経済政策で人は死ぬか?に込められたもの
印象的な導入がありました。
一般的に、不況は健康に悪いと考えられている。不況によってうつ病、自殺、アルコール依存症、うつ病など、数多くの健康問題が生じると思われている。だがこれも正しくない。
正しくない?
例えばスウェーデンでは、1990年代の不況(金融危機)でも健康状態が改善する事例もあったという。
本当に人と経済を「不健康にさせる」のは経済政策である、というお話。
1.無謀な緊縮政策
不況だから、医療、失業対策、住宅支援など福祉予算を減らさなきゃ!
と判断して急な舵をきった国は自殺率、失業率、アルコール依存症などが増加、その結果、経済回復に時間がかかることがデータで示されている。
例としてロシア(ソ連崩壊)、ギリシャ、インドネシア(アジア通貨危機)などが緊縮財政をとった国。
ロシアは市場経済の急な導入、ギリシャとインドネシアは、IMFからお金を借りるための条件として、「緊縮せよ」との指示に従った結果であった。
例えば、ギリシャで新卒の未就職率が19%から40%へ、乳幼児死亡率が2008年から3年間で40%増加など。
「就職できない、病院に行けない、年金がもらえない、家がなくなる」といった問題から政府が目を逸らしたとき、人は不健康になる。不健康で働けない。経済の回復が結局遅くなる。本末転倒なことが実際に起こっていた。
2.健康と経済を維持した事例は?
特筆されているのがアイスランド。
医療、食糧費補助、住宅支援、再就職の支援などの制度を維持。
すると2007年〜2010年のひどい不況時も死亡率が下がり続けた。
さらに、貧困世帯の割合があまり変わらず、2012年には経済成長率が3%を記録、失業率も5%を切ったそう。
アイスランドのほか、フィンランドやスウェーデンも
失業者への手厚い就労支援など、社会保護政策を維持したことで、結果的に労働力が市場に供給されて、経済の悪化を最小限にとどめている。
ここで難しいのは、福祉が民間のみではなりたたない事例も挙げられていること。例えばアメリカの医療を民間に委ねていたケースでは、高くて病院に行けない人、儲けに走る医療判断が起こることなどが示されている。
財政が苦しい・色んな要求があるなか、重きを置くべき英断が求められる。
3.高度な組織でも判断を間違う
とても印象的だったのは、IMFからお金を借りるために指示に従って不幸になるというパターン。
IMFは本来、金融危機になった国を融資で助けるはずの組織。日本銀行の総裁も出席する、きっとすごく頭が良くて、偉い人たちが組織している。
だけど助けを求める国には「福祉予算を削減しなさい、さもなくば融資はしません」といった圧力がかかることが本に示されている。
半沢直樹から学んだにわか知識でも、この圧力はきっとものすごいんだろうなと思いつつ。
前ならえ右ならえの判断をした政府は、結果的に国民の健康を阻害して、経済の回復を遅らせている。
「すごい組織が言うことだから」「周りがそうしているから」という判断がいかに危険なことかを思い知らされます。自分にとって大切なこと、考えない・流されて判断することは結果的に人のせいにもしてしまう。
4.江戸時代に学ぶ日本
そんな国々を見ていると日本はものすごく恵まれた環境にあると思われます。不況時に何も政策がない国が多く存在する。
そんな日本も過去、江戸末期における飢饉のなか、600ほどの村を再生させた二宮金次郎さんの「報徳仕法」がとても良い事例で勉強になりました。
普段から蓄えをつくり、飢饉のときにしっかり生活の下支えにする。
きっと不況時の答えはこうした歴史が教えてくれていて、今はもっと複雑かもしれないけど、やるべきことは同じではないかと思います。
日頃は余計な支出を抑え、あるべきとき、原因を分析してドンと使う。
そんな柔軟で緩急のある経営判断を持つ。そして何より健康が一番大切なんですね。
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