株式会社アメリカ合衆国～暗黒啓蒙～
目次
アメリカ・コーポレーション
2017年、ドナルド・トランプが株式会社アメリカのCEO（最高経営責任者）に就任した。
トランプ陣営の選挙対策本部長を務め、トランプ政権で首席戦略官兼上級顧問を務めたスティーブン・バノンがとあるブログから影響を受けたとインタビューで答えた。
それだけにとどまらず、そのブログの書き手とは、ホワイトハウスの回線を直接つないでいるとまで。
「ホワイトハウスとの回線を開設し、バノンと側近を通じて（彼と）連絡を取っている。」（原文"opened up a line to the White House, communicating with Bannon and his aides through an intermediary")
その後、「UNQUALIFIED RESERVATIONS（無制限のただし書き）」という不思議な名前のブログが一夜にして瞬く間に有名になったことはいうまでもない。大統領と直接電話回線を繋いでいる謎のブログ、UNQUALIFIED RESERVATIONS（無制限のただし書き）は都市伝説のような熱を帯びながら話題となった。
そのブログの著者は、カーティス・ヤービン（Curtis Yarvin）。
シリコンバレーで、スタートアップ企業を営んでいたエンジニアだ。
このブログにアクセスすると、最初に紹介文が目に入る。
UR（ブログ名）へようこそ
UNQUALIFIED RESERVATIONS（無制限のただし書き）は奇妙なブログです：ブログの目的はあなたの脳を治療することです。私たちはすべてのマトリックスを見てきました。私たちは赤い薬（レッドピル）を知っている。多くはそれを販売していると主張している。 例えば、どこの本屋に行っても、カウンターの人にノーム・チョムスキー（左翼政治活動家）のことを聞くことができます。あなたが手にするのは、（赤の3号に浸した）ブルーピルです。（原文 WELCOME TO UR UNQUALIFIED RESERVATIONS is a strange blog: its goal is to cure your brain. We’ve all seen The Matrix. We know about red pills. Many claim to sell them. You can go, for example, to any bookstore, and ask the guy behind the counter for some Noam Chomsky. What you’ll get is blue pills soaked in Red #3 .）
本物を提供しているので、URはかなりアンチ・チョムスキーです。(ざっくりいうと、どんな論争もUR のスタンスは、チョムスキー（左翼政治活動家）とは正反対の立場になるだろう)。私たちのレッドピルを飲んでみてください。（原文 Since we provide the genuine article, UR is pretty much the anti-Chomsky. (As a broad generalization, UR’s stance in any controversy will be the opposite of Chomsky’s.) Take one of our red pills—heck, split one in half—and you’ll be in a completely different world.）
このブログの趣旨はこうだ。「私たちをむしばんできたリベラル・左翼の価値観であるブルーピルから解放してやる。世界の真実を知ることが出来るレッドピルを提供してやる……」というわけだ。
木澤佐登志は、ヤービンの思想を以下の如く評している。
「ティールの「自由と民主主義はもはや両立しない」というテーゼを、「自由にとって民主主義は悪である」と読み替え、それを徹底的にあるいは愚直なまでに推し進めようとする、といったものであるだろう」（『ニック・ランドと新反動主義』p80）
