のラグビー研究(研究者)の成果が楽しみだ。
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