クロロvsヒソカ戦 長老を含めた共闘説の考察

※この記事はネタバレを含んでいます。


単独説の考察についてはこちら

はじめに

この記事では流星街の長老(以下長老)がクロロ対ヒソカ戦にどのように加わっていたのか、そこに焦点を絞って考察しています。

前回の記事では「共闘説では読者の解釈に幅がありすぎて考察は難しい」と結論づけました。ただ状況証拠的に共闘している可能性は非常に高い。そこで旅団員の能力や戦闘での立ち回りような不確定な要素は一旦脇に置いておいて、比較的能力が明らかになっている長老について考えてみることにしました。この戦闘を改めて捉え直したらどんな発見があるか、それをみていくのがねらいです。


第1章 サンアンドムーンの解釈



まず考察しやすいようにクロロの制約及びサンアンドムーンの能力についていくつか条件を用意します。


・前提1

クロロはダブルフェイス(以下栞)の使用中「嘘」をつけない

→この前提がないと戦闘中クロロはスキルハンター(以下本)にある能力をいくらでも使用できるようになってしまうため考察に収拾がつかなくなります。よって必須です。
ただこの前提だと記事のねらいである長老ありの共闘説が成立しないため…


・前提2

本に栞を挟んでいない時は「嘘をつけない」という制約の影響をうけない

『HUNTER×HUNTER』34巻 冨樫義博 集英社

(↑死後強まる念の話をする時栞を外している)

→ 栞を外している間は虚実ないまぜの情報をヒソカに提供できる、という解釈です。
この制約回避方法なら長老生存ルートを確保できます。
この前提の上では長老は生きているので死後強まる念はなくなります。
すなわち’サンアンドムーンのプロテクト効果はないもの’と解釈します。
これらの前提をふまえて長老ありの共闘説を言い換えると…

サンアンドムーンの刻印にプロテクト効果がない場合、この戦闘は成り立つのか?

という疑問への考察になります。


第2章 長老ありの共闘説は成立する



長老ありの共闘説(以下単に共闘説)を考察するにしても、実際長老の仕事は爆弾人形を作るだけなので、どのように共闘したかの想像はある程度つきそうです。
そのためいつクロロから能力を返却されたのか、を見ていく方が重要でしょう。

では長老はどの場面から戦闘に参加していたのでしょうか?手がかりになるのは以下のシーン

『HUNTER×HUNTER』34巻 冨樫義博 集英社

(↑この章で何度も言及するシーンなので'場面A'とします)

ヒソカが観客に紛れているクロロを見つけた場面です。

このシーンから共闘していたことはほぼ確実となります。

なぜなら場面Aが成立するためには、本の中にサンアンドムーンかギャラリーフェイクは必ず残っていなければならないからです。

もしもどちらの能力も返していれば、コピー(と爆弾)人形を共闘者に作らせつつ、クロロはコンバートハンズで別人になり悠々とスタンプを押していけばいいだけです。
なのにそうしていない、ということはどちらかの能力は本の中に残っていなければおかしい、と推測できるわけです。

"かといってコピーを早々に切り上げてBの"転校生"を発動されるとマズイ!!
この騒動の中別人になったクロロを発見するのは極めて困難だ…♠︎"

『HUNTER×HUNTER』34巻 冨樫義博 集英社

(↑セリフ通りの状況を作れるはず)


さらにいうと、場面Aの時点で本の中にサンアンドムーンが残っていた場合長老ありの共闘説自体が不成立となります。
サンアンドムーンを発動していたとするとクロロの行動に矛盾が生じるためです。
以下3パターンに分けて考えていきます。


⚪︎パターン1:サンアンドムーンとギャラリーフェイク、どちらも本に残っている

この共闘説ではクロロがサンアンドムーンを発動させてもプロテクト効果がないため(前提2)、コピー人形はコンバートハンズの両手を使った時点で消えてしまいます。
さらにヒソカが手に持つコピー人形の首も消えることになるため状況的にも矛盾します。

『HUNTER×HUNTER』34巻 冨樫義博 集英社

(↑長老が生きていて、かつどちらの能力も本の中に残っているなら、人形は消えていないとおかしい)

⚪︎パターン2:本の中にサンアンドムーンが残っている(コルトピに能力を返却)