今回は、そんなヤービンが最初に投稿したブログを翻訳して紹介する。ただ、著者には無断で翻訳したものなので、何か問題があれば、この記事は削除しようと思う。
形式主義者宣言(翻訳)
先日、ガレージをいじっている時に、新たなイデオロギーを作ることにした。
俺は気が狂ってるのか？
まず第一に、イデオロギーを作ることはできない。イデオロギーとは、ラザニアのレシピのように、何世紀にもわたって受け継がれてきたものだ。バーボンのように熟成が必要だ。ラジエーターから直に飲むことはできない。
飲もうとしたらどうなるか見てみろ。世界の問題の原因はイデオロギーだろ。ブッシュとオサマ・ビンラディンの共通点は、二人ともイデオロギーの狂人だ。そんなものをもっと必要としているのか。
さらにいえば、新たなイデオロギーを構築することは単純に不可能だ。少なくとも、イエスが子供だった頃から人々はイデオロギーについて議論してきた。
で、これを改善しろというのか。大学院を落ちこぼれたネットのどこにでもいるような人間がギリシャ語もラテン語も知っていると？。私を誰だと思ってるのか。ウォレス・ショーンか。
ウォレス・ショーンは、アメリカ合衆国の俳優・劇作家。
すべての優れた反論に答えてから、形式主義について話そう。
当然、古くなった伝統的な美しいイデオロギーがいくつか存在するが、それらはインターネットで詳細に紹介されている。それらは様々な名称で呼ばれているが、ここでは進歩主義と保守主義と呼んでおくことにする。
進歩主義に対する私の不満は、少なくとも過去100年間、作家や思想家、そして一般的に賢い人々、インテリの大多数が進歩主義者であったということだ。したがって、2007年の知識人は、インターネット空間の何らかのワープがあって、私の言葉がフォックスニュースで生中継されていない限り、これを読んでいる人は誰でも、基本的に進歩的なイデオロギーに漬け込まれていることになる。
おそらくこれは、進歩的な世界観の中に存在するかもしれない問題を見る能力をわずかに損なうかもしれない。
すべてのイスラム教徒がテロリストというわけではないが、ほとんどのテロリストはイスラム教徒だということと同様に、保守主義に関しては、保守派のすべてがバカというわけではないが、ほとんどのバカは保守派だ。現代のアメリカの保守的な運動は、進歩的な運動よりもずっと若いが、それはルーズベルトの独裁政権の後に再発明されなければならなかったからに他ならず、バカな聴衆の影響を明確に受けている。また、進歩主義が崇拝するすべてのものを蔑ろにしなければならないという選挙上の偶然の一致にも苦しんでいる。
自分を「進歩派」や「保守派」だと思っていない人のほとんどは次の2つのうちの1つだ。"穏健派 "か "リバタリアン "のどちらかだ。
私の経験では、ほとんどの良識ある人々は、自分自身を「穏健派」、「中央主義者」、「独立派」、「非同盟的」、「実利的」、「無政治的」などと考えている。20世紀の政治がもたらした多くの悲劇を考えれば、このような態度をとるのも無理はない。また、私の考えでは、今日の世界の死と破壊のほとんどの原因となってもいる。
だが、穏健はイデオロギーではない。そして、意見でもない。さらに、思想でもない。それは、思考の欠如だ。
2007年の現状が基本的に正しいと信じるならば、タイムマシンで1907年のウィーンにタイムトラベルしたとしても、同じことを信じるべきだ。しかし、もしあなたが1907年のウィーンで、欧州連合があるべきだ、アフリカ人やアラブ人が自国を支配し、ヨーロッパを植民地化するべきだ、議会制民主主義以外のどんな政府形態も悪だ、紙幣はビジネスには良いものだ、すべての医師は国家のために働くべきだ、などと言って回ったとしたら、おそらくあなたに賛同する人たちを見つけることができるだろう。しかし、彼らは自分たちを「穏健派」とは呼ばないだろうし、他の誰もそうは思わないだろう。
1907年のウィーンであなたが穏健派だったとしたら、フランツ・ヨーゼフ1世はパンをスライスした時以来の偉大な存在だと思っていただろう。で、どっちなんだ。ハプスブルク家か。ユーロクラッツか。その違いを分けるのは難しいな。
