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関西空港 幻の計画を調べる⑤

  ここまで関空建設予定地決定までの流れと、その主要な立地案について書いてきました。今回はすこし道を逸れて初期段階で脱落した案にも触れたいと思います。いずれの計画も昭和40年代前半に検討されたものの、航空審議会での最終的な建設候補地からは漏れたものとなります。

岡山県 錦海湾案
 錦海湾は現在の岡山県瀬戸内市にある干拓地です。この地域にはかつて約500ヘクタール近い巨大な塩田がありましたが、昭和30年代に製塩法の変化とともに塩田閉鎖が決定的となり、この跡地利用を兼ねて関西新空港立地の提案がなされました。塩田跡と周辺の埋め立てにより、合計1700ヘクタールの土地を創出、4000メートルの滑走路2本と2000メートルの滑走路を整備する計画です。
 周辺には浅瀬が広がっており埋め立ての費用は他の候補地に比べて低く、製造業の立地も望み薄な広大な塩田跡の活用ができるため、自治体からすればメリットのある候補でした。しかしながら周辺に住居や施設が存在し、公害問題の面では完全な海上空港に比べると厳しいものがあったようです。

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 そして何よりもこの計画の問題点が京阪神地域からの遠さです。大阪からでは直線距離でも120km以上、すでにルート認可済みであった山陽新幹線からも離れ、駅設置によるアクセスの改善も見込めません。仮に高速道路延伸、新幹線の支線建設など行ったとしても大阪から道路交通で約二時間弱、新幹線でも新大阪から約一時間とアクセス面でかなり厳しい評価を受けることになっていたことは容易に想像ができます。あれだけ遠いといわれる成田空港でも都心から約50km程度ですから、世界的に類を見ない"遠い"空港になっていたことでしょう。


兵庫県 明石沖案
 この案は兵庫県明石市と播磨町との間にある浅瀬に人工島を作り、そこに空港を置くものです。日本埋立協会なる団体からの発案とのことですが、地方自治体が具体的な検討を行った形跡もなく、他の案に比べると大まかな計画しかわかりません。(下の地図は大阪市の資料を基にしたものです。)
 新幹線と山陽本線の交差部分となる西明石駅に近く、また山陽電鉄も空港予定地の近くに沿うように走っています。大阪から直線距離で55km、神戸からも25km、新快速のような速い空港アクセス列車があれば現在の泉州沖に比べてアクセスは良かったかもしれません。ただ当時はそのようには受け止められていなかったようで・・

明石は浅瀬で一番いいんだが、やはり大阪から遠すぎる。四つ候補地を比較してぼくらも言ったんだが、時間が一時間以上もかかるようではちょっと遠すぎはしないか。世界中の空港を見ても一時間以内じゃないか、という話になっていた。--関経連名誉会長  芦原義重氏
           時代を拓く!関西国際空港 昭和62年 塩川正十郎著

 すでに周辺地域の宅地化が進んでおり、騒音面での懸念は残ります。さらに播磨臨海工業地帯の中にあるため、工場の煙突などが超音速旅客機の低い進入角度に干渉することも想定をされていたそうです。

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 この空港島から淡路島に架橋するといった案もあり、もう少し具体的な検討を行ってもよかったのではないかと素人ながらに思いますが、結局表舞台に出ることなく明石案は消えていきました。

 次回はこの他に候補となっていた阪和府県境案、大阪湾内案について書いてみます。

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