【エッセイ】能ない鴉と寝て過す

鼻水を袖で拭いズボンに擦付ける
真昼の小春日和
ただ命が公園のベンチで寛ぐ
急降下した鴉が脳天を狙う
嘴が頭皮に最接近したところで静止する
羽根を激しく羽ばたくがバサバサと足掻くだけ
人差し指と親指で鴉の動きを制したのは先ほどの鼻水
腕の角度を絶妙に制御して爪の攻撃をも避ける

手首を少し傾けると「ピキッ」と嘴が根元から割れた
地面に落ちた鴉は平衡感覚を失い立つことができない
離陸もできない
鼻水は頭に手を遣り嘴の被害がないのを確かめる
頭皮は無事だったが
限りなく臭い糞が鴉の反撃だった
嘴と糞は「判定勝ち」と小さな満足感を味わう