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振り子は必ず揺り戻す

山口アーツ&クラフツ2024に行ってきました。

山口アーツ&クラフツは、山口在住のクラフトアーティストを中心に2006年から継続的に開催されている老舗イベントです。毎年この時期になると150組以上のクラフト、アート作家が全国から山口市へ集まります。

量販店はお目にかかれない、独特の個性を持ったモノたちと出会える機会として、毎年とても楽しみにしています。

今年の戦利品のひとつ。信楽焼のたぬきの概念。

アーツ&クラフツのルーツであるデザイン運動

アーツ&クラフツのルーツとなっているアーツ・アンド・クラフツ運動(Arts and Crafts Movement)は、イギリスの詩人、思想家、デザイナーであるウィリアム・モリスが主導したデザイン運動です。

ヴィクトリア朝の時代、産業革命の結果として大量生産による安価な、しかし粗悪な商品があふれていました。モリスはこうした状況を批判して、中世の手仕事に還り、生活と芸術を一致させることを主張しました。

その思想は世界に大きな刺激を与え、アール・ヌーヴォー、ウィーン分離派、ユーゲント・シュティールなど、各国の美術運動が影響を受けました。

日本の柳宗悦らもモリスの運動に共感し、手仕事によって生み出された日常づかいの雑器に美を見出そうとする、民藝運動を展開しました。

民藝運動は、日本各地の焼き物、染織、漆器、木竹工など、ファインアートでもなく高価な古美術品でもない、無名の職人による民衆的美術工芸の美を発掘し、世に紹介することに努めました。

山口アーツ&クラフツは、手仕事の良さを反映した実用性を伴う優れたデザインの生活工芸品=クラフト、アートを日常生活に応える芸術として提案する活動として、21世紀の民芸運動とも言えそうです。

偏重には必ずカウンター運動が起きる

産業革命へのカウンターとしてアーツ・アンド・クラフツ運動が生まれたように、なにかが極端に振れたときには、反動で真逆の運動が起きます。

このことを、物理の法則に例えて振り子の揺り戻しと呼びます。

一度ある方向へ大きく変動したものが、また元の方向にもどること。

揺り戻し(コトバンク)

近年見られた大きな揺り戻しは、オンライン化からのオフライン回帰です。コロナ禍で非接触コミュニケーションの手法として、オンライン飲み会や配信ライブが一気に普及しました。

オンラインでカジュアルに消費されるイベントが増える一方で、昨年頃から現地に行かないと体験できないことを売りにするオフラインイベントも増えてきました。

揺り戻しはどちらか一方へ振り切るのではなく、それぞれの間を行ったり来たりして、相反する価値観が拮抗します。

どちらの価値観に合わせるのが適切かは、ケースバイケースです。

生成AI偏重からの揺り戻しとどう向き合うか?

2024年以降に注目すべきは、生成AI偏重からの揺り戻しです。

令和の時代、生成AI革命の結果として大量生産による安価な、しかし粗悪なクリエイティブがあふれています。こうした状況を批判して、手仕事に還り、仕事とアートを一致させることを主張する動きは起きるでしょう。

ただし、それはすべての分野で歓迎されるわけではありません。

コンテンツのクオリティよりも、スピードやコストパフォーマンスが優先される分野は存在します。例えば、下記のようなカテゴリーが考えられます。

ショート動画
TikTokをはじめとするショート動画プラットフォームでは、コンテンツを投稿する頻度が重要であり、短時間で制作できるシンプルで低コストの動画が好まれます。

ユーザー生成コンテンツ
個人が発信するコンテンツは、自然体でリアルな感じのものが多く、低クオリティのほうが視聴者に親しみやすいと感じられることがあります。

初期スタートアップ
起業初期の企業では予算の制約から、マーケティングや製品開発においてコストを抑えたコンテンツが必要とされます。

教育コンテンツ
小規模な教育機関や非営利団体では、低予算で教材を作成することが一般的です。オープンエデュケーショナルリソース(OER)など、コストを抑えて広く配布することが可能な教材が評価されることがあります。

一方で、おそらく仕事とアートを一致させる気運も高まります。その分野はもしかすると、わたしたちが今以上に活躍できる分野かもしれません。

生成と逸脱の両立を目指そう

今後の戦略として、生成AIに頼るべき部分と手仕事にこだわるべき部分を、どのように分別してくかが鍵となると考えています。

クオリティよりもスピードを優先すべき案件については、生成AIによる自動化を使いこなすクリエイターが、今後ますます重宝されていくでしょう。

同時に、生成から逸脱するものの価値も相対的に上がるため、こちらの揺り戻しにも注目すべきです。

時代の転換期は振り子の動きに注目しましょう。偏ったものはいずれ真逆に触れるのですから。

では。

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