いい換えれば、穏健、中庸の問題は「中心」が固定されていないことだ。動いてしまう。人は人であり、人は人であるため、人はそれを動かそうとする。これは暴力への誘因となり、私たち形式主義者はこれを避けようとする。これについては、もう少し詳しく説明する。
リバタリアンを残して。私はリバタリアンを死ぬほど愛している。私のCPUには、ミーゼス研究所のソケットが事実上常設されている。マウスを数回クリックするだけで、ヘラジカを溺死させるほどの高度なリバタリアニズムが得られる時代に、意図的にリバタリアン（特にミーゼス＝ロスバーディアン）の思想に無知なままでいることを選んだ人は、知的に真摯な人間ではないと思う。さらに、私はコンピュータ・プログラマーであり、SFを読みすぎたこともあるが、これはリバタリアニズムの二大危険因子だ。だから「ロスバードを読め」と言って、その日は終わりにすることもできる。
一方で、宇宙についての二つの基本的な事実に気づかないわけにはいかない。一つは、リバタリアニズムは極めて明白な考えであるということであり、もう一つは、これまでリバタリアニズムが一度も成功したことがないということだ。
これは何かを証明するものではない。しかし、このことが示唆しているのは、リバタリアニズムは、リバタリアニズムの支持者がいつもすぐに主張するように、本質的に非現実的なイデオロギーであるということである。私はリバタリアン社会に住みたいと思っている。問題は、ここからあそこまでの道のりがあるのかということだ。そして、そこに辿り着いたとしても、そこに留まるのか。両方の質問に対するあなたの答えが明らかに「はい」であるならば、おそらくあなたの「明らかな」定義は私の定義とは違うだろう。
だからこそ、私は自分のイデオロギーである「形式主義」を構築することにしたのだ。
もちろん、形式主義には何も新しいものはない。進歩派、保守派、穏健派、リバタリアンは皆、自分たちの消化されていない現実の大きな塊を認識するだろう。フォーマリズム（形式主義）という言葉でさえ、法的フォーマリズム（法的形式主義）からの借用であり、基本的には、より控えめな装いで同じ考えである。
私はヴィッツィーニではない。私は無名の古本を大量に購入し、それらを粉砕し、風味を加え、その結果を一種の政治的なすり身のように再ブランド化することを恐れていない、ただの男だ。私が言わなければならないことのほとんどすべては、Jouvenel, Kuehnelt-Leddihn, Leoni, Burnham, Nock, などのより良い文章で、より詳細で、はるかに博学なものが入手可能だ。
聞いたことがない人はいないだろうが、私もこの手術を始めるまでは、そうだった。怖いと思うなら、そうすべきだ。自分のイデオロギーを入れ替えるのは、自分で行う脳の手術と似ている。忍耐と寛容さと、痛みに強いことと慎重な作業が必要だ。あなたが誰であろうと、あなたはすでにイデオロギーを持っていて、それから出ていきたければ、自分で出ていけたはずだ。
誰かがそう言ったからといって、他のイデオロギーをインストールするためだけに、この面倒な実験を始めても意味がない。今にわかるように、形式主義は、他のオタクのためにオタクによってデザインされたイデオロギーだ。キットではない。電池もついていない。差し込むこともできない。せいぜい、それはあなた自身のDIYイデオロギーを構築するための大まかな出発点でしかない。テーブルソー、オシロスコープ、オートクレーブでの作業に抵抗があるなら、形式主義はあなたには向いていない。
とは言っても。
フォーマリズムの基本的な考え方は、人間関係の主な問題は暴力であるということだけだ。目標は、非常に限られた大きさの惑星で、人間が暴力なしで相互作用する方法を設計することである。
特に組織的暴力。組織化された人間対人間の暴力の次に、優れた形式主義者は、他のすべての問題（貧困、地球温暖化、モラルの崩壊など）は、基本的に取るに足らないものだと考えている。暴力を取り除けば、モラルの崩壊について少しは心配することができるかもしれないが、組織的な暴力が前世紀に数億人を殺したことを考えると、モラルの崩壊が「アメリカン・アイドル」を生み出したのに対し、優先順位はかなり明確だと思います。
