希望は細部に

中上健次の正面に大石誠之助の墓石が屹立している。
歓喜と嘆息が私の心で交錯した。

相応しい。感動したって良い設定だが、器用な頭が考えたのか、それとも中上健次の生前の意志かあったのか。
どちらにしても居心地の悪さが残った。ふたりは時代も職業も方法論も異なるが超えようとした壁は同じである。

市内には佐藤春夫の記念館もある。

私は日本浪曼派に関心がある。それでも現地では極力意識するのを避けた。

中上健次の文章の分からなさを「稚拙」と勘違いして批判したジェイム・ジョイスの翻訳者がいた。

透明で簡単明瞭に理解できる言動に警鐘を鳴らすことが天賦の才のなすべきことではないのか。

小説家がなすべきことは伝言ゲームではない。