もし場面Aの時点でコルトピに能力を返却していた場合、おそらく長老ありの共闘説は成立しません。
場面Aでヒソカに見つかったとき、クロロはなんの能力を発動していたのか考えてみます。
パターン2ではコルトピにギャラリーフェイクを返却しているのでオーダースタンプかサンアンドムーンを発動していることになりますね。
またクロロの動作に注目すると、時計周りに動いています。この点から見てもギャラリーフェイクは使っていないでしょう(コピー人形は右手側にできるためクロロは反時計回りに動く)。
ヒソカは"前の人形にスタンプを押すため"と分析していましたが、それが真ならオーダースタンプを発動していることになりますが、どうなんでしょうか。
もしコルトピに能力を返却してコピー人形のみの製造に専念するならば、クロロはコンバートハンズ左手で誰かに変装して、オーダースタンプで人形にスタンプを押していけばいいはずです(先に引用したヒソカのセリフ)。
しかし結果としてクロロはヒソカに見つかっています。よってパターン2の元ではオーダースタンプを発動させている可能性は低い。
そのため消去法でクロロはサンアンドムーンを発動させていることになります。
しかしこの長老ありの共闘説ではサンアンドムーンにプロテクト効果がないため、場面Aでサンアンドムーンを発動させる意味が全くありません
よって場面Aまでにクロロがコルトピと共闘していた場合、長老ありの共闘説は矛盾が生じるため成立しません。

⚪︎パターン3:本の中にギャラリーフェイクが残っている(長老に能力を返却)
以下の仮定があれば、場面Aの説明はつきます。

仮定
クロロが作ったコピー人形に長老が刻印した場合、長老が能力を発動し続けている間はクロロがギャラリーフェイクを解除しても人形は残り続ける

ようは長老が能力を発動し続けているうちは「死後強まる念」と似たような状況を作れる、という解釈です。
この仮定がないとパターン1と同様、コンバートハンズ(両手)を発動した時にコピー人形が消えてしまいます。
この共闘説ではサンアンドムーンにプロテクト効果がないので、人形を残すためには何らかの工夫が必要になるでしょう。

おそらくサンアンドムーンは、初めてコピー人形がヒソカの前に現れた時には返却されていたと思います。

場面Aまで人形を残し続けるためには、コルトピに人形を作ってもらうか、長老に刻印を押してもらわなければ(パターン3の仮定の元)人形を維持できないためです。
また長老は場面Aまでに対象の人形(ヒソカが手に持った人形の頭部の胴体)に刻印を押すのは難しいでしょう。
ヒソカは序〜中盤の戦闘を闘技場で行っています。
長老が胴体に刻印を押せるのは、おそらくヒソカが偽クロロを追走している時くらいだと思います。

『HUNTER×HUNTER』34巻 冨樫義博 集英社

(↑長老ありの共闘説では、この時点でサンアンドムーンの能力は返却されている)

またクロロが胴体に刻印を押したシーンは刻印を押す"フリ"をしていたということになります。

『HUNTER×HUNTER』34巻 冨樫義博 集英社


まとめると長老ありの共闘説、すなわち「サンアンドムーンにプロテクト効果のない共闘」では、コピー人形を維持するためには戦闘序盤に長老が参加していなければ後の状況が成立しません。
よってクロロ陣営は最初のコピー人形達を作った段階で共闘していたことになります。

ここまで読んで気づいた方もいるかもしれませんが、長老ありの共闘説はかなり無茶な展開をしています。
例えば一章の前提2'栞を外した時は嘘をつける'を許すならクロロは栞を外している間はスキルハンターを使い放題になるため、この考察の根幹である前提1'栞を使っている時は嘘をつけない'を脅かしかねません。
前提1がなければこの戦闘の解釈は大袈裟にいえばスキルハンターのページの数だけあることになってしまいます。
この問題から'ダブルフェスを発動させている間は紹介した能力しか使えない'のような隠れた前提と、さらにプロテクト効果のないサンアンドムーンに仮定も設けて考察しています。
それほどに長老ありの共闘説を成立させるのは難しいのですが、この戦闘における解釈の最大値をとるためには長老は含めなければなりません。

3章 旅団達の役割



・マチとコルトピ
まずマチについてですが、彼女の最大の役割は念糸による会場の封鎖だったのではないかと思っています。
観客が扉の前で詰まって団子状になっていたり、ヒソカの"思ったほど逃げていないな…"というセリフや200体のコピー人形がヒソカに襲いかかる見開きのページで扉が全て閉じていたりなど、マチの会場封鎖を匂わせるような描写はあります。

さらに会場の封鎖は観客を逃がさないだけでなく、外から誰も入らせない、という利点もあります。
クロロ陣営の対ヒソカ戦略が長期戦なのだとしたら、ヒソカが想定した事態は当然クロロ達も把握していたはずです。

"あと10分もすれば大量の救急隊員と警備員がやって来る…!
それまでに決着をつけないとせっかく待機させている人形までケガ人扱いされて運び出されてしまう恐れがあるから♣︎"

『HUNTER×HUNTER』34巻 冨樫義博 集英社


マチが扉(プルハンドルの部分?)を念糸で封鎖していれば10分以上でも戦える状況は用意できるでしょう。またヒソカが会場から逃げ出そうとした時の足止めの役割も果たせそうです。

次にコルトピですが、いつ共闘していたか以外はさほど考察することはないように思います。

ただ「200体と爆破役の人形」(便宜上合計250体)はコルトピのコピー能力の上限数なのでしょうか?