「『アメリカン・アイドル』（American Idol）は、2002年から2016年までの15シーズンにわたりFOXテレビで放送し、2018年からABCネットワークで放送されているアメリカ合衆国のテレビ番組で、全米規模で行なわれるアイドルオーディション番組である。高い人気を誇っており、リアリティ番組と呼ばれる視聴者参加型番組の中でも特に有名なものである。」（wikiより）アメリカン・アイドルは、道徳の堕落・倫理の欠落の象徴として、アメリカ本土で批判されていました。
重要なのは、これを道徳的な問題としてではなく、工学的な問題として見ることだ。問題を解決する解決策は、どんなものでも構わない。問題を解決しない解決策は受け入れられない。
例えば、平和主義という考え方があるが、これは一般的な進歩主義が組み合わさったものの一部で、暴力に対する解決策であると主張している。私が理解しているように、平和主義の考え方は、あなたと私が暴力的になれなければ、他のみんなも暴力的にならないというものだ。
平和主義が有効な場合もあるのは間違いない。例えば北アイルランドでは、平和主義がちょうどいいようだ。しかし、私の直線的で西洋的な心を一貫して理解できない、一種の「百匹目の猿現象」の論理がある。誰もが平和主義者な場合、ある人が平和主義者にならないと決めたら、その人が世界を支配することになるのではないか、ということだ。ふむ。
「百匹目の猿現象（ひゃっぴきめのさるげんしょう、英: Hundredth Monkey Effect）とは、生物学の現象と称して生物学者のライアル・ワトソンが創作した架空の物語である。宮崎県串間市の幸島に棲息するニホンザルの一頭がイモを洗って食べる事を覚え、同行動を取る猿の数が閾値（ワトソンは仮に100匹としている）を超えたときその行動が群れ全体に広がり、さらに場所を隔てた大分県高崎山の猿の群れでも突然この行動が見られるようになったという筋書きであり、このように「ある行動、考えなどが、ある一定数を超えると、これが接触のない同類の仲間にも伝播する」という超常現象の実例とされていた。」（wikiより）
さらに難しいのは、「暴力」の定義がそれほど明白ではないということだ。もし私があなたの財布をそっと渡したら、あなたが拳銃を持って追いかけてきて、「返してくれ」と懇願してきたら、どちらが暴力的でしょうか。私がこういったら、それはあなたの財布だったのに、今は私の財布だと言うでしょうか。
このことは、少なくとも、誰の財布が誰の財布であるかを示すルールが必要であることを示している。暴力とは、ルールを破ったり、別のルールに置き換えたりすることだ。ルールが明確で、誰もがルールに従えば、暴力は必要ない。
つまり、暴力は紛争と不確実性に等しい。世界に財布がある限り、紛争は存在する。しかし、もし私たちが不確実性を取り除くことができれば、誰が財布を手に入れるのかを事前に教えてくれる明確で破られないルールがあれば、私はあなたのポケットにこっそり手を突っ込む理由がないし、あなたは私が空に向かって銃を乱射した後に逃げ出す理由がないのです。私たちの行動のどちらも、定義上、紛争の結果に影響を与えることはできない。
どんな規模の暴力でも、不確実性がなければ意味がない。戦争を考えてみよう。ある軍が戦争に負けることを知っているならば、おそらく無謬の神託に基づいて、戦争する理由がない。なぜ降伏して戦争を終わらせないのか。
しかし、これは我々の困難を増大させているだけだ。これらのルールはどこから来ているのか。誰が破れないようにするのか。誰が神託を得るのか。なぜ、財布は「私のもの」ではなく「あなたのもの」なのか。意見が合わなかったらどうするのか。全ての財布に一つのルールがあるとしたら、どうやって全員が全てのルールを把握するのか。そして、拳銃を持っているのはあなたではなく、私だとする。
幸いなことに、偉大な哲学者たちが長い時間をかけ、これらの問題を熟考してきた。私の答えは彼らのものであり、私のものではない。
まず、ルールを作るための一つの賢明な方法は、あなたがそれに同意した場合にのみ、あなたはルールに縛られる。私たちには、どこかの神々が作ったルールはない。私たちが持っているのは、実際にはルールではなく、合意である。確かに、何かに同意した上で、自分の都合のいいように同意しないのは、下衆野郎の行為であることは間違いない。実際、合意をした時点で、その合意自体に、このような無責任な行為が含まれている可能性が十分にある。
もしあなたが野生の男で、いかなるものにも同意しないならこれでいい。ジャングルかどこかで暮らしてみてはどうだろうか。誰もあなたが自分の通りを歩かせてくれるとは思っていないだろう。ホッキョクグマが悪だという絶対的な道徳原則はないが、ホッキョクグマの存在は現代の都市生活とは相容れない。
ここでは2種類の合意が見られるようになっている。私はあなたの家のペンキ塗りをすることに同意し、あなたは私にお金を払うことに同意する。もう一つは、「道端では誰も殺さない」という合意である。しかし、これらの２つの契約は本当に異なるのだろうか。私はそうは思わない。二番目の協定は道路を所有している人との協定にすぎないと思う。
財布に所有者がいるなら、ストリートにも所有者がいるべきではないのか。財布に所有者がいるのは明らかだが、最終的には誰かがその財布をどうするかを決めなければならない。あなたのポケットに入れるのか、私のポケットに入れるのか。道路はそのままにしておいても、決めなければならないことはたくさんある。誰が道路を舗装するのか、いつ、なぜ舗装するのか。路上で人を殺してもいいのか、それとも人を殺してはいけない特別な通りなのか。露天商はどうするのか。などなど。
明らかに、私が44番街を所有し、あなたが45番街と43番街を所有している場合、私たちの間の複雑な関係の可能性は、不明確になる。複雑さは曖昧さの次は不確実性で、また拳銃が出てくる。だから、現実的には、道路ではなく、より大きな、より明確に定義された単位、ブロック、あるいは都市を所有するという話になるのではないか。
都市を所有する！？
それはとてもクールなことだ。しかし、それでは、私たちが完全に飛ばしてしまった問題に戻ってしまう。どうやって決めるのか。私が街を所有する資格があるのか。私に価値があるのか。私はそう思う。君が財布を持っていれば、私はボルチモアを手に入れられる。
社会正義と呼ばれる考え方を多くの人が信じている。これを書いている時点では、普遍的な考え方だ。それは、地球は小さく、都市のような限られた資源を持っているということだ。しかし、私たちは全員が街を持つことはできないし、道さえも持てないから、平等に分け合う必要がある。なぜなら、私たち人間は皆平等であり、誰よりも平等な人はいないからだ。
社会正義というととてもいい響きだ。しかし、それには3つの問題がある。
一つは、これらの素晴らしいものの多くは、直接比較できないということだ。私がリンゴをもらって、あなたがオレンジをもらったら、私たちは平等なのだろうか。この問題については、拳銃を使って議論することができるかもしれない。
二つ目は、すべての人がすべてを平等にすることから始めたとしても、人は違っていて、ニーズやスキルなども違っていて、所有権という概念は、自分が何かを所有していればそれを他の人に与えることができるということを暗示しているので、すべての人が平等であり続けることはできないということだ。実際には、合意が維持されるシステムと、平等が維持されるシステムを組み合わせることは基本的に不可能である。
これは、もし永久的な平等を強制しようとすれば、おそらく永久的な暴力が起こることが予想されることを教えてくれる。私は「経験的証拠」の大ファンではないが、この予測は現実とかなりよく一致していると思う。
しかし、3つ目の、いわゆる、真の殺人鬼は、実際には、私たちは観念的なユートピアを設計しているわけではないということだ。私たちは現実世界を修復しようとしている。気付いていないかもしれないが、現実の世界は極めて混乱している。多くの場合、誰が何を所有しているのかという明確な合意はないが（パレスチナなど）、世界の良いものの多くは、かなり明確な支配の鎖があるように見える。