シャルナークは"200体の〜"と明確な数字を言っていました。前回の記事では「戦闘後会場に残った観客達は使用されずに残ったコピー人形」としています。
それも合わせると優に300体以上の人形が会場にいたことになってシャルナークの説明と数があいません。

おそらく250体はオーダースタンプの操作上限の数なのでしょう。


・シャルナークとかいう特異点
他のキャラに比べてシャルナークの解釈は多様です。
ブラックボイスの音声操作のシーンや彼とクロロの戦闘後のやりとりなど、辻褄を合わせようとするとどこかがズレる…

共闘説の解釈が難しいのは結局彼の能力や共闘時の役割が全く見えてこないから、だと思います。

直感的な解釈としては「ケータイのスペアがあ
る」というものですが、それならアンテナの予備もあって良さそうです。
それにヒソカとの遭遇時にスペアを見せていないのも変な気もします(ケータイを投げ捨てる=能力をなくす、というメタファーともとれる)。
ケータイや能力を戦闘中に何度も貸し借りした、というのも妥当な気はします。

ようはシャルナークは情報がなさすぎて考察のしようがないのです。

それでも場面Aのような重要なシーンに絡んでいるため、ブラックボイスを起点にどんどん共闘説の解釈の複雑さが増していってしまいます。

しかもシャルナークは作品から退場してしまっているので、この戦闘でのシャルナークの真相に触れる機会はほぼないのかもしれません。

おそらくクロロはアンテナはを2本以上持っていたと仮定しても問題はないかもしれません。
戦闘後のシャルナークはアンテナを喪失したにもかかわらず、ケータイは"使う予定はない"と答えていました。
もし元々アンテナが2本しかないのなら能力自体が使えなくなるはずなので、シャルナークの対応は落ち着きすぎています。
おそらくケータイは換えが利かないとしても、アンテナはいつ喪失してもいいようにストックしていたり、補充できる手段があるのでしょう。
またアンテナを"いつも2本持っている"のはあくまでシャルナークのスタイルなので、別にクロロが従う理由はありません。
クロロがアンテナを2本以上戦闘で使用していたと仮定すると、前回の記事で触れたマチのサポートが必要なくなるので、むしろ単独説が強化されます。


・ヒソカの価値は
前提1‘栞を使っている時は嘘をつけない’を念頭に置いてこの戦闘を読むと面白いやりとりがあります。
“晒したカードで戦うよ”というクロロのセリフですが、彼はこの時点では、ブラックボイス、サンアンドムーン、ダブルフェイスの3つの能力しか見せて(紹介して)いません。

もしヒソカがクロロのその後の講釈を聞かずに戦闘に突入していたらどうなっていたのでしょうか?

その状況では前提1の元クロロはこの3つの能力でヒソカと戦わなければなりません。

このIFから考えるに、クロロはヒソカをかなり高く評価していたのではないか、と思います。

そもそもダブルフェイス+ブラックボイスの組み合わせだけでも、旅団戦闘員クラスに操作系能力が加わるようなもので作中屈指の強キャラですよね。
そこにサンアンドムーンまであるわけです。

おそらくあの状況下では、クロロはこれらの能力こそヒソカと一対一で対峙する上で自衛できる最良の組み合わせだと考えていたのかもしれません。

この能力のラインナップこそがヒソカの価値なのだと思います。

ただし、もしこのケースの一対一で事態が膠着したら少し大変そうです。
クロロは栞を使っている間は嘘がつけないため本の中のギャラリーフェイクもオーダースタンプもコンバートハンズも使えません。何らかの方法で能力を返却するか、オーダースタンプや他の能力を使うためにダブルフェイスそのものを解除して共闘していたかもしれません。


おわりに


共闘説、単独説をコインの裏表のような二元的なものではなく、線のように一元的に捉えてみるアプローチをしつつ、その線の両端の点の部分にあたる'条件付きの両説'を自分なりに考察してみました。

もしも今まで書いた記事に反証があって、しかもそれが妥当なものなら旅団のみの共闘がほぼ確定します。

しかも'共闘説の考察=シャルナークの解釈'と私はみなしているので、たくさんあるうちのたったひとつの能力、ブラックボイスさえ考察すればクロロや旅団達の立ち回りなどおおよその解釈が一意に定まっていくのではないかと思います。

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