もし私たちが財の分配を平等にすることから始めなければならないとしたら、あるいは実際にはこの分配を全く変えることから始めなければならないとしたら、私たちはかなり不必要に自分自身を8つの銃弾の後ろに置いていることになる。私たちは、平和の中に来たと言っている。すべての人が自由で平等であるべきだと信じている。私に腕をまわして、後ろのポケットにしこりを感じるか。そうだ、それがお前が思っているものだ。弾は入ってる。それを必要としている人を知っているから、街、財布、リンゴ、オレンジを渡してくれ。
形式主義の目的は、この不快な回り道を避けることだ。形式主義では、「誰が何を持っているのかを正確に把握して、その人に派手な証明書を渡そう」という。誰が何を持つべきかという話はやめよう。なぜなら、好むと好まざるとにかかわらず、これは単に暴力を増やすためのレシピだからだ。パレスチナ人がハイファを取り戻す理由を説明するルールを思いつくのは非常に難しいし、ウェールズ人がロンドンを取り戻す理由も説明できない。
これはリバタリアニズムに似ているように聞こえるかもしれない。しかし、大きな違いがある。
リバタリアンはウェールズ人がロンドンを取り戻すべきだと思うかもしれない。あるいはそうではないかもしれない。この点でロスバードを解釈できるかどうか、私にはまだ自信がないが、これまで見てきたように、それ自体が問題だ。
しかし、すべてのリバタリアンが信じていることが一つあるとすれば、それはアメリカ人がアメリカを取り戻すべきだということだ。換言すれば、リバタリアン（少なくとも本当のリバタリアン）は、アメリカは基本的には違法で簒奪する権力者であり、税金は窃盗であり、自分たちは基本的に毛皮を被った動物として扱われていると信じている。
優れた形式主義者には、このようなことはない。
なぜなら、形式主義者にとっては、北米大陸の49度線とリオグランデ川、AKとHIなどの間で何が起こるかをアメリカが決めることができるという事実は、その領土を所有しているのはアメリカであるということを意味しているからだ。そして、アメリカが前述の毛皮を被ったクリッター達から定期的な支払いを引き出すという事実は、その権利を所有しているということ以上の意味はない。これらの土地を取得するための様々な策略や擬似的な合法性は、全て歴史に過ぎない。重要なのは、それが今持っていて、それを手放したくないということだ。あなたが私に財布を渡すのと同じように。
だから、給料の一部を差し出す責任があるとすれば、あなたは奴隷になる。
正確にいうと、アメリカはただの企業なのだから、企業の奴隷なのだ。つまり、個人のグループが、ある結果を達成するために集団で行動することに同意する形式的な構造なのだ。
だから何だ。私は会社の奴隷だということだ。そんなに恐ろしいことなのか。慣れているように見える。週のうち２日は、スヌート・スヌート卿のために働く。それか、顔のないグローバル製品か。誰でもいい。小切手が誰に書かれているかは問題じゃないのか。
現代の「民間」企業と「政府」の区別は、実はかなり最近のことだ。確かに、米国は米国が独自のセキュリティを管理しているという点で、例えばマイクロソフトとは異なる。一方で、マイクロソフトのセキュリティのほとんどが米国に依存しているように、米国はソフトウェアのほとんどをマイクロソフトに依存している。このことが、これらの企業の一方を特別なものにし、他方を特別なものではないものにする理由としては明白ではない。
もちろん、マイクロソフトの目的はソフトウェアを作ることではなく、株主のためにお金を稼ぐことだ。アメリカ癌協会も企業であり、癌を治すことを目的としている。私はマイクロソフトのいわゆる「ソフトウェア」のせいで多くの仕事を失ったし、率直に言って、その際の在庫はどこにも行き場所がない。そして、今でも癌は存在しているようだ。
もし、MSFTやACSのCEOがこれを読んでいる場合は、私はあなた方へのメッセージを持っていない。あなた方が何をしようとしているのか知っているか。あなたが何をしようとしているのか知っているあなたの部下は、おそらく彼らのできる限りの範囲で、良い仕事をしていることだろう。そうでなければ、クビにしろ。
しかし、アメリカの目的はさっぱりわからない。
運営していると思われる人物がいると聞いたことがある。しかし、彼は自分の従業員を解雇することさえできないようだが、それはおそらくいいことだ。彼はジャック・ウェルチとは違うらしいからな。実際、2004年にケリーではなくブッシュが当選したことで、北米で起きた重大な出来事をご存知の方がいらっしゃれば、ぜひ教えていただきたいと思います。私の印象では、基本的に大統領は、天の主権者である天皇が日本の行動に影響を与えるのと同じくらいアメリカの行動に影響を与えていると思うからだ。つまり、ほとんど何も影響はないということだ。
明らかに、アメリカは存在する。明らかに、アメリカは何かをしている。しかし、アメリカが何をしようとしているのかを決定する方法は非常に不透明であり、国政外の誰もが関心を持つ限り、牛のはらわたを調べるのと同じかもしれない。
つまり、これは形式主義者のマニフェストである。アメリカは、何世代にもわたって私たちに託された神秘的な信託ではない。私たちの希望と恐れの貯蔵庫でもなければ、良心の声や正義の仇となる剣でもない。膨大な資産の山を抱え、それをどうしようとしているのか明確な見当もつかず、5ガロンのバケツの中の10ガロンのサメのように、バジリオンのエラのそれぞれから赤いインクが噴き出している、ただの古い巨大な会社なのだ。
形式主義者にとって、アメリカを治療する方法は、古代の神秘的なワサビや企業の祈りや戦争賛歌を捨てて、この怪物の所有者を見つけ出して、リストラや清算を含むすべての選択肢がテーブル上にあるべきだというのは、あまりにも狂っているとは思わない。
アメリカのことであれ、ボルチモアのことであれ、あなたの財布のことであれ、形式主義者は、所有権と支配権が一体となっているときだけが幸せなのだ。したがって、改革するためには、米国で誰が実際に権力を握っているのかを把握し、この分布を可能な限り忠実に再現するような方法で株式を割り当てる必要がある。
もちろん、神秘的なワサビを信じている人ならば、国民全員に一株ずつ配分すべきだというだろう。しかし、これはアメリカの実際の権力構造を見る上で、かなり星のような目で見ている。我々の目的は、誰が何を持つべきかではなく、誰が何を持っているかを把握することだということを忘れてはならない。
例えば、ニューヨーク・タイムズが我々の改革案に賛同してくれるとしたら、その可能性はかなり高くなるだろう。これはニューヨーク・タイムズがかなりの力を持っていることを示唆しているので、かなりの数の株を手に入れるべきだということだ。
だが、待ってくれ。質問に答えていない。アメリカの目的は何か。説明のためだけに、ニューヨーク・タイムズにすべての株を与えたとしよう。"パンチ "サルツバーガーは輝く新天地で、何をするのでしょうか。
サルツバーガーを含め、おそらく多くの人は、アメリカを慈善事業と考えているようだ。アメリカ癌協会のように、より広い使命を持っている。おそらくアメリカの目的は、単に世界で良いことをすることなのだろう。
これは非常に理解しやすい視点だ。確かに、もし世界に悪いことが残っていたら、水爆と国旗と2億5千万人の奴隷を持つ巨大重装備のメガチャリティーによって打ち負かすことができるだろう。実際、この偉大な慈善団体の莫大な寄付金を考慮すると、この団体があまり良いことをしていないように思えるは、むしろ驚くべきことだ。
おそらくこれは、1830年代から予算のバランスが取れていないほど効率的に運営されているという事実と関係があるのだろう。もしかしたら、アメリカを改革して、実際のビジネスのように運営し、大規模な別個の慈善団体に分けて、それぞれが実際の特定の目的のために特定の憲章を持っていると思われるようにすれば、もっと良いことが起こるかもしれない。
もちろん、アメリカには資産があるだけではない。悲しいことに、借金もある。国庫短期証券のような負債のいくつかは、すでに非常に形式化されている。他にも、社会保障やメディケアのようなものは、非公式で政治的な不確実性の影響を受けている。これらの債務が改革された場合、その受給者は恩恵を受けることしかできない。もちろん、これらの義務は交渉可能な手段となり、例えば売却することもできるだろう。おそらく、亀裂と引き換えに。このように、正規化を行うには、財産と慈善を区別する必要がある。
これだけでは、アメリカのような国民国家は役に立つのか、という疑問に答えることができない。もしアメリカを改革した場合、その疑問はその株主に委ねられることになるだろう。おそらく、都市は独立して所有し、運営されているときに最もうまく機能するのだろう。もしそうであれば、独立した企業として分社化されるべきだろう。
シンガポール、香港、ドバイのような成功した都市国家の存在は、確かにこの質問に対する答えを示唆している。何と呼ぼうと、これらの都市国家はその繁栄と政治の不在が際立っている。実際、これらの都市国家をより安定的で安全なものにする唯一の方法は、事実上の同族所有（シンガポールやドバイ）や子会社（香港）から、匿名の公的所有に転換し、政治的暴力が発生する長期的なリスクを排除することであろう。
確かに、これらの都市国家に民主主義がないからといって、ナチス・ドイツやソビエト連邦に匹敵するものではない。彼らが維持している個人の自由に対する制限は、主に民主主義の発展を妨げることを目的としているように見えるが、これは人民による統治の歴史を考えると、理解できる懸念である。実際、第三帝国も共産主義世界も、しばしば民主主義の真の精神を代表していると主張していた。
特にドバイが示すように、政府は（他の企業と同様に）顧客を所有していなくても、また顧客に所有されていなくても、優れた顧客サービスを提供することができる。ドバイの住民のほとんどは市民ですらない。もしシェイク・アル・マクトゥームが、彼らを全員押収して鎖に繋ぎ、塩鉱で働かせるという狡猾な計画を持っているとしたら、彼は非常に狡猾な方法でそれを行っていることになる。
ドバイは、場所としては、お勧めできるものがほぼない。天候は最悪だし、観光地も存在しないし、近所までも最悪だ。何もないところにある小さな町で、周りは高速遠心分離機との親和性が疑わしいアラー狂人に囲まれている。それにもかかわらず、世界の4分の1のクレーンを持ち、雑草のごとくに成長している。もしマクトゥームにボルチモアを運営させたら、何が起こるだろうか。
形式主義の一つの結論は、19世紀以前のほとんどの作家が同意していたように、民主主義は非効率的で破壊的な政府システムであるということである。政治を抜きにした民主主義という概念は全く意味をなさないし、これまで見てきたように、政治と戦争は連続体である。民主主義政治は、ある種の象徴的な暴力として最もよく理解されているが、例えば、軍隊の数で勝敗を決めるようなものだ。
形式主義者は、第二次世界大戦後のヨーロッパ、日本、アメリカの成功を民主主義のせいではなく、民主主義の不在のせいだとしている。ローマ帝国が元老院を保持していたように、民主主義の象徴的な構造を保持する一方で、戦後の欧米のシステムは、ほとんどすべての実際の意思決定権を、「無政治」で「非党派」、つまり非民主的な公務員や裁判官に割り当てている。
外部からの効果的な管理がない場合、これらの市民サービスは多かれ少なかれ自らを自らで管理しているため、管理されていない企業と同様に、しばしば存在し、自らを拡大するために存在し、拡大しているように見える。しかし、国民の法廷が実際の権力を持っているときには、必ず発生する戦利品制度を避けることができる。そして、彼らは、法の体裁を維持するための合理的な仕事を、ほとんど恒星のようなものではないにしてもやっている。
いい換えれば、「民主主義」が機能しているように見えるのは、実際には民主主義ではなく、形式主義の劣った実装だからだ。このような象徴と現実の関係は、法のないイラクで、気が滅入るようなテストを受けている。しかし、我々は民主主義の最も純粋で最もエレガントな形（比例代表制）と、実際に彼らの省庁を運営しているかのようにみえる大臣に恵まれている。
歴史は対照実験を行わないが、イラクとドバイの比較は、民主主義よりも形式主義の方が優れていることを示している